アメリカ国家安全保障局(NSA)や中央情報局(CIA)の元職員であるエドワード・スノーデン氏は、2013年にNSAによる大規模監視システム「PRISM」の存在を世界中に暴露しました。しかし、スノーデン氏によるジャーナリストへの情報提供から10年が経過した記事作成時点でも、スノーデン氏がもたらした情報のうち公開されたものはわずか1%にとどまっています。

Why only 1% of the Snowden Archive will ever be published | Computer Weekly

https://www.computerweekly.com/news/366554957/Why-only-1-of-the-Snowden-Archive-will-ever-be-published

スノーデン氏は2013年にジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏へNSAによる大規模監視の実態を伝える情報を提供しました。情報を提供されたグリーンウォルド氏はイギリスの大手紙「The Guardian」にNSAの大規模監視システム「PRISM」に関する記事を掲載し、PRISMの存在は全世界に知られることとなりました。グリーンウォルド氏による報道直後の情報は以下の記事にまとまっています。

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The Guardianの初報時点では情報提供者の名前は秘匿されていましたが、翌週にはスノーデン氏自らPRISMの情報提供者であることを明かしました。

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ところが、2013年8月にはイギリス政府通信本部(GCHQ)の職員がThe Guardianのオフィスに立ち入って「スノーデン氏から提供された情報を保存したHDD」の破壊を指示する事件が発生しました。

グリーンウォルド氏とともにスノーデン氏への取材を担当したイーウェン・マカスキル氏が海外メディアのComputer Weeklyに語った内容によると、The Guardianはスノーデン氏から寄せられた情報のコピーをニューヨーク・タイムズとプロパブリカに提供したとのこと。また、マカスキル氏は「自身の知る限りでは、ニューヨーク・タイムズのオフィスにはスノーデン氏から寄せられた情報が依然として保管されている」とも述べています。

スノーデン氏の暴露情報は報道機関の管理下にあるもの、公開された情報はその1%程度にとどまっています。マカスキル氏は情報公開が進まない理由について「情報に対する世間の関心が薄れている」「外交官などによってリークされたタイプの情報と異なり、スノーデン氏が暴露した情報には専門的で分かりにくい内容が多く含まれている」「暴露情報にはPRISMに関する情報だけでなく、NSAの運営上の問題に関係する情報も含まれており、スノーデン氏はPRISMに関する情報の拡散を望んでいた」といった点を挙げています。

また、マカスキル氏はスノーデン氏の暴露情報が世界にもたらした影響について「NSAやGCHQは(PRISMよりも)洗練されたツールを開発し、これまで以上に侵襲的な監視を行っています。スノーデン氏はプライバシーの喪失によって生じる驚異に対する人々の認識を高めました」と述べています。

なお、スノーデン氏が提供した情報のうち未公開のものが新たに公開される事例はたびたび発生しており、2023年9月にもNSAの通信傍受手法などに関する情報が公開されています。また、2023年5月にはスノーデン氏による暴露からの10年を振り返る文書がイギリスやアメリカの研究者によって公開されています。

Reflections on Ten Years Past The Snowden Revelations

https://www.ietf.org/archive/id/draft-farrell-tenyearsafter-00.html