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米国でTikTok Shopでの販売を開始したいくつかのブランドは、これまでのところ売上の増加はそこそこでしかないと述べている。

BKビューティー(BK Beauty)の共同創設者であるポール・ハウレギ氏は、同氏とその妻が7週間前に渡りTikTok Shopでコントアーブラシの販売を行ったが、TikTok Shopでの取引による新しい純売上は平均して約10%から20%だと語る。デジショップガールメディア(Digishopgirl Media)の創設者であるキャティヤ・コンスタンティン氏は、ニューヨークを拠点とする食品クライアントのひとつが6カ月以上にわたってShopをテストしていたが、売上の増加は多くて15%だったと語る。全体として、これまでのところ影響は驚くほどではない。しかし、ブランドはTikTokでのショッピングに依然として期待している。

TikTokは9月12日、2022年11月から米国内で公式テストを行ってきたShopの運用の開始を発表した。TikTok Shopは、ユーザーがアプリ内で直接商品を買い求めることができる新しいマーケットプレイスだ。ブランドはTikTok Shopに登録し、このプラットフォームのアプリ内決済機能を利用できる。一方、クリエイターはTikTok Shopのアフィリエイトプログラムに登録しTikTok Shopに参加しているブランドの商品を自分のフォロワーに紹介することで、販売手数料を得ることができる。この機能は、これまで英国と東南アジアの7カ国でしか利用できなかったものだ。

売上はすぐには急増しない



インフォメーション(The Information)によると、TikTokは年末までに米国でのTikTok Shopの売上が1日あたり1000万ドル(約14億9000万円)を超えることを期待している。現在のところ、米国の買い物客はTikTok Shopで1日あたり400万ドル近くを支出しているとこの記事は言及している。

コンスタンティン氏は、TikTok Shopの数値は「増えつつあるが、驚くほどではない」と述べる。2020年にFacebookがShopsの運用を開始したときも、すぐに売上が急増したわけではないことを思い出したとも述べている。

BKビューティーのハウレギ氏は、この7週間にわたってTikTok Shopで販売を行ったが、TikTokのストアフロントを開設した当初の経験について、運用面では「非常にバグが多かった」と述べている。「商品をTikTok Shopと同期させるのに一苦労しただけでなく、注文や顧客の管理も困難だった」と、同氏は付け加えている。

ハウレギ氏によると、TikTokのアフィリエイトプログラムを使い、売り手がTikTokクリエイターを起用し、手数料を支払う代わりにショート動画やライブストリーミングで商品を紹介したりリンクしたときに、もっとも売上が増加したという。これらの売上に対して、15%の手数料が支払われる。また、SKU(在庫管理単位)ごとに、この手数料を増やすこともできると同氏は付け加えた。

メイクアップアーティストのメリッサ・マルディック氏が9月22日に投稿したクリエイター動画により、TikTok Shopでの売上が30%も増加したが、これは「1日限り」だったと同氏は述べている。

ベンダーとの統合



TikTok Shopは、登録ブランド数を増やすため、eコマース分野のできるだけ多くのベンダーと購買体験を簡単に統合できるよう取り組んでいる。たとえばShopify(ショッピファイ)のマーチャント(加盟店)は、TikTok for Shopifyアプリを使って、Shopifyから直接TikTok Shopを管理できる。

また、TikTokはフロースペース(Flowspace)やシップボブ(Shipbob)などのフルフィルメント事業のパートナーも追加した。フロースペースのCRO(最高研究責任者)を務めるアン・ハロック氏は、TikTok Shopはより人を引き付けるため、ブランドがTikTok上で買い物客ともっと有意義な形でつながる機会を得られると述べている。「TikTok Shopは顧客と対話できる動的なメディアだ。TikTokで消費者とつながるときは一定の透明性があり、この点もほかのどのプラットフォームよりもおそらく動的なものだ」と同氏は付け加える。

しかし、些細な問題は依然として残っている。たとえば9月下旬には、200件ほどのTikTokショップの注文が、BKビューティーのShopifyストアフロントと同期していないことが判明した。「当社には、この問題点を見つけるためのビルトインフローが組み込まれていないった。TikTok側でいくつかの問題がポップアップ表示され、出荷が間に合っていない注文があることがわかった。これらの注文を処理するために回避策を考える必要があった。そして、これらの注文を処理するため、多くの手作業が必要だった」と、ハウレギ氏は述べている。

課題はあるが「金のなる木」



しかし、TikTok Shopはアフィリエイトプログラムによって、プラットフォーム上のクリエイターにインセンティブを付与し始めており、間違いなく「金のなる木」であると述べた。

「TikTokがアフィリエイト機能にはきめ細かなコントロールが可能で、コンテンツクリエイターやブランドとも多くの情報やデータを共有することができることに感銘を受けた」と同氏は述べる。アフィリエイトプログラムが提供するインセンティブと透明性は、マーチャントが「TikTok Shopをさらに重視し、活動をさらに増やす」ことを促進するかもしれないと同氏は述べた。

売り手にとって、TikTokは統合の部分に問題点が残っているものの、最終的にはTikTokが単なる新しい効率的な広告プラットフォームを構築しているのではなく、それ以上のことを行おうとしていることに恩恵を受けられると、同氏は語る。

「これらの要素をひとつのプラットフォームとして統合することにより、ブランドだけでなくコンテンツクリエイターにとっても新たな扉が開きつつある」とハウレギ氏は語った。

[原文:‘Not mind blowing’: Brands that have started testing out TikTok Shop say it’s a slow burn ]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via TikTok