「アンチポルノ法」の制定でAppleやSamsungがデフォルトでアダルトコンテンツの検閲を行うようになる可能性
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近年では子どもがスマートフォンやタブレットを利用して性的コンテンツにアクセスすることが問題視されており、アメリカのルイジアナ州ではポルノの閲覧時に運転免許証などの身分証提示を義務づける法律が制定されています。そんな中、アメリカの複数の州で検討されている「アンチポルノ法案」はAppleやSamsungなどのデバイスメーカーに対し、デフォルトでアダルトコンテンツを検閲するフィルターを実装するよう強制する可能性があると、海外メディアのNBCニュースが報じています。
https://www.nbcnews.com/