10月12日発売のバルミューダ「BALMUDA The Plate Pro」(4万2900円)。蓄熱性能が高いクラッドプレートを採用し、肉もしっかりと焦げ目がつく(撮影:今井康一)

焼肉やホットケーキなど、さまざまな楽しみ方ができるホットプレートは、白物家電の中でも普及率が約80%(2005年中央調査報調べ)と高い。新製品が登場するたびに話題になるジャンルのひとつだ。最近では深型プレートですき焼きやパエリアなどができたり、本体がカラフルで“映える”デザインだったり、煙が出にくい無煙ロースターなども登場し、選択肢が増えている。中でも、個性が光っており、注目されているホットプレート「BALMUDA The Plate Pro」と「abien MAGIC GRILL」を紹介する。

4万2900円の理由は?

今一番注目されているホットプレートがバルミューダ「BALMUDA The Plate Pro」だ。9月14日に発表され、同日より販売予約を開始。発売予定は10月12日で、すでに予約を受け付けている。これほどまでに注目が集まる理由は「家庭でもまるで高級店のような鉄板料理を作ることができるかもしれない」という期待だ。

直販価格は4万2900円で、ホットプレートとしては高価だが、理由がある。それは、高い蓄熱性能を実現する6.6mmのクラッドプレートを採用していることが大きい。クラッドプレートとは異なる金属を貼り合わせた鋼板のことで、0.8mmのステンレス素材で5mmのアルミニウム素材を挟んで貼り合わせている。一般的なホットプレートは約3mmのアルミニウムの素材にフッ素塗装などを行っている場合が多いが、プレートが分厚い分、ずっしりと重い。


「BALMUDA The Plate Pro」。プレート部分のサイズは24.5cm×38cm。本体重量は約5.2kg(撮影:今井康一)

一般的なホットプレートでは、食材を入れると入れたとたんに一気に温度が下がってしまい、煮えたような焼き上がりになる場合がある。同製品のクラッドプレートは高い蓄熱製のおかげで、食材を置いても160℃以下に下回らず、均一に熱を食材に伝え、表面はパリッと焼ける。一般的なホットプレートはつねに温度が変化しており、食材を置くと最大で温度の幅が約40℃もブレることがある。同製品であれば、温度の幅を5℃以下に抑えられるというのだ。


オプションが用意されており、追加購入できる。奥のたこ焼きプレート「Takoyaki Plate」は6050円、手前のフチ付きプレートとフタ「Griddle & Cover」は8800円(撮影:今井康一)

プレートの表面はフッ素塗装されていないステンレス製なので、金属製のヘラやどんなナイフでも使える。金属製のヘラも付属しており、できたての食材をカットしてサーブできることも大きな特徴のひとつ。まさに高級鉄板焼店のような、もてなしができる。

9月14日の発表会でバルミューダイノベーション本部プロダクトデザイン部の比嘉一真氏が「シェフのようにかっこよく食材を切ってサーブすることができたら、週末のお父さんが家でヒーローになれるんじゃないか」と語っていたとおり、家族でホットプレートを囲むより、一人がホストとして焼く使い方がしっくりくる。

プレートの端から端まで温度差がない

温度制御は220、200、180、160℃。最高温度の220℃は、高温で肉を焼いたときに発生する油煙がでにくいギリギリの温度帯で、160℃は、クレープなどを焼くのにちょうどいい温度帯だという。


160℃で焼いたクレープは、焦げすぎず、表面はちょうどよいキツネ色に(撮影:今井康一)

実際に家で使ってみたが、ステーキなどの塊肉は、パッと褐色に焦げ目がしっかりつく。サーモグラフィで確認したところ、プレートの端から端まで温度差がなかった。4枚のお好み焼きを同時に焼いてみたが、どの部分でもムラがなく、外側はパリッと、内側はふんわり焼けていてお店で食べるようなお好み焼きができた。金属製のヘラを使い、プレートの上でそのままカットもできるのも便利だ。


左:家で焼いたお好み焼き。4枚同時に焼いたが、どの場所でもムラなく焦げ目がついている/右:サーモグラフィで見ると、全体にムラなく加熱されていることがわかる(筆者撮影)

さらに我が家で好評だったのは野菜だ。アスパラ、玉ねぎ、ナス、ズッキーニ、にんじんなどの野菜を薄く切って焼くだけで、取り合いに。どれも短時間で火が通り、ジューシーで甘みが増す。


野菜は甘くジューシーに焼き上がる(撮影:今井康一)

