声優アーティスト・大橋彩香が7月26日に、12thシングル「Please, please!」をリリース。自身がヒロイン・安達垣愛姫役も務めるTVアニメ『政宗くんのリベンジR』のOP主題歌であるアップテンポなナンバーを、力強くもキュンとくる歌声で彩っている。本稿ではそんな表題曲はもちろん、とある“秘密”の隠されたカップリング曲も含めシングル全体を深掘り。異なるアングルからの“かわいい”の詰め込まれた本作制作の裏側について、存分に語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次

自信を持って「ミラハ」に並び、超えられたと言える曲に



――リリースとしては久々となりますが、その間ワンマンライブやフェスにも多数出演されるなど、活動自体はコンスタントに重ねられてきました。そんなこの約1年間は、“声優アーティスト・大橋彩香”にとってはどんな期間だったのでしょうか?

大橋大橋彩香 おっしゃるように制作という意味ではちょっと充電するような期間ではありましたけど、リリースがなくてもいろんな活動をさせてはいただいていましたし、その間にもたくさん音楽を聴いていろいろなものを吸収していました。あと、そういう時期ってフェスで歌う曲が重複してくることが多くなってくるので、改めて昔の曲をセトリに入れて最近ファンになってくれた方にもアプローチしてみたり……。

――なるほど。リリースがあれば最新曲優先になるけど、それがないから。

大橋 そうなんです!そういうふうにちょっと意外な曲を入れられたりと、フェスでのセトリにもちょっと遊びが出たような期間でもあったんですよ。そうしたら、昔から応援してくれている方の「あの曲、歌ったー!!」みたいな(笑)、すごく喜んでいる姿も見ることができたんですよね。やっぱりフェスで急にちょっと前の曲を歌うと、みんな不意打ちを食らうみたいなので。

――さて、今回リリースになる「Please, please!」は『政宗くんのリベンジR』のOP主題歌となっています。1期から、OPアーティストとしても続投という形になりますね。

大橋 まずは愛姫様役がそのまま続投だったこと自体も嬉しかったですし(笑)、「2期のOP主題歌も」というお話をいただけたときも安心しましたね。「OP、別の人だったらどうしよう?」とも思っていたので……(笑)。ただ、「6年ぶりに2期」というのには結構びっくりしました。

――ファンの皆さんも、エイプリルフールを絡めての発表ということで、二重に驚いたと思います。

大橋 そうですよね!私にもずっと「続き、やってほしいなぁ」という気持ちはありましたけど、これだけ間が空いて原作も完結したとなると「ないかなぁ……?」と思ってもいたので、すごく嬉しかったです。それに、フェスで1期のOPテーマ「ワガママMIRROR HEART(※以下:ミラハ)」を歌わせていただくたびに、SNSで「2期やらないかなぁ?」という声をよく見かけていたので、「ミラハ」を歌い続けてきたことでそういう願いみたいなものを持たせられ続けてきたというところに「アニソンを歌い続ける意味」みたいなものもすごく感じました。

――そんななかで出会った「Please, please!」という楽曲自体からは、最初にどんな印象を受けましたか?

大橋 「なんて素敵な曲が来たんだ!」と思いました。しかも「ミラハ」のリズムや構成を若干踏襲していたりと、『政宗くん』のOPらしさを受け継いだ楽曲にもなっているんですよ。そこにもまた、嬉しさを感じましたね。

――一番わかりやすいのは、サビ終盤のリズム感ですよね。

大橋 そうですね。あとは頭サビで歌始まりだったり……キーが高くて大変なところとか(笑)。たぶん「ちょっとギリギリなところで歌うのがいい」みたいなところも、この2曲に共通する部分だと思うんですよ。そのギリギリ感から出る切なさみたいなものって作品に結びつくところでもあるので、やっぱりそこからは抜け出せないということなんでしょうね(笑)。

