●アスリートから新たな挑戦へ

「挑戦」とは、新しい記録や、困難な事象に立ち向かうことを意味する。ビジネスパーソンにとっても、毎日に挑戦はつきものだ。キャリアアップのために転職する、新規の顧客にアプローチする、社内プロジェクトを立ち上げる、など数え上げればきりがない。

しかし、その挑戦を楽しめている人はどれくらいいるだろうか。

TECH+セミナー事務局が主催する「JumpOver(ジャンプオーバー)」では、各業界で存在感を放つ著名人を講師に招聘。いかにしてこれまでの難局を乗り超えてきたか、その際の考え方やメンタルの保ち方などを自身の経験に基づいて語っていただいている。

参加者に、今までの自分を“飛び越えて”大きく成長できるような気付きや学びを提供することを目指すセミナーだ。

このJumpOverにおいて、7月28日から8月3日までTECH+会員登録10万人突破記念企画セミナーが配信された。同セミナーには、元サッカー日本代表/ HALTEN CEO 槙野智章氏、元北海道日本ハムファイターズ/ZENSHIN CONNECT代表 杉谷拳士氏が登壇。

共に昨年プロアスリートから引退し、セカンドキャリアを歩む2人が「すべてのビジネスパーソンへ。挑戦を楽しめ!」と題し、初の対談を行った。

本稿では、限定配信されたイベントの模様をダイジェストでお伝えする。

“お祭り男”になろうと思ったことは一度もない

――まずは、お二人の経歴から振り返っていきましょう。現役当時のプレッシャーやご自身の思いを振り返っていただけますか?

槙野氏:現役時代はそれなりのプレッシャーと常に戦っていましたが、僕は常に楽しんでいましたね。

杉谷氏:僕はチームの主砲でエースとして……違いますかね?

槙野氏:ある意味二刀流でしょ! 喋りもうまいんだから(笑)。



――現役時代は“ムードメーカー”や“お祭り男”のイメージがありますね。

杉谷氏:そう思ってもらうことが多くて嬉しいです。でも、僕自身は一度もムードメーカーや盛り上げ役に“なろうとした”ことはありません。本当に、心の底から野球が好きで、人と接するのが大好きな姿をグラウンドで表現していたんです。

槙野氏:僕もよく言われますけど、自分で率先してやってるつもりはないんですよ。ただ競技を楽しんでいる結果なんですよね。普通にやってるだけです!

杉谷氏:僕たちがありのままで楽しむことで、ファンの方々に笑顔になっていただく。それってすごく素敵じゃないですか。

――同じお気持ちを持つお二人の出会いはいつ頃でしたか?

槙野氏:(番組で)競演したときじゃない?

杉谷氏:そうですそうです。すごく気さくに話しかけてくれて「初めてだけど、初めてな気がしないね」なんて言って(笑)。

槙野氏:トークのテンポが合う感じがめちゃくちゃ気持ちよかったんですよ。そんなことで盛り上がっていたら、同じ番組に出ていたお笑い芸人さんから「サッカー界と野球界からすごい奴らが出てきた」って言われましたよ(笑)。

2022年でプロ選手を引退。監督、ビジネスパーソンに転身

――槙野さんは品川CCセカンドの監督に就任されました。監督を目指したきっかけを教えて頂けますか?

槙野氏:プロのキャリアをスタートした時から、引退したら監督になりたいと思っていたんです。なので、役に立つ練習はノートにメモしていたんですよ。若い頃から監督になる夢を思い描いてました。

日本サッカーの現状を見ると、今、多くの選手たちが海外に移籍して新たな環境に身を置いてレベルアップしていますよね。次は、指導者のレベルアップが日本サッカーの課題の一つです。高いレベルを経験した選手がいち早く指導者の道に進んで、現役の選手に経験を伝えることが必要だと考えていたので、40歳までに監督になりたいと思って引退しました。

――目指している監督像はありますか?

槙野氏:僕が目指す監督像を体現している人はまだ少ないです。チームと選手を輝かせるだけではなくて、町おこしも含めて強くなるようなチームビルディングがしたいんです。将来的には、僕みたいな監督になりたいと思う若い人が出てきてくれるような姿を見せたいですね。



――杉谷さんは現役時代に印象に残っている指導者の方はいらっしゃいますか?

杉谷氏:僕は栗山英樹監督に大きな影響を受けましたね。実は、会社名にも含まれている「前進」は栗山監督から頂いた言葉です。「拳士は、拳士らしく前に進みなさい」と仰ってました。

杉谷氏:僕はこういう性格ですから、「うるさいわ」とか「なんであんな奴」と思われてしまうこともあります。でも、栗山監督からは「お前はそのままでいい、まっすぐ前に進みなさい」とアドバイスをもらいました。誰に何を言われても、気持ちを表現したいと心に誓いました。僕の引退試合は栗山監督率いる侍ジャパンとの試合だったのですが、そこでみんなに胴上げをしてもらったときに「この道を進んで間違いなかった」と実感できましたね。

――4月に杉谷さんが設立された「ZENSHIN CONNECT」で描いているビジョンを教えてください。

杉谷氏:会社のミッションとして、挑戦にあふれる世界を作りたいと思っています。「前進」という言葉には、目標や目的に向かって新しい一歩を踏み出すという意味があります。その言葉通り、企業や学生さんと寄り添いながら、進んでいきたいです。槙野さんからも地域創成のお話がありましたけど、競技の垣根を越えて一緒に取り組みたいですね。

槙野氏:素敵なことだよ。ぜひ一緒にやっていこうよ!