リーガも終わりに近づいてきた…/原ゆみこのマドリッド

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「今週のミッドウィークリーガを乗り切れば、衣替えする時間も取れるはず」そんな風に未だに半袖の手持ちがない私が自分を慰めていたのは月曜日、早くもレアル・マドリーのアンチェロッティ監督が火曜のレアル・ソシエダ戦を前にして、記者会見で喋っているのをネットストリーミングで見ていた時のことでした。いやあ、1月末にコパ・デル・レイ準々決勝でお隣さんに敗退して以来、弟分たち同様、ゆとりの週1ペースを満喫していたアトレティコじゃないですが、週末、週中、また週末とマドリッド勢の試合を見た後は結構、疲れるもので、それがまた今週も火水木。しかも全て夜10時(日本時間翌午前5時)キックオフというのにはいささか、閉口していたんですけどね。

落ち着いて考えてみれば、この33節が終わった後の今週末は土曜にコパ決勝マドリーvsオサスナ戦があるだけ。来週のミッドウィークはヨーロッパの大会準決勝1stレグが開催されるため、11日(木)にELでユベントスのホームを訪れるセビージャはともかく、やはりプレーするのは9日(火)にマンチェスター・シティをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるマドリーだけと、他のチームは13日の週末のリーガ34節まで、ずっと試合がないんですよ。

ただ問題は、もしこの火曜、午後7時30分に18年ぶりのコパ決勝進出で頭が一杯なオサスナとカンプ・ノウで対戦するバルサが勝利して、続く10時からの試合でマドリーが負けてしまうと、チャビ監督のチームのリーガ優勝が14日(日)、エスパニョールとのカタルーニャダービーで決まってしまうかもしれないこと。もちろんそれにはマドリーが前日土曜のヘタフェとの兄弟分ダービーでも勝ち点を落とさないといけないんですが、まあその方が過酷な残留争いの真っ只中にいる弟分には有難いですけどね。残り4節もマドリーの消化試合を見せられるのも何ですし、せめて5月下旬ぐらいまではリーガの決着がつかない方が私的には嬉しかったりするんですが…。

まあ、その辺はともかく、まずは先週末のマドリッド勢の試合を振り返っていくことにすると。土曜は前節、エスタディオ・バジェカスでバルサを破り、Matagigante(マタヒガンテ/大物喰い)の本領を発揮したラージョの試合から始まったんですが、いや、本当にこのチームは不思議ちゃん。だってえ、その日にも2部降格が決まるかもしれないと言われていたダントツ最下位のエルチェになら、普通、首位を破ったばかりの彼らが負けるなんて誰も思わないじゃないですが。それがまさか、私もサンティアゴ・ベルナベウに行く前、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ていた前半26分、ルジューヌがルイス・ミジャを両足で踏み、一発レッドで退場となったのがキッカケとなって、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を浴びてしまうことになるとは!

いえ、ハーフタイム入り直前に短いCKからフィデルが上げたクロスをテテ・モレンテにヘッドで決められて、1-0で後半が始まった時は、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の解説者などもまだ楽観的だったんですけどね。お店を出て、私が駅に向かって歩いていた6分にはボジェに、その2分後にはフィデルに、そしてメトロに乗っていた26分にはグンバウにも決められ、とうとう4-0って、まるでジキルとハイドじゃないですか。うーん、イラオラ監督は「ウチは最悪のコンディションで1人少なくなってしまった。とても暑くて、ここのピッチは1部で最も広いからね。No hemos sabido jugar en inferioridad/ノー・エモス・サビードー・フガール・エン・インフェリオリダッド(数的劣勢でプレーすることを知らなかった)」と言っていましたけどね。

どうやら、まだ4月末というのにお水休憩が入る程の気温や、ビッグクラブ相手には強い味方になる小さいエスタディオ・バジェカスのピッチに彼らが慣れていることが仇となったようでしたが、おそらく前節で残留確定ラインの勝ち点43に達した気の緩みもあったかと。まあ、夜のカンプ・ノウでも前半33分にエドガルが退場となったベティスが4-0の大敗をしていましたしね。木曜にはもう、次のバジャドリー戦が控えていますし、ファンが応援してくれるホームで今の10位から、少しでも上を目指す闘いを再開してくれたらいいですって。

