米IBMとAll England Lawn Tennis Clubは6月21日、2023年の7月3日から7月16日までの期間で開催されるウィンブルドン選手権で提供するデジタル・ファン体験向けの新たなツール「IBM AI Commentary」と「IBM AI Draw Analysis」を発表した。発表に先立ち、同20日にグローバルのメディア向けに説明会を開催した。



IBM AI Commentaryは、IBM watsonxの生成AI技術を活用した新しいAI機能を用いて、ウィンブルドン選手権期間中のすべてのハイライト動画の解説を作成。試合のハイライト動画を視聴しているファンに、重要な場面の音声解説とキャプションを提供(オン・オフの切り替え可能)。

同ツールは、ウィンブルドン選手権の公式アプリやwimbledon.comのハイライト動画で試合の重要な瞬間を確認する際に、ファンに深い洞察を提供できるように開発された。ウィンブルドンでの試合には、解説者によるライブ解説が行われる試合に限りがあるが、今年から同機能が導入されることで、ライブ解説の対象以外の試合でもエキサイティングな方法で解説を利用できるようになるという。

また、新機能の開発にあたりIBM iX(IBMコンサルティング事業本部のエクスペリエンス・デザイン部門)の専門家は、All England Clubと協力して、IBMのエンタープライズ向けAIとデータプラットフォーム「watsonx」の基盤モデルを活用し、テニス特有の言語をAIに学習させた。同基盤モデルをもとに構築された生成AIを適用し、情報量の多い動画になるように文章構造や語彙を変化させたナレーションを作成した。

一方、IBM AI Draw Analysisはシングルスゲームの各選手にとって決勝戦への道のりがどれだけ有利かを判断。選手のドローの有利さは、勝ち上がった際に対戦する可能性のある相手との対戦成績や、ドローにおける選手の位置がライバルと比較してどうであるかなどの要素に基づき、スケールに沿った評価で示される。

同ツールにより、テニスファンは選手のランキングだけではわからないシングルスドローの変則性や意外性を発見することができ、ファンコミュニティ内での議論やエンゲージメントを活性化するとしている。

オールイングランド・クラブ テクノロジー・ディレクターのビル・ジンクス(Bill Jinks)氏は「われわれは、テクノロジー戦略を持つためにIBMの支援を30年以上、受けている。今後も活動を継続していくためには、IBMとのパートナーシップは不可欠なものだ」と述べている。

オールイングランド・クラブ テクノロジー・ディレクターのビル・ジンクス(Bill Jinks)氏

今年のウィンブルドンに導入される新機能は、IBM Power Index Leaderboard、IBM Match Insights、Personalised Highlights Reels and Recommendations(パーソナライズされたおすすめ情報とハイライト動画)などの公式アプリとwimbledon.comで利用できるファン向けのAI搭載デジタル・ツール群に新たに加えられる。

これらのデジタル機能は、大会期間中のすべてのショットから得られた10万以上のデータポイントを、IBM Cloud上のIBM WatsonのAIテクノロジーで分析したもので、ファンがどの選手をフォローすべきか、その選手と対戦相手との比較、勝利の可能性などを簡単に理解できるように設計されている。