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レゴとエピックゲームズがコラボレーションを開始し、「レゴフォートナイト」という新しいオープンワールドゲームをリリース。通常の「フォートナイト」の20倍の大きさのゲームワールドを特徴としている。

レゴは、1997年に「レゴアイランド」を始めとするレゴテーマのゲームを販売し、ゲームを通じて顧客のエンゲージメントと支出を維持する方法を理解している。

このパートナーシップは、エピックゲームズにとっても重要であり、「フォートナイト」をファミリーフレンドリーにすることで、他のプラットフォームからのオーディエンスを引きつける狙いがある。


2023年12月7日、デンマークの人気玩具ブランドとエピックゲームズ(Epic Games)のコラボ、「レゴフォートナイト(Lego Fortnite)」の配信が開始された。これはエピックゲームズ史上屈指の野心的なブランドパートナーシップであり、同時に、自社のコア商品と自ら育んだIPのマーケティングにゲームを活用するレゴの巧みさを際立たせるものでもある。

レゴ・グループ(Lego Group)とエピックゲームズによるこの長期パートナーシップの核を成すのは、後者のアンリアルエンジン(Unreal Engine)内に構築された、広大なオープンワールドゲームだ。「レゴフォートナイト」のゲームワールドは、「フォートナイト:バトルロワイヤル(Fortnite: Battle Royale)」の20倍であり、そこにユーザーはバーチャルなレゴブロックで無数の建造物を作って住める――そしてそれは、レゴブランドの商品展示を実体験する行為にほかならない。

「このデジタルワールドには、ざっと1万種のレゴブロックを忠実に再現してある」と、「レゴフォートナイト」のクリエイティブディレクター、エリック・ウィリアムスン氏は12月4日のデモイベントで記者団に話した。「ただ、これはまだ『レゴワールド』のほんの入り口に過ぎない――つまり、このゲーム内で、あるいはトレーラー内で目にするものは何でも、レゴブロックを使って実際に現実世界で再現できるようにする」。

マーケティングは重要だがコア価値は製品に



他の多くのノンエンデミックなブランド勢よりもはるかに古くから、レゴ・グループは自社商品およびIPとゲームとの融合に努めてきた。初のプレミアムゲーム「レゴアイランド(Lego Island)」の発売は1997年のことで、同社は以来、「レゴスターウォーズ(Lego Star Wars)や「レゴインディジョーンズ(Lego Indiana Jones)」といったゲームを数十万個以上販売してきた。そうして培った豊富なゲーミング経験――そして同社ブランドと緊密に結びつく一連のゲーム――を通じて、レゴ・グループは高品質なゲームプレイこそが顧客のエンゲージメントおよび支出の維持に最も有効であることを理解している。

「まず強調しておきたいのは、我々はプロダクトドリブンであり、マーケティングドリブンではない、という点だ」と、レゴ・グループのゲーミング/メタバースエクスペリエンス部門SVPレミ・マーセリ氏は話す。「マーケティングはもちろん重要視しており、レゴブランドがより多くの人々にとっての日常の一部になるよう最善を尽くしてはいるが、優れたゲームの提供こそがこれまでも、そしてこれからも、我々の再優先事項であることは変わらない」。

レゴ・グループにはすでに独自のゲーミング部門があるが、今回のエピックゲームズとの提携を介したメタバースプラットフォームの構築は、「フォートナイト」をはじめとするエピック作品内ですでに活動している数億人ものゲーマーとの繋がりを可能にする。両社のオンラインコミュニティの融合法も比較的シンプルであり、ユーザーは自身のエピックゲームアカウントをレゴ・インサイダーズ(Lego Insiders)IDとリンクできる。

「率直に言って、素晴らしいパートナーシップだ」と、フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)のスタジオ、クリエーターズ・コープ(Creators Corp)の創業者マーゴット・ロッド氏は話す。「しかもレゴ・グループ側にとっては、さらに素晴らしい。というのも、既存のデジタル環境にレゴ商品を組み入れるのは、至って容易だからだ」。

フォートナイトはファミリーと子供に優しい存在へ



さらに、今回の提携には、エピックゲームズ側にも然るべき理由がある。一部のブランドはいま現在、Roblox(ロブロックス)やマインクラフト(Minecraft)といったプラットフォームのほうが「フォートナイト」よりもチャイルドフレンドリーと見なしている。後者はファーストパーソンシューティングゲームに基づくものであり、暴力的要素を含むからだ。つまり、レゴを組み入れることで、「フォートナイト」をファミリーフレンドリーにし、競合する他のメタバースプラットフォームからオーディエンスの一部を奪いたい、というのがエピックゲームズの狙いだろう。「フォートナイト」がそもそも、マインクラフトよりもはるかにブランドフレンドリー点もマイナスにはならない。

「マーケターは基本的に、プラットフォームは年齢を重ねたオーディエンス向けだと考えている。彼らは若年層よりも購買力があるからだ」とロッド氏は話す。「一方、『フォートナイト』は両層を狙っている。私が思うに、『フォートナイト』はもともと、メインゲームとフォートナイトクリエイティブで年かさのオーディエンスを狙っており、今回のレゴとの提携は、若年オーディエンスも引き入れるための戦略だろう」。

現段階では、「レゴフォートナイト」は基本的にエンターテインメント製品であり、eコマースの場ではない。ただし、同ゲーム内に真正のレゴブロックが数千種も存在することを考えると、ユーザーがゲーム内で独自に組み立てたものを自宅に取り寄せ、現実世界でそれを作れるようになる、という未来図は想像に難くない。このコラボの商業的潜在力について、マーセリ氏は黙して語らなかったが、将来的進展の可能性を否定もしなかった。

マーセリ氏いわく、「『レゴフォートナイト』に関連する物理的なレゴセットについては、今日、発表するものは何もない。ただし、このパートナーシップが将来、我々をどこに連れて行くのかは、誰にもわからない」。

[原文:Here is how Lego’s partnership with Fortnite stacks up as an example of video game brand marketing]

Alexander Lee (翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)