そしてベルナベウでのアルメリア戦が始まったんですが、何せマドリーは前節ジローナに4-2と意表を突かれる黒星を喫していましたからね。この日は汚名挽回のためにも必勝が求められたんですが、やっぱりベンゼマのスタメン復帰が何よりだったかと。そう、先週のミッドウィークには弟分のヘタフェに勝利したスタメンから、8人もローテーションしたルビ監督のチームの隙をついて、開始5分にはビニシウスが左から入れたラストパスをゴール前のベンゼマが蹴り込んで先制点をゲット。続いて17分、今度は「Un autopase, era mi única salida, fue un autopase bonito de tacón/ウン・アウトパセ、エラ・ミ・ウニカ・サリーダ、フエ・ウン・アウトパセ・ボニート・デ・タコン(自分で自分に出すパス、それが唯一の出口だった。踵でのキレいなパスだったよ)」というロドリゴが右サイドの奥でサム・コスタを出し抜き、ベンゼマの2点目をアシストしているのですから、まったくお役立ちのブラジル人コンビじゃないですか。

ただ、36分にはメンデスにファールを受けながら、主審にスルーされたビニシウスが抗議でこの試合、最初のイエロカードを受け、今季通算10枚目に到達。次節を累積警告で出場停止になるのには、アンチェロッティ監督も「Ni el mediocentro más ‘feo’ de la Liga tiene diez amarillas/ニ・エル・メディオセントロ・マス・フェオ・デ・ラ・リーガ・ティエネ・ディエス・アマリージャス(リーガで一番、汚れ役のボランチでもイエロー10枚はもらっていない)」と眉をひそめていたんですけどね。まあ、その後はコパ決勝ですから、かつてはお隣さんでもよくあった、強制ローテーションと割り切ればいいだけですが、試合の方は42分、ルーカス・バスケスがエリア内でラマザニに倒され、マドリーはベンゼマのPKゴールで早くも3点目を挙げることに。

いやあ、前半だけでハットトリックを達成するベンゼマの効率の良さには驚かされるばかりですが、この時点でピチチ(得点王)争いトップのレバンドフスキにあと1本と迫り、リーガで唯一、宿敵の鼻を明かすチャンスが見えてきたマドリーのエーにはジレンマもなきにしろあらず。何せ、今季の彼はフル出場の試合が幾つか続くと、すぐ打撲や疲労でお休みしてしまいますからね。3点取った後は、「Ha sido relajación/ア・シードー・レラハシオン(リラックスしてしまったせいだった)」とアンチェロッティ監督も反省していたように、前半ロスタイムにはラマザニのパスから、ラザロに1点を返され、後半3分にロドリゴが弾丸シュートで4点目を入れた後も16分にはクロースが自陣エリア内のパスを敵に奪われて、ロベルトネスがアルメリアの2点目をゲット。そのまま4-2で試合終了の笛が鳴るまで、Poker(ポケル/1試合4得点のこと)を求めてプレーしたベンゼマでしたが、果たしてソシエダ戦でも頑張る必要はある?

まあ、夜のベティス戦でレバンドフスキがゴールを挙げ、その差を2本にしたこともありますし、そこはアンチェロッティ監督に上手くマネージメントしてもらうことになりますが、月曜の記者会見ではジローナ戦の後、ハムストリングの負傷が全治2週間と言われ、コパ決勝出場が絶望視されていたモドリッチが間に合うかもしれないという朗報が。未だにアラバ、メンディは出られませんし、バルベルデも微妙、ビニシウスと共にカマビンガも出場停止ということで、火曜午後10時からのレアル・アレナでは誰が先発となるのか、よくわからないんですが、相手も来季のCL出場圏4位確定の早期達成を熱望していますからね。丁度、前節オサスナ戦では久保建英選手がゴールを挙げたこともあり、日本人ファンには楽しみな一戦になるんじゃないでしょうか。

そして翌日曜は先に弟分のヘタフェがバルセロナでエスパニョールに挑んだんですが、やっぱり監督交代のタイミングが悪すぎたんですかね。というのも前節、アルメリアにコリセウム・アルフォンソ・ペレスで1-2と負けた翌日、アンヘル・トーレス会長はキケ・サンチェス・フローレス監督を解任したんですが、「会長や友人たち、ヘタフェが必要としている時にno podía estar en casa de brazos cruzados/ノー・ポディア・エスタル・エン・カサ・デ・ブラソス・クルサードス (家で腕を組んで見ていることはできなかった)」というボルダラス監督が着任して、最初の練習を指揮したのは試合前日の土曜日になってから。

