終盤に決定機を外した三笘。(C)Getty Images

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 プレミアリーグ第16節、ブライトンは下位に沈むバーンリーを相手に1対1の引き分けで、9月以来となる連勝とはならなかった。

 この試合で、シーガルズ(ブライトンの愛称)のボール支配率は72パーセント。放った総シュート数は29本(対するバーンリーは6本)だった。数字だけを見れば圧倒しているものの、勝てる雰囲気は感じられなかったというのが、90分間(+アディショナルタイム)を見た率直な感想である。

 前半は立ち上がりからブライトンイレブンの動きは鈍重で、バーンリーに押し込まれる場面が目立った。その後も一向にギアが上がることはなく、ハーフタイム直前にはウィルソン・オドベールに先制ゴールを許してしまう。
 
 この状況に業を煮やしたロベルト・デ・ゼルビ監督は、ハーフタイム間に動きを見せる。ベンチスタートだった三笘薫とビリー・ギルモアの両選手に急ピッチでウォームアップをするように指示して、両選手は後半頭からピッチに送り込まれた。

 後半は、開始直後からブライトンは左サイドの三笘にボールを集めた。そしてチームは、この日本代表ウインガーを中心にバーンリーゴールに襲い掛かった。46分には左サイドでボールを受けた三笘がゴールライン近くまで上がり、すかさず左足で中央へクロス。好ボールだったが、敵のゴールキーパー、ジェームズ・トラフォードが横っ飛びでキャッチする。

 その後も、主戦場とする左サイドハーフのポジションから再三ゴールを目指したが、試合後に本人が「自分たちの時間にしようってところと、相手を引き付けて前でなるべく高い位置でプレーしようと思ってましたけど、なかなかうまくいかなかった」と振り返ったとおり、決定的なチャンスが作れず。

 人数をかけて徹底的に引いて守るバーンリーの守備は堅く、その牙城を崩せないでいた。しかし77分にサイモン・アディングラが同点ゴールを決めると、そこから試合終了までは、ブライトンの選手たちは攻撃の仕方を急に思い出したかのように、幾度にもわたってクラレッツ(バーンリーの愛称)守備陣を攻め立てた。
 
 迎えた試合終了間際。アディショナルタイムに突入してから7分目に、三笘に特大のチャンスが訪れる。ギルモアが右サイドからクロスをファーサイドへ送ると、そこで待っていた22番が身体を倒しながらボレーシュート。しっかりと枠を捉え、ブライトンサポーターはゴールを確信した。しかし、この日ファインセーブを連発していたトラッフォードに阻まれて、惜しくも決勝弾とはならなかった。
【動画】三笘が悔やんだ試合終了間際のビッグチャンス
 そのまま試合は終了し、ブライトンは引き分けに持ち込んだ一方で、攻勢を続けながらも逆転勝利までは届かなかった。

 三笘は「もっと最後のような展開を最初からやるべきですし、自分もチャンスあった。まあ実力かなと思います」とサバサバと語り、前述のボレーシュートの場面についても「枠内だけ意識しましたけど。もっといいとこに打てたと思いますけどね」と反省した。
 
 勝てそうで勝てない、それが最近のブライトンである。好調なスタートを切ったものの、直近のリーグ戦10試合は2勝5分け3敗。この状況に、デ・ゼルビ監督は試合後、次のように話している。

「フラストレーションを募らせている。帰宅して、どうやったらこういった試合で勝てるのか考え続けている。我々は良いチームだが、まだトップチームではない。トップチームであれば(引き分けた)フラム戦、シェフィールド・ユナイテッド戦、そして今日の試合も勝っていたはず。これら3試合で、チームは勝利に値するパフォーマンスをしていた」

「なぜ勝てないか?ブライトンの監督がまだトップレベルではないからだ。今日も29本もシュートを放った。フラム戦では25メートルからのミドルシュートを決められ、今日の試合も20メートルから豪快に決められた。シェフィールド・ユナイテッド戦では退場者が出た。これらの試合に勝っていれば、我々は現在リーグ3位のポジションにいるんだけどな」

 指揮官が話すように、紙一重なのかもしれない。一方で、昨季のような勢いがないために勝ちきれないのである。
 
 今季のブライトンには勝利に持ち込む“Xファクター”、すなわち「決め手」が不足している。昨季であればそれが三笘であり、ソリー・マーチであり、アレクシス・マカリステルであり、もしくはエバン・ファーガソンだったり、チーム内のほかの選手だった。

 翻って今季は主力の複数人放出と怪我人多発による戦力不足。さらに、リーグ戦とヨーロッパ・リーグと二足の草鞋により、低調なパフォーマンスからの改善が困難になっている。

 三笘もまた、チーム状況の変化や過密日程からくる疲労、さらに負傷もあり、今シーズンは実力を出し切れずにいる。
 
 試合後、筆者は「順調に来ていたプロキャリアの中では、初めての壁と言えるか」とぶつけてみた。しかし26歳は「いや、壁とは全く感じてないですけど」と切り返して、こう続けた。

「チームの実力がそれまでってことですし、壁というよりももっともっとできることはあると思います。自分の力のなさを痛感して、また成長すればいい話かと思いますけどね」

 強がりかではない。向上心の強い彼だからこそ、本心の言葉だと思う。さらなる成長を遂げた三笘が、再びプレミアリーグを席巻してくれる瞬間が待ち遠しい。
 
取材・文●松澤浩三