Microsoftは2019年頃からChatGPTやGPT-4のような大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに使用できるAIチップの開発に取り組んでいると、The Informationが報じています。報道によると、MicrosoftとOpenAIの一部の従業員は開発中のAIチップを用いてLLMのパフォーマンスを既にテストしているそうです。

Microsoft Readies AI Chip as Machine Learning Costs Surge - The Information

https://www.theinformation.com/articles/microsoft-readies-ai-chip-as-machine-learning-costs-surge



Microsoft Building Its Own AI Chip on TSMC's 5nm Process | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/news/microsoft-athena-ai-chip-tsmc

Microsoft reportedly working on its own AI chips that may rival Nvidia’s - The Verge

https://www.theverge.com/2023/4/18/23687912/microsoft-athena-ai-chips-nvidia

New Microsoft AI chip no threat to Nvidia, but growing LLM needs drive custom silicon | VentureBeat

https://venturebeat.com/ai/new-microsoft-ai-chip-no-threat-to-nvidia-but-growing-llm-needs-drive-custom-silicon/

Microsoft reportedly tests chips in stealth mode to boost AI performance | Windows Central

https://www.windowscentral.com/software-apps/microsoft-reportedly-tests-chips-in-stealth-mode-to-boost-ai-performance

Microsoft developing its own AI chip - The Information | Reuters

https://www.reuters.com/technology/microsoft-developing-its-own-ai-chip-information-2023-04-18/

記事作成時点では、NVIDIAはAI用チップの主要なサプライヤーになっており、企業はNVIDIA製GPUをこぞって買い取ろうとしています。チャットAIのChatGPTを開発するOpenAIは、ChatGPTを商用化するために3万個以上のNVIDIA製GPUであるA100が必要であると指摘されています。なお、NVIDIA製のAI向けGPUであるH100はインターネットオークションサイトのeBayで4万ドル超で販売されているため、AI向けのハイエンドチップの需要がいかに高まっているかを示していると海外メディアのThe Vergeは指摘。

MicrosoftはNVIDIA製AIチップを使用するのではなく、独自のAIチップを開発する方向にシフトしているとThe Informationは報じています。報道によると、Microsoftは独自のAIチップを開発することでAIチップへの投資を節約することを望んでいる模様。このプロジェクトのコードネームは「Athena」と呼ばれており、最新バージョンはTSMCの5nmプロセスでの製造が検討されています。

報道によると、AthenaチップはAIモデルがトレーニングで取得したデータからの推論を含め、LLMや類似ソフトウェアをトレーニングできるように設計されている模様。MicrosoftはAthenaチップを独自のクラウドサービスであるAzureの顧客向けに提供するかどうかは不明ですが、早ければ2024年にもMicrosoftおよびOpenAI内でAthenaが広く利用できるようになる可能性があります。

なぜOpenAIが含まれるのかというと、Microsoftは2023年1月にOpenAIと長期的なパートナーシップを締結したためです。なお、既にGPT-4などの最新のLLMで部分的にAthenaの運用が始まっているとのこと。

MicrosoftがOpenAIに対し数千億円規模の出資を行い長期的なパートナーシップを締結したことを発表 - GIGAZINE



MicrosoftはAIを活用した機能をBingやOfficeアプリ、GitHubで展開しているため、AIチップの開発による恩恵は他の企業よりも大きくなると見られています。

なお、AI向けに独自にチップを開発しているのはMicrosoftだけでなく、GoogleやAmazon、Metaといった巨大テクノロジー企業も既に独自チップの開発に乗り出しています。

ただし、MicrosoftはAthenaがNVIDIA製GPUに完全に取って代わるものとみなしているわけではないようです。2023年3月にMicrosoftはNVIDIAと「DGX Cloud」で提携しています。

Microsoftは数年前からARMベースのチップ開発に取り組んでおり、2020年には「MicrosoftがARMベースのサーバー向けプロセッサの設計を検討している」とBloombergが報じました。これらのARMベースのチップはまだ登場していませんが、MicrosoftはAMDおよびQualcommと協力してSurface LaptopおよびSurface Pro X用のカスタムチップを開発しています。

なお、The InformationはAthenaについて微妙なテーマのまま終わる可能性もあるとしており、同プロジェクトが発展するか未発表のまま終わるかは不明です。しかし、昨今のジェネレーティブAIの発展やBingに搭載されているチャットAIの人気っぷりを考えると、Athenaがさらに発展しても驚くことではないとTom's Hardwareは指摘しています。