どうやら1月にもあったボルダラス監督帰還の話を、うーん、また3時間セッションに戻るのはイヤだったんでしょうかね。チームのベテラン選手たちが反対して、監督交代を見遅らせたらしいんですが、5試合白星なしで再び降格圏に逆戻りした今、逆に選手たちの方からカムバック要請の声が出てきたという逸話もあったぐらいで、そりゃあ、昨季バレンシアに行くまで5年もヘタフェを率いていた彼となれば、知った顔も多いかと思いますけどね。だからって、1回のセッションで全てを変えるのは不可能というもので、RCDEスタジアムでは前半38分にアレニャのハンドで献上したPKホセルに決められ、その1点を最後まで返せず。1-0の負けで19位だった相手と順位を入れ替わることに。

といってもまだ16、17位のアルメリア、バレンシアとは勝ち点2差だけですので、水曜のセルタ戦で6試合ぶりの勝利を掴めれば、降格圏脱出も夢じゃないんですが、ミッドウィークリーガとあって、中2日しかないんですよ。それこそ両日ダブルセッションするとかぐらいしないと、ボルダラス監督でもチームを上向かせるのは難しいのでは?もちろん選手の疲労もあるため、そんな無茶な真似はできませんが、とにかく一番なのはコリセウムのファンの前でエネス・ウナルやマジョラルがゴールを入れてくれることですよね。

え、日曜最後の試合で2年前にリーガ優勝を果たした地、ホセ・ソリージャを訪れたアトレティコはスペインのビッグ2を上回る5得点の豊作だったんだろうって?その通りなんですが、当時はコロナ規制下で無観客だったスタンドもファンの掲げるモザイクで美しく彩られ、その試合に負けて1シーズン、2部で過ごす破目になったバジャドリーのリベンジムードを後押し。そんな中、どうやら未だに前節のクラブ創設120周年祝い気分が続いていたらしいシメオネ監督のチームでは前半20分、とうとうヒメネスがやってくれたんです。そう、お隣さんのミリトンやリュディガー、アラバがゴールに繋がるロングパスを披露するたび、どうしてアトレティコのDF陣は行く先はボールに聞いてくれ的な蹴り方しかできないのか、常々、訝っていた私だったんですけどね。

それがセンター前からモリーナにドンピシャのロングボールを送り、ウディネーゼから来た成長著しい右SBが先制点を挙げてくれたから、ビックリしたの何のって。おまけにその日のヒメネスは運勢最高の星回りだったようで、24分にはグリーズマンの蹴ったFKをヘッドして2点目をゲット。更に38分にはデ・パウルが浮かしたパスをモラタがグリーズマンに送り、完璧なコンビネーションでそのリターンを撃ち込んで3点目が入ったとなれば、得点者はバラバラでも、まったくマドリーに引けを取っていない?

だからって、42分にエルモーソがプラタの顔を叩いてPKを献上、ラリンに1点返されて、1-3でハーフタイムに入るところまで真似しなくても良かったんですけどね。後半になると、まだ残留争い渦中にあるバジャドリーが活気づき、シュートをゴールバーに当てられるなど、GKゲルビッチが危険に晒されるようになってきたんですが、とうとう29分にはCKからエスクデーロのヘッドで2-3にされてしまったから、さあ大変!

でも大丈夫。シメオネ監督も後で「1点差になるまでウチは勝負を決するカウンターがかけられなかったが、con espacios pudimos hacerlo/ペロ・コン・エスパシオス・プディモス・アセールロ(スペースができたことで可能になった)」と言っていたように、同点が見えるようになった相手が前掛かりになったのも幸いしたんでしょう。37分には途中出場で入っていたコレアがゴールと平行に出したパスをグリーズマンの前でホアキンが蹴り込んでしまい、オウンゴールで2-4に。これでお隣さんと同じスコアになったことですし、私も満足していたんですが、オランダ代表戦でケガをして帰って来て以来のお目見えとなったメンフィス・デパイまで、ゴール祭りに参加する気満々だったとは。

ええ、ロスタイム3分、デ・パウルが自陣から出したボールを追ってドリブルでエリア内に入ると、敵DF3人をかわして5点目を決め、自身の復帰出場を祝っているんですから、ホント、返す返すもFW陣が今季前半も同じペースでゴールを挙げていてくれたなら、今頃はリーガもCLも優勝争いに加わっていたんじゃないかと…はい、後悔先立たずです。2-5の勝利で2位マドリーとの勝ち点差2をキープしたアトレティコはこのミッドウィーク、水曜午後10時からメトロポリターノでカディス戦。GKオブラクの頸椎捻挫はまだ治ってないようですが、今度の相手も残留が確定していないチームなので、同じ時間のキックオフとなるヘタフェの援護射撃のためにもしっかり勝って、4連戦の最後を飾れるといいですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ

南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。