乾燥が怖いこの季節、かかとがガサガサに…

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 秋になると空気が乾燥し、肌のかさつきが気になる人も多いでしょう。特に「かかと」は、靴や靴下に隠れるためお手入れを怠ってしまうこともあり、気づいたらガサガサ、カチカチになっていた…ということも。「硬くなったかかとは削ってしまえ!」と思う人もいるかもしれませんが、実はあまりおすすめできない方法なのです。では、硬くなったかかとはどうケアを行えばいいのでしょうか? 皮膚科医・豊田雅彦先生の監修のもと、注意点を紹介します。

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■かかとの乾燥の原因は?

 かかとは、足の裏全体の約1/4を占める大きな部分で、私たちの全体重を支えているため常に刺激からの負担を受けています。かかとには皮脂腺がないため皮脂膜を形成することができず、油分の不足から常に乾燥状態にあります。さらに、加齢によって肌の水分保持能力やバリア機能が低下すると、かかとの乾燥はさらに進行。また、靴や靴下の摩擦や歩行時の衝撃なども、乾燥の原因になります。

 人間の皮膚は周期性に常に生まれ変わりますが(ターンオーバーといいます)、かかとのターンオーバー周期は非常に遅く、分厚い角層を形成します。摩擦や外的刺激、疲労、老化に加えて、冷え(血行不良)による新陳代謝の遅れも、かかとの乾燥に関与しています。

 一方、足水虫にはいくつかの種類がありますが、「角質増殖型」は足裏(特にかかと)が厚くなり乾燥するタイプでかゆみを伴わないのが特徴です(かかと水虫)。皮むけやひび割れが生じることもあります。感染性がありますので要注意です。

■かかとの乾燥を放置するとどうなる?

 かかとが乾燥すると、肌が硬くなって角質が厚くなります。そうすると、さらに水分が失われて乾燥が悪化…と、悪循環が起こってしまいます。また、かかとが厚くなって乾燥する悪循環は、皮膚の内側からの要因もあります。すなわち、皮膚内の水分は厚い角層のために蒸発しにくくなり、角質層を潤わせたり湿らせたりする効果が軽減します。

 角質が厚くなりすぎると、ひび割れやカサブタができ、そこからの痛みや出血、さらに細菌や真菌の感染の入り口にもなります。ほかにも、角質が厚くなることで、足裏全体のバランスが崩れて姿勢や歩き方に影響することも。

 硬くなったかかとの角質は、専用のやすりやブラシ、軽石などで削るのが当たり前でした。このような方法は一見効果的に見えますが、実はおすすめできません。角質を削ることは、肌にダメージを与えて刺激を与えることになり、刺激を受けた肌はさらに角質を作ろうと反発して厚くなります。また、削りすぎると肌が傷ついて感染したり出血したりする危険性もあります。角質を削ることは一時的な解決策であり、長期的には逆効果なことが多いようです。

 しかし、かかとの保湿ケアやかかとパックなどで十分な効果が得られない場合は、十分に注意して「角質取り」を行っても良いでしょう。まずカサカサの足裏やかかとをお風呂や足浴の要領で十分にふやかして軟らかくします。角質除去専用のリムーバー、軽石、ヤスリ、スクラブなど、その状態にあわせて選択します。とにかく「一気にやり過ぎないこと」や「毎日やる必要はない」ことを覚えてきましょう。やさしく古く厚い角質オフをするようにしてください。角質除去のあとは、クリームやオイルを用いて保湿をすることも忘れないようにしましょう。

■かかとの乾燥を改善する方法は?

 かかとの乾燥を改善するためには、以下の5つの方法を実践してみましょう。

●保湿クリームを塗る

 保湿クリームは、肌に水分を与えて乾燥を防ぐだけでなく、肌表面に油分を残して水分の蒸発を防ぐ効果もあります。入浴後や就寝前など、肌が清潔で柔らかい時に塗ると効果的です。

●角質を除去する

 角質は適度に除去することで肌のターンオーバーを促進し、新しい肌細胞の生成を助けます。角質を除去する方法はいろいろありますが、削ったり剥がしたりする方法は肌にダメージを与える可能性があります。おすすめは、やさしくこすって角質を落とすスクラブやピーリング剤です。角質を除去する際は、保湿クリームを塗る前に行いましょう。かかとを削り過ぎると、逆に皮膚がどんどん硬くなる(ひび割れた鏡餅のようになることもある)悪循環となるので注意してください。かかとのささくれたところを爪でむしったり、いじったりする行為は止めましょう。

●水分補給をする

 肌の水分は、体内からも体外からも補給されます。体内からの水分補給は、飲み物や食べ物で行います。特に、水分だけでなくビタミンやミネラルなどの栄養素も含む果物や野菜はおすすめ。体内からの水分補給は、角質への皮膚内側からの保湿効果があり重要です。また、体外からの水分補給は、入浴やシャワーで行います。これらは肌に水分を与えるだけでなく、血行を良くして代謝を高める効果も。ただし、入浴やシャワーの時間や温度は適度にすることが大切。長時間や高温の入浴やシャワーは、肌の水分を奪って乾燥を悪化させる可能性があります。

●靴や靴下を選ぶ

 靴や靴下は、足元の乾燥に大きく影響します。靴は、足に合ったサイズや形で、通気性やクッション性の良いものを選びましょう。靴がきつすぎたり緩すぎたりすると、足に摩擦や衝撃がかかって乾燥を促進します。靴下は、綿やウールなどの天然素材で、吸湿性や保温性の良いものを選びましょう。合成素材の靴下は、汗を吸わなかったり逃がさなかったりする場合があり、足が蒸れて乾燥しやすくなります。

●生活習慣を見直す

 生活習慣も足元の乾燥に影響します。特に、睡眠不足やストレスは肌のバリア機能を低下させて乾燥を悪化させる可能性があります。睡眠不足やストレスを解消するためには、規則正しい生活リズムやリラックス法を取り入れることが大切です。また、喫煙や過度の飲酒も肌の水分保持能力や血行を悪くして乾燥を促進します。

 「保湿クリームは、かかとの乾燥の改善や良好な状態維持に大切です。角質を除去した場合はなるべく早く保湿をしてください。多くの保湿製品が販売されていますが、ヘパリン類似物質クリーム、尿素クリームやビタミンE入りクリームなどが一般的でしょう。保湿クリームを外用して皮膚に刺激、かゆみ、赤みなどを生じたら皮膚科専門医にご相談ください。また、かかとの角質ケアを十分に行っても治らない場合は、角質増殖型かかと水虫の可能性があります。治りにくく、他人への感染性もあり、放置すると爪水虫に進展してしまうこともあるため、気になったら早めに皮膚科専門医を受診してください」

【監修者プロフィール】

豊田雅彦 うるおい皮ふ科クリニック院長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。

皮膚科医として、特に皮膚科の患者の中で最も多い悩みである「かゆみ」をとることをライフワークに掲げる医学博士。「頑固なかゆみもアトピーも1分肌活で必ずよくなる:三笠書房」「新しい皮膚の教科書〜医学的に正しいケアと不調改善〜:池田書店」など書籍も多数執筆、好評を得ている。現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。国際皮膚科学会において臨床 (2002)と研究(2004)の両部門で世界初の単独世界一を受賞。また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う皮膚病・かゆみのスペシャリスト。現在は千葉県松戸市にてうるおい皮ふ科クリニック(皮膚科、美容皮膚科、漢方皮膚科、アレルギー科、形成外科)を開業、院長として日々患者と向き合い、かゆみを失くすことに尽力している。