2023年8月30日、Huaweiが事前予告なしで「Mate 60 Pro」を突如として発表しました。背面に搭載された特徴的なトリプルカメラや88Wの高速充電、衛星通話、拡張ストレージ(NMカード)対応などの機能をひっさげて登場した本機種ですが、モバイル通信や搭載チップに関する情報がないことに目を付けたThe Vergeなどが「独自の5G技術を搭載しているのではないか」と指摘しています。

HUAWEI Mate 60 Pro 规格参数 - 华为官网

https://consumer.huawei.com/cn/phones/mate60-pro/



Huawei Mate 60 Pro 5G AnTuTu listing reveals Kirin 9000s 5G chip, configuration, performance score revealed - Gizmochina

https://www.gizmochina.com/2023/08/30/huawei-mate-60-pros-5g-antutu-listing-reveals-kirin-9000s-5g-chip-configuration-performance-score-revealed/

Did Huawei already develop its own 5G chip to get around US sanctions? - The Verge

https://www.theverge.com/2023/8/30/23852150/huawei-5g-chip-us-sanctions-mate-60-pro

Mate 60 Proのスペックは以下の通り。

寸法と重量長さ163.65mm×幅79mm×厚さ8.1mm、重量約225g(電池含む)ディスプレイ6.82インチ、FHD+ 2720×1260、10.7億色、P3広色域、OLED、120Hz、LTPO、適応リフレッシュレート、1440Hzの高周波PWM調光、300Hzのタッチサンプリングレート、第二世代崑崙ガラス使用OSHarmonyOS 4.0ストレージ12GB RAM、256GB/512GB/1TB ROM、NMカード(最大256GB)リアカメラ5000万画素超光学ズームカメラ(絞り値F1.4〜F4.0、OIS光学式手ぶれ補正)、1200万画素超広角カメラ(絞り値F2.2)、4800万画素スーパーマクロ望遠カメラ(絞り値F3.0、光学式手ぶれ補正OIS)
3.5倍光学ズーム&100倍デジタルズームをサポート、静止画解像度は最大8192×6144、動画解像度は最大4K(3840×2160)フロントカメラ1300万画素超広角カメラ(絞り値F2.4)、3D深度カメラ
静止画解像度は4160×3120、動画解像度は3840×2160バッテリー5000mAh充電有線:88W(20V/4.4A、11V/6A、10V/4A、10V/2.25A、4.5V/5A、5V/4.5A、9V/2A)
無線:50W(Huawei SuperCharge)、20W(ワイヤレスリバース充電)防塵・防水性IP68データ接続2.4GHz・5GHz(802.11 a/b/g/n/ac/ax)
Bluetooth 5.2、Bluetooth Low Energy、SBC、AAC、LDAC、L2HC
USB Type-C(USB 3.1 Gen 1)
USB Type-Cポート経由でのヘッドフォンサポートNFCカードリーダーモード、カードエミュレーションモード(Huaweiウォレット支払い、SIMカード支払い、HCE支払い)位置GPS(L1+L5 デュアル周波数)/AGPS/GLONASS/Beidou(B1I+B1C+B2a+B2b クワッド周波数)/GALILEO(E1+E5a+E5b トリプル周波数)/QZSS(L1+L5 デュアル周波数)/NavICセンサー3D顔認識、姿勢センサー、重力センサー、赤外線センサー、画面内指紋認証、ホールセンサ、バロメーター、ジャイロ、方位磁針、周囲光センサー、近接光センサー、カメラのレーザーフォーカスセンサー、色温度センサーマルチメディアオーディオ:Huawei Histen、ステレオ
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ビデオ:
*.3gp、*.mp4

最も大きな特徴が、スマートフォンでは珍しく衛星通話に対応しているという点。チャイナ・テレコム関連サービスでの利用時に限られているものの、モバイルネットワークに頼らず通話の受信・発信が可能となっています。価格は512GBモデルで6999元(約14万円)から。日本で発売されるかはわかっていません。

公式ホームページでは上記のスペックシートとともに「より良い通信体験」「より安定したネットワーク接続」などの宣伝文句が記載されていますが、肝心のモバイル通信についての詳細はいまだ語られていないのが現状です。4G接続なのか5G接続なのかすらわからず、香港メディアのSouth China Morning Postが現地の販売店店員に尋ねたところ「会社がまだ発表していないため伝えられない」との返答があったそうです。



深圳に拠点を置くHuaweiとそのチップ設計子会社HiSiliconは、安全保障上のリスクがあるとして2019年にエンティティリストと呼ばれる米国政府の貿易ブラックリストに含まれました。この影響でHuaweiは5G対応モデルの製造に不可欠なチップ製造ツールへのアクセスが遮断されてしまい、2020年10月発表の「Mate 40」、2021年2月発売の折りたたみスマホ「Mate X2」を最後に5G搭載が技術的に不可能に。2022年9月発売の「Mate 50」や、2023年3月発売の「Mate X3」は4G対応端末としての登場を余儀なくされています。

こうした状況の中で5G対応なのかが不明のままリリースされた「Mate 60 Pro」のスペックについての疑惑は広まりつつあります。ところが、実際にMate 60 Proを手にしたテック系メディアのGizmochinaは独自にAnTuTuベンチマークテストを行い、「5Gネットワ​​ークが戻ってきた」と大々的に宣伝したことから、Huaweiはアメリカの規制をうまく回避して独自に5G対応を果たしたのではないかとの指摘がなされるようになりました。

Gizmochinaによると、Mate 60 Proには既存のモデルに使われたこともあるHiSiliconのチップ「Kirin 9000」の後継と思われる「Kirin 9000s」が搭載されており、このチップにより5G通信(および衛星通話)がサポートされているとのことです。このチップのCPUは12コア構成で、最大クロック速度は2.62GHzに達します。The Vergeは「もしMate 60 Proに独自の5G対応チップが搭載されれば、中国のスマートフォン大手にとって大きな節目となるでしょう」と記しています。



Mate 60 Proの発売により中国株式市場は沸き立ち、中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)の半導体株は10%近く上昇しました。