――あとは「Please, please!」というタイトルからも、「ミラハ」のサビ前のフレーズを連想しますし。

大橋 そうなんです!「PLEASE DON’T! PLEASE WAIT!」!ただ逆に、歌詞の語気自体は「ミラハ」よりも強くなっているような気がしています。クライマックスに向けてクレッシェンドしていく愛姫様の気持ちを反映しているといいますか……「愛姫盤」のジャケット画像も、やっぱり「ミラハ」のときとは表情のテンション感がだいぶ違うんですよ。なので、そんな“残虐姫”要素がちょっと抜けたかわいい愛姫様の部分も混ぜながら、レコーディングはさせていただきました。

――ちなみに、その「ミラハ」はライブやフェスでのいわば“必殺曲”じゃないですか?となると、今回は「『ミラハ』に並ばないと」とか「越えなきゃ」といったプレッシャーみたいなものもあったのでは?

大橋 はい。めっちゃありました(笑)。だから、OP主題歌をまた担当できる嬉しさを感じたあとに「『ミラハ』を超える、ないし並ぶ曲を作らねば」と思ったとき、ちょっと「おっ……」っていう気持ちにはなりましたね(笑)。でも「『Please, please!』は、そういう曲になった!」と自信を持って言えるようなものができたので、今はもう大丈夫です!

――そんな「Please, please!」は先ほど「キーが高め」というお話もありましたが、それこそ歌い出しから音が高いのも特徴的ですよね。

大橋 そうですね。その「そばにいてよ」の音を当てるのがめちゃくちゃ難しくて、未だにうまくいくときといかないときがあるんです(笑)。しかも、地声から一瞬ファルセットに行ってまた地声に戻ってくる……という切り替えも、なめらかにできるようにしないといけないんですよね。

――そこはやはり、レコーディングのなかでポイントにされた部分のひとつ?

大橋 そうですね。他の曲のときもそうなんですけど、頭サビは毎回最後まで録って、ノドが温まってから改めて録ったりするぐらい大事にしているんですよ。曲の頭ではあるけどメロディ自体はサビだから、最初に録ると絶対ずっこけるので(笑)。あと、改めて見るとやっぱりサビの歌詞が長いんですよね。これも「ミラハ」に通ずるところなんですけど、サビが二段階あるような感じというか……。

――後半にもうひと展開あるんですよね。

大橋 そうそう。この曲だと「Stay with me」の部分で終わったって、決しておかしくはないと思うんです。でも「まだサビがあるー!」というところに中毒性があるから、ライブでもより盛り上がるものになっているんでしょうね。

――また、この曲での大橋さんの歌声は、力強さがベースにありながら同時にキュンとくるような部分もあったりと、非常に表情の豊かさも感じるものです。そういった多彩な表情は、自然に出てきたものなのでしょうか?

大橋 そうですね。先ほどお話ししたように歌詞自体もそうですし、本編の愛姫ちゃんもちょっとナイーブになったりセンチメンタルになったりと、気持ちの浮き沈みがあるんですよ。だから、歌声の中に自然とそういう気持ちも並行して入っていったのかもしれません。

――となると、レコーディング時期はアフレコ収録後だったんですか?

大橋 いや、たしかアフレコ途中だったかな……?1年ぐらい前だったと思うんですけど。でも元々原作を読んでいて2期では何が起きるのかわかっていたので、アフレコ自体は途中でも「愛姫様の気持ちとすごくリンクしてるなぁ」とすごく感じていたんですよ。なので、キャラソンではなく大橋彩香として歌ってはいますけど、愛姫様の気持ちも乗せながら。アーティストとして気持ちを汲み取って、歌わせていただきました。

――レコーディングからやや時間が経ったとなると、最近この曲を御自身で聴き返すなかで以前よりも好きになった部分というのもあるのでは?

大橋 私、結構パキパキ歌うので、それが合う曲も合わない曲もあるんですね。でも「Please, please!」は本当に何も考えずに歌ってもすごく「合致したな」というのを、後になってから聴いてもすごく感じて。自分の歌い方の癖が合うというか、違和感に感じないというか……レコーディングのときから自然に歌っていたのに、全部がパキッとハマっていたんです。だから本当に「岡嶋かな多さん、すごい!」ってなりました。「私の癖が、こんなにジャストフィットするなんて……!」というところで、とってもびっくりしています。

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カップリング曲の、一見キュートな歌詞に隠された“秘密”とは?



