「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、毎月開催されている「AIビジネスの学校」の参加レポートです。

※画像はイメージ

○「AIビジネスの学校」の設立背景とニーズ

AIビジネスの学校は、本連載の第70回・第71回でもインタビューさせていただいた株式会社海馬の北村勝利氏が運営しています。「いま起こっていること」と「これから起こること」をキャッチアップできる、リーダー・経営者・幹部・起業・副業希望者向けのセミナーです。

第70回 メタバースが「経営課題の解決策」として検討されるようになった

第71回 メタバースは“web3”でも“神の民主化”でもなく「3Dインターネット」である

ChatGPT等の生成AIに対して、大きな可能性を感じている人も多いでしょう。すでに使いこなしている人も多いかもしれません。生成AIの影響範囲は大きく、個人のキャリア、企業の雇用の在り方、教育の在り方を変えるインパクトを持っています。

ところが、「話題になっていることは知っているものの、なにから手をつければ良いのかわからない」という人もいらっしゃるでしょう。AIビジネスの学校は、そんな人たちの疑問を解消する「生成AI市場と未来を2時間で理解できるカリキュラム」になっており、技術的な話ではなくビジネス的な展望を考えるための入門的セミナーです。

○「AIビジネスの学校」で学べること

AIビジネスの学校のカリキュラムは、第一部から第五部に加え、実際にAIを使うところを見られる演習で構成されています。

第一部のテーマは、「ChatGPTとはなにか」。AIやChatGPTの歴史、具体的な利用方法、について知ることができます。振り返ったときに、2022年はどんな年になるのか。AI第三次ブームと第四次ブームの違いは何なのか。ChatGPTの3つの利用方法(web/アプリ/Bing)。ChatGPTを活用する2つの技術(HowとWhat)。AIを活用するときに必要なスキルとはなにか。ChatGPTの強みと弱みはなにか、など網羅的に学ぶことができるでしょう。

第二部のテーマは、「マイクロソフトの新提案!新しいAI時代の働き方」。AI時代に働き方がどう変化するのかを想像することができます。特に印象的だったのは、Microsoft365 + Copilotの動画です。YouTubeで見ることができますので、気になる方は「Introducing Microsoft 365 Copilot with Outlook, PowerPoint, Excel, and OneNote」で検索してみてください。

第三部のテーマは、「サム・アルトマンとキープレイヤーの動向からAIの未来を予測する」。生成AI登場における進化の状況理解や、GAFAMの動向、生成AIの市場動向などを知ることができます。OpenAIのサム・アルトマンがどんな未来を想像しているのか。暗号資産プロジェクトのWorldcoinや核融合スタートアップのHELIONとの関係性についても概要を知ることができるでしょう。

第四部のテーマは、「チャット検索が変える『顧客』と『マーケティング』」。チャット検索が変える顧客体験や変わるAIDMAの方程式、今後必要になるAIリテラシーというスキル、AIアシスタントの登場、AIとの協業など、第一部よりも実務に関わりのある内容です。

第五部のテーマは、「AI活用とビジネス企画」。DXの次に来るAIトランスフォーメーションやAI時代に求められる人材像、ChatGPTの用途などを知ることができます。特に印象的だったのは、「AIに仕事を奪われるのではなく、タスクを奪われる」という言葉です。個人的には、どんどん奪ってほしいですね。

最後の演習では、ChatGPTを双方向音声で利用して学ぶプログラムやChatGPTとの営業ロールプレイング、ChatGPTとの疑似恋愛なども見ることができます。約2時間のカリキュラムですが、予備知識がないと脳圧がかかって大変かもしれません。

○AI時代に求められる力

セミナー冒頭、2023年の現地点を以下のように整理しています。

1980年代 パソコンの登場と普及

1990年代 インターネットの登場と普及

2000年代 携帯電話インターネットの登場と普及

2010年代 スマートフォンの登場と普及

2020年代 生成AIの登場と普及

2045年にも到来すると予測されるシンギュラリティの入り口が今で、今後20年ほどで変化も加速するでしょう。

PCやスマホ、冷蔵庫などの家電、街中の設備等にAIが搭載されていることが当たり前になり、AIはますます身近な存在になるはずです。AIがあること、AIを活用することが前提となったとき、私たち人間に必要な力はどう変化していくのでしょうか。

セミナーでは、「問いを立てる能力」「思考の言語化能力」「正誤検証能力」と解説されており、AI時代は国語力が必要になると言います。日本の識字率はほぼ100%ですが、長い文章を理解できる人は実は少ないとされています。SNS等での短文の読み書き、コミュニケーションが日常になったことも影響しているでしょう。AIを使いこなすためにも、国語力を磨く必要がありそうです。

2023年7月に開放されたChatGPTの「Code Interpreter」という機能を使えば、動画や音声、ZIP、エクセル、CSV、テキスト、PDFなどのデータを読み込んで分析することもできます。また、ChatGPTと対話的にプログラミングすることも可能になりました。セミナー内で紹介されているMicrosoft365 + Copilotの動画では、AIと会話するだけで資料作成ができるようになっています。データ分析や資料作成などの技術的なことをAIに任せられるようになるためには、人はより「対話力」を磨く必要があるのかもしれません。対話が中心になれば、「AIを使っている感覚」はなくなっていき、AI・ロボットと協働・共存するのが当たり前になるでしょう。さらにAI・ロボットと共創・共栄できればなおよしですね。AIの方が人間よりも感情や健康状態に左右されにくく、ミスなく一定のパフォーマンスを担保してくれるでしょうから、人は不完全さを探求する方が愉しいのかもしれません。

AIビジネスの学校の北村さんは、「美楽という概念を広げたい」と話しています。美術(アート)は、自分の描きたい世界や対象を表現するために技術が必要です。「術(わざ)」という文字が入っているのでわかりやすいでしょう。一方の音楽は、音を楽しむと書きます。高い技術がなくても、音楽を楽しむことができます。不完全でも良いわけです。

画像生成AIという新しいテクノロジーは、特別な技術がなくても「美を楽しめる」という機会を与えてくれています。北村さんは、「画像生成AIで作るアートのことを、美を手軽に楽しめるという意味で『美楽(びがく)』」と定義されています。美術史を専攻していた筆者としては、術(わざ)の中に垣間見える美しさもあると思いますが、自由に美を楽しむ人が増えるのは良いことです。

今では世界中で人気の印象派の絵画は、チューブ絵具の開発や普及によってもたらされました。それ以前は、写生はしてもアトリエに持ち帰って油絵等を描くのが普通だったわけです。チューブ絵具という技術ができたことで、外でも油絵を描くことができるようになりました。これも、技術革新がもたらした新しい美術の世界です。画像生成AIの開発と普及も、また新たなアートを生み出すのだと思います。未来が楽しみですね。

中島宏明 なかじまひろあき 1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。 この著者の記事一覧はこちら