ドラマ『いちばんすきな花』ポスタービジュアル(公式Xより)

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多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠によるクワトロ主演を務め、話題を呼んでいるドラマ『いちばんすきな花』。11月2日に放送された第4話では、深雪夜々(今田美桜)と母親・沙夜子(斉藤由貴)の関係性に主眼に置かれ、大きな山場を迎えたと言っていいだろう。(以下、これまで放送されたドラマのネタバレを含みます)

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兄が3人いる夜々は母親に誰よりも可愛がられ、女の子らしくいることを母親によって強制されてきた。可愛がられることは子供にとって幸せであるはずだが、それが過剰となれば重荷になる。夜々自身は「人形」のように扱われていると感じ、他でもない兄たちからも不平等であるという不満を持たれていることを知っていた。

「可愛い女の子」であるゆえに大きな苦悩を抱えることになった夜々。第4話では潮ゆくえ(多部未華子)ら3人との出会いで少しずつ変わり始めた彼女が、初めて母親と向き合い、電話で「お母さんのことは好きだけど、嫌いなところがいっぱいある」と伝えたのだ。

第4話までは母親のいわゆる“毒親”っぷりは随所に描かれてきた。おままごとやお人形遊びが好きだと決めつけられたり、「女の子は文系」として理数系へ進むことを許されなかった。第4話でも夜々の口から兄の言葉が伝えられ、「部活で大ケガをしたときも母親はお前(夜々)のピアノの発表会を優先した」とショッキングな事実も明かされた。

筆者自身、ここまでの親はなかなかいないだろうとたかをくくっていたが、SNSを見渡すとどうやらそうでもない。「私も夜々ちゃんと母親の関係性に近いです」といったものから、「知らず知らずのうちに夜々ちゃんの母親のようになっていました」など懺悔に近い自分語りが各所で始まっていた。ドラマゆえ過剰に描かれている部分は多分にあるものの、ドラマの視聴者の記憶を呼び覚まし、思わず自分語りをさせてしまうことこそ、このドラマが大きな話題を呼んでいる理由にほかならない。

また、筆者自身が世の中に対してもやもやしている部分──ルッキズムに関する問題も引きずり出された。夜々は、学生時代から社会人になるまで可愛いという理由で、他人に悪気なく利用されてきた。それは文化祭の“景品”のようにされたり、美容室の広告塔のようにされたり……。他人からすれば、「可愛いんだからいいでしょ」といったテンションなのだろうが、なぜ容姿の優劣を勝手に決めつけられ、利用されなければならないのか。

筆者自身、バラエティ番組などで例えば芸能人が街で出会った一般人に「おきれいですね」と言うこと自体に違和感を覚えるのだが、それをもっと明瞭にドラマの中で再現してくれているように感じた。

一方で、このドラマのすごいところは母親を単なる悪者として終わらせないところにもある。前述の夜々との電話のシーンで、夜々は紫陽花が好きと母に伝えると、母は「(花屋さんに)紫陽花はなかった…」と答える。夜々のいちばんすきな花は紫陽花だったというわけだが、母親はちゃんと知っていたというわけだ。娘を良いように見ていた母親だが、全く夜々自身を見ていなかったわけではないという裏付けともなっている。

キャラクター一人ひとりの感情の機微を丁寧に描く本作。すでに春木椿(松下洸平)、夜々の回は終えた様相を見せており、今後は潮ゆくえ、佐藤紅葉(神尾楓珠)の内面にもフォーカスが当たりそうだが、まだまだ目が離せない木曜日が続きそうだ。

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