――では続いて、この曲のMVについてお訊きしています。今回はどういったテーマのものになっているんでしょうか?

大橋 スタッフさんが「Please, please!」を略して「プリプリ」と呼んでいきたいとおっしゃっていたのもあって、その「プリプリ」を「Pretty Pretty」と考えて“かわいい”を詰め込んだり、あとは怒っている“ぷりぷり”とか……いろんな「プリプリ」を詰め込んだMVになりまして。そのうえで、イマジナリー彼氏がいることによる複雑な感情を、表情で表現する……みたいなものになっています(笑)。

――たしかに、大サビではぷりぷりして枕を壊してましたもんね(笑)。

大橋 あ、そうですね。あれはすごく楽しかったので、定期的にやりたいです。自分でやったら掃除がすごく大変そうだからできないですけど、お仕事でできて楽しかったですね(笑)。

――また、その“イマジナリー彼氏”にも、ダイヤル式の固定電話を使って電話したりもしていましたし。

大橋 はい。今だったらスマホで直接かもしれないですけど、ちょっと古風な感じの電話で(笑)、電話をかけようかかけまいか迷うところから始まって……出たら出たですぐ切っちゃう、みたいな。しかも誰が出るかわからないから、すごく勇気がいりますよね。

――逆に、向こうも出るまで誰からの電話かわからないから……。

大橋 あー、そうだ! なんかそれで恋愛するの、めっちゃ胸熱ですね。「すきぴから電話ー!?」みたいな。

――なので、もしかしたらあの電話を使うことで、そういうドキドキみたいなものも実は表現されていた……のかもしれないなと思ったりもしました。

大橋 おー……そう考えると、すごい深いですね!他にもカラオケをしているようなシーンもあったりと、たくさんのシチュエーションがあっていろんなかわいさも詰まっているので、何度観ても楽しめるものになっていると思います。

――あと、サビの振付は、ライブでファンの皆さんと一緒にやったら絶対盛り上がりますよね。

大橋 そうですね。手フリだけなので、客席でも小振りならできるはずなので、ちょっと難しいけど頑張って覚えてきてほしいですねぇ……実はこの曲は5月の“さよなら中野サンプラザ音楽祭”で初披露したんですけど、そのときすでに頑張って覚えようとしている方もいたので、きっと皆さんならイケるんじゃないか?と思っています!

――では続いて、カップリング曲「LITTLE・LOVE・GHOST」についてお訊くしていきます。こちらはかなりギターが激しく鳴るロックなサウンドである反面、歌詞を見るとかわいらしさのある曲で。

大橋 そう。かっこいいサウンドと歌詞に、いいギャップがある曲なんですよ。この曲は元々、いくつかある曲の中から「かっこいい!」と思って選ばせていただいたものなんですけど、その後の私からのオーダーは「このかっこいい曲を、コーラスを分厚目にして歌ってみたいです」という曲調へのものだけだったんです。だから私も、この歌詞を見たときにはすごくギャップを感じました。でも実はこの曲って、ただのかわいいラブソングなだけじゃなくて、相手のことを好きすぎて生霊を飛ばしちゃう歌で……(笑)。

――えっ!? 生霊なんですか?

大橋 はい。「GHOST」というのが、その生霊のことなんです。パッと見はすごくかわいい歌詞だから、まさか生霊を飛ばしちゃってるとは思わないと思うんですけど、生霊だと考えると「ジェラってるよ」とか「ごめんだけど 呪っちゃうかも?」っていうフレーズがシャレにならなかったり(笑)、紐解けば紐解くほどいろいろすごい歌詞なんです。でも、同時にかわいさもあるので、タイトルを「リルラブゴースト」と読むことで、ちょっとかわいさを出せるようにしているんですよね。

