2022年9月、娘の9歳の誕生日を祝うパーティーの帰路に就いていた男性が、崩壊した橋から自動車で転落死する痛ましい事故が発生しました。この事故の原因は、Googleマップが崩れた橋の情報を約10年間にわたり更新せず放置していたことにあるとして、男性の妻がGoogleを起訴しました。

Google sued over fatal Google Maps error after man drove off broken bridge | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2023/09/lawsuit-says-man-died-after-google-maps-directed-him-over-collapsed-bridge/

2022年9月の事故現場となったのは、アメリカ・ノースカロライナ州ヒッコリーにあるスノークリーク橋です。橋は2013年に崩落してから修繕されないまま放置されており、通常時は通行止めのバリケードが設置されていましたが、事故当時にはなくなっていました。



事故の犠牲者となったフィリップ・パクスソン氏は、当時9歳だった娘と友人の息子の誕生日を祝うため、週末のキャンプ旅行を計画していました。しかし、雨が降ってしまったため、キャンプは友人宅でのホームパーティーに変更されました。

パーティーが終わった後、妻のアリシアさんと娘たちは先に帰宅しましたが、パクスソン氏は後片付けのために友人宅に残りました。そして、片付けが終わってすっかり暗くなったころ、一家でヒッコリーに引っ越してきたばかりで地元の道に不慣れだったパクスソン氏は、雨の中をGoogleマップを頼りに帰路に就きました。

その最中、パクスソン氏は地元住民から「どこへも繋がらない橋」と呼ばれていたスノークリーク橋から転落し、溺死しました。付近には照明がなく、日が暮れると辺りは真っ暗になるとのこと。



Googleに対する(PDFファイル)訴状には「2022年9月30日の夜、献身的な夫であり、父親であり、誇り高きアメリカ海軍退役軍人であったフィリップ・パクスソン氏は、娘の9歳の誕生日パーティーの帰りに車を運転中、GPSの指示に従ってノースカロライナ州ヒッコリーにある標識もなく封鎖もされていない崩落した橋から転落し、悲劇的な死を遂げた」と記されています。



夫を亡くしたアリシアさんは、「ユーザーが安全に渡れる道をナビゲーションしなかった」として、Googleおよびその親会社であるAlphabetを起訴しました。また、スノークリーク橋を含む土地の所有者であり管理者でもある個人と地元企業2社も訴えられています。

地元・ヒッコリーの住民たちは、事故が起きる何年も前から、誰かがけがをしたり亡くなったりする前に橋を修繕するか、しっかりしたバリケードを設置するよう道路の管理者に嘆願していましたが、受け入れられませんでした。また、Googleに対しても複数の住人が再三にわたり橋の崩落について連絡していましたが、Googleは対応していませんでした。

訴訟を担当する法律事務所のSaltz Mongeluzzi Bendeskyは、「驚くべきことに、Googleがこの死亡事故を知った後も、崩落した橋が依然としてGoogleマップ上に通行可能な道路として表示されていました」と述べています。



事故現場付近をGoogleマップで見ると以下の通り。記事作成時点では、道が表示されていません。

Googleの広報担当者は、訴訟を確認中であるとした上で、「私たちはパクスソン家に心からお悔やみを申し上げます。私たちの目標は、Googleマップで正確な経路情報を提供することであり、目下この訴訟について検討しているところです」と述べました。