味がついた薄い焼肉用の肉は、複数人で焼き、それぞれのタイミングで焼くと、どんどんプレート表面が焦げ付いていく。空いたところはヘラでこまめに焦げをこそげ落としながら焼かないと、薄い肉がプレートにくっついてしまい、箸でつまんで取ろうとするとちぎれてしまう。

ステーキなどの厚みのある肉を焼き、すべて皿に取り去った後、プレートの焦げなどをこそげ落としてキレイにしてから油を伸ばし、次の新しい肉を焼く……といった使い方が、同製品には合っているように感じた。

本体周辺への油ハネは一般的なホットプレートよりも多く、まわりは汚れやすい。プレートは本体よりも一段高く、ガード(フチ)がないため、子どもが焼肉などで手を伸ばすときは当たらないように気を配る必要がある。油や汁なども横からこぼれ落ちやすい。


「BALMUDA The Plate Pro」を横から見たところ。エビは香ばしく、プリプリとした食感(撮影:今井康一)

焼きそばの調理をすると、かき混ぜるときに野菜がポロポロと横から落ちてしまうことがあった。ただし、流れた脂や食材などはプレート下にある油受けトレーに入り、取り外して丸洗いできるので、こぼれた分のお手入れはそれほど大変ではない。

蓄熱性能が高いプレートなので、すぐに洗えないことは少々ストレスだった。しばらく置き、冷ましてから洗うことになるが、完全に冷めてしまうと、こびりついた焦げや汚れは落ちにくい。金属製のクラッドプレートは質量約2.8kgと一般的なホットプレートと比較すると重さもある。方向を変えながら金だわしなどでゴシゴシ洗うと、女性には少々腕にくるものがあった。


バルミューダのオンラインストアや各店舗で購入した場合は、購入特典として専用ケースも付属する(撮影:今井康一)

収納時も、このまま置いておくと場所をとる。内側のベルトで固定し、立ててしまえる専用ケースもあるが、別売で3960円。置きっぱなしで使う方は問題ないが、立てて収納するのであれば、この専用ケースを一緒に購入したほうが便利だろう。

そんな訳で、実際に使ってみると細かいところで気になる点はいくつかあったものの、The Plate Proはほかにはないホットプレートで、やっぱり欲しくなってしまう。何より焼き加減が素晴らしく、エンターテインメント性も含めて魅力的だ。The Plate Proをテーブルに出すだけで家族が盛り上がる。こんなに楽しく味わえる調理家電は少ないだろう。機能よりも体験を重視する、バルミューダらしい製品だ。

個性的で実用的なホットプレートが人気

一方、「abien MAGIC GRILL(2022モデル)」(直販価格2万3980円)は、2021年に発売されて大きな話題となったホットプレートの後継で、温度調整やプレートの素材が改良され、ブラックだけでなくホワイトが追加された。


スッキリしたデザインでテーブルを広く使える「abien MAGIC GRILL」。約30cm×40cmのサイズで、幅広く調理できる(写真:abien)

abien独自開発の極薄ACフィルムヒーター「サーキットヒーター」を採用したことで、厚さ3mmという極薄のプレートを実現。手入れが面倒、収納時にかさばるという悩みを解消したホットプレートだ。無駄のないスタイリッシュなデザインは大きなインパクトを与え、累計販売台数は20万枚を突破(2023年3月末時点、abienによる発表)。

薄型のプレートと取り外しできるコンパクトなスタンド脚で構成されているため、収納時も省スペースというホットプレートの悩みを解消したことで話題となった。ここ数年のトレンドは、比較的コンパクトで低価格のものが流行っていたが、abien MAGIC GRILLは斬新な発想で大きなインパクトを与えた。


スタンドは簡単に外れる(写真:abien)

家で使ってみたところ、確かに焼肉などはパリッと焼ける。ただ、中心部は高熱になるものの、外側の温度は若干低いという結果に。サーモグラフィで見ても、温度については少しムラがあることがわかった。とは言え、スタンドをパッと取り外して立てて収納できるのは、群を抜いて使いやすい。一般的なホットプレートよりも使うまでのハードルが低く、お手入れもカンタンなので気軽に使える。


スタンドを外し、立てかけてコンパクトに収納できる(写真:abien)

こういった利便性の高い家電はデザインがいまひとつということも多いが、デザインの美しさからも惹かれて購入する人も多いようだ。使い勝手、性能共に価格に見合うホットプレートである。

このようにホットプレートは選択肢が増えているので、チェックしてほしい。用途に応じた使い分けをしても楽しいかもしれない。

(石井 和美 : 家電プロレビュアー)