――一方で、大橋さんの歌い方自体はサビの英語部分などを中心にややラフめに歌われていたりと、歌詞というよりもサウンド寄りなものになっています。

大橋 そうですね。ちょっとロックな感じというか。スカしたまではいかないですけど(笑)、結構地声に近い感じで歌わせていただいたので、「オケも歌い方もかっこよくて、でも歌詞がかわいい」みたいなギャップのある曲が完成したなという気はしています。ただ、このテーマだと全てがガチになったら恐ろしい曲になっちゃうかもしれないじゃないですか?(笑)。なのでやっぱり「恋する女の子は、かわいい!」ということで、かわいさもちょっと残せれば……というイメージで歌っていきました。

――その他にも、サビの前半でちょっと歌声を抜き気味にしているなど、いろいろな要素が歌声に詰め込まれているようにも感じました。

大橋 やっぱり好きな人ができると燃え上がっちゃうものですし、そうなったらいっぱいジェラっちゃったり自分だけ見ててほしいとも思っちゃうでしょうし……そういうジェラシーな気持ちが「GHOST」になっているわけじゃないですか?そこがこの曲のヒロインのかわいいところなんですけど。なのでメンタルの波じゃないですけど(笑)、そういうものも足し引きで入れられたらということで、意識的にちょっと波がある感じにはしてみたので、ひとつのサビの中だけでも緩急を感じられるものになっていると思います。ぜひ皆さんもこの曲で、愛をいっぱい受け取ってもらえたら嬉しいです。

――そのヒロインの「かわいさ」という部分で、表題曲とのつながりがあるんですね。

大橋 そうなんです。そこにかっこいいコーラスも乗って、すごく壮大でオシャレなラブソングになったので、完成したものを聴いて「おっ、すごい」となりましたし。自分でも、また新たな扉を開けたように感じています。あとこの曲、もしライブで歌うことがあったら、生霊を飛ばせたらと思って……。

――演出として?

大橋 はい。うしろのモニターに生霊の大橋彩香をいっぱい出して(笑)、貞子のCMのように「彩香増殖中」……みたいな、面白い演出もできそうな曲だなぁって。

――違う意味で面白くなっちゃいそうですけど(笑)。

大橋 あとはやっぱり生バンドで披露できたらめちゃめちゃかっこいいと思いますし、もうひとつ、これは実現が難しいとは思うんですけど……コーラスが分厚い曲なので、コーラスを歌ってくれるかっこいい女性の方をうしろに従えながら歌えたら、絶対映えそうですよね!

――ちなみに「Please, please!」に関しては、今後ライブでどのように魅せ・聴かせていきたいですか?

大橋 ライブになるとダンスがあるので、ダンサーさんたちと一緒に楽しく踊れたらいいなぁって思います。ぜひ皆さんも一緒に踊っていただいて、楽しい空間を作れたら嬉しいです!

――「Please, please!」も、ライブで歌うたびに盛り上がりが膨らんでいく曲になりそうですし。

大橋 そうですね。「ミラハ」も制作時点から「いい曲だなぁ」と思ってはいましたけど、ここまでライブで爆発的な盛り上がりの曲になるとは、私は想像していなかったんですよ。だから「Please, please!」も歌っていくにつれて、どういうふうに成長していくのか楽しみですし……曲の成長はもちろん、お客さんも楽曲に慣れてきてどんな空間ができあがっていくのかを、これから見ていけることもすごく楽しみですね。

●リリース情報

大橋彩香

「Please, please!」

7月26日発売

【彩香盤(CD+Blu-ray)】



品番:LACM-34369

価格:¥2,420(税込)

フォトカード(3種中ランダム 1 枚封入)

【愛姫盤(CDのみ)】



品番:LACM-24369

価格:¥1,320(税込)

<CD>

1. Please, please!

作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima , pw.a 編曲:pw.a

2. LITTLE・LOVE・GHOST

作詞:FUNK UCHINO 作曲:オカダユータ , 清水哲平 編曲:清水哲平

3. Please, please! (Off Vocal)

4. LITTLE・LOVE・GHOST (Off Vocal)

<Blu-ray>

MV+MVメイキング映像

関連リンク



大橋彩香オフィシャルサイト

https://ohashiayaka.com/