日本人ほとんどが「乳糖不耐」専門家に″お腹ゴロゴロ”しない牛乳の飲み方を聞いた

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牛乳は栄養バランスにすぐれているため、健康にもとてもいい食品です。でも、「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしてしまう」という悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。実はそれは多くの日本人が持つ体質なのだとか。そこで今回は、牛乳を飲むメリットやお腹がゴロゴロしない飲み方などについて、ミルク科学の専門家で東北大学名誉教授の齋藤忠夫先生に話を聞きました。

お腹ゴロゴロの原因は「乳糖不耐」


牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり、便が緩くなったりするのは、「乳糖不耐」が原因かもしれません。乳糖不耐とは、牛乳や乳製品に含まれる糖質「乳糖(ラクトース)」の消化不良が引き起こすお腹の不快な症状のこと。病気ではなく、体内(小腸)に乳糖の分解酵素である「ラクターゼ」が欠乏していたり、その働きが弱くなったりすると、きちんと消化されなかった乳糖が大腸に送り込まれて起こることが原因と考えられています。


日本をはじめとしたアジアなど、農耕生活を送ってきた地域の人々ほどラクターゼを体内に持っていない比率が高くなります。そのため、日本人には乳糖不耐の症状が現れやすい人が非常に多いのです。


牛乳によって得られる健康メリットは…


牛乳は、健康や生命維持に必要な栄養素が豊富に含まれています。牛乳に含まれるたんぱく質は、体内で合成できない不可欠(必須)アミノ酸を9種類すべて含む完全で良質なもの。中でもホエイたんぱく質は、筋肉の合成に欠かせないロイシン(イソロイシン、バリン)の含有量が非常に高い点もポイントです。


※注1 栄養素量について:他に水分180.0g、灰分1.4gを含む
※注2 栄養充足率について:18~29歳女性(身体活動レベルIIふつう)の食事摂取基準に対する割合を示している。脂質は目標量の中央値25%エネルギー(56g)で、炭水化物は目標量の
中央値57.5%エネルギー(288g)で、で計算している。 出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

また、牛乳にはビタミンCを除くほとんどの種類のビタミンが含まれています。そして、乳脂肪は二重結合のない飽和中鎖脂肪酸が多く、消化吸収がいいのも大きな特徴のひとつ。さらに、カルシウムの吸収率が高く、腸内環境の改善まで期待できる、まさに万能食品といえるでしょう。

お腹ゴロゴロにならない飲み方


健康や体づくりのために、日頃から摂取する習慣をつけたい牛乳。乳糖不耐の人であっても、飲み方次第でお腹の不調が改善される可能性はあるので、ぜひ以下のひと工夫を取り入れてみてほしいです。

まず、一度にたくさんの牛乳を飲むと、腸での乳糖の分解処理が追いつかず、お腹がゴロゴロしやすくなるので、少量ずつ数回に分けて飲むこと。また、冷たい飲み物は腸管を刺激して腸の蠕動運動を活発にするので、人肌程度に温めて飲むのもオススメです。そして、少しずつでもいいので毎日飲むことを心がけて、善玉菌優位の腸内環境を目指すことも大切です。


牛乳をストレートで飲むのが苦手な人は料理に取り入れるのもいいですし、ヨーグルトやチーズなどの乳製品でも栄養はきちんと摂れ、お腹のゴロゴロも起こりにくくなります。欧米でポピュラーな「ラクトースフリーミルク」は乳糖の量を0にした牛乳です。基本的には乳糖を含んでおらず、乳糖不耐の人でも気軽に飲めるので、こうしたものを選んでみるのもいいでしょう。

牛乳が持つ健康メリットはとても豊富です。お腹のゴロゴロを避ける工夫はたくさんあるので、それらを活用してできるだけ毎日飲む習慣をつけると、さまざまな健康効果を存分に得られるはずですよ。

画像提供:Adobe Stock(https://stock.adobe.com/jp)

(TEXT:山田周平)

齋藤 忠夫先生

東北大学名誉教授 / 国際酪農連盟日本委員会(JIDF)会長 /(一社)Jミルク国際委員会委員長
東北大学大学院農学研究科博士課程修了。農学博士。同大学同研究科准教授・教授などを経て、2018年より現職。国内におけるミルク科学研究のパイオニアとして知られ、専門は畜産物利用学、応用微生物学。とくに乳酸菌と発酵乳に造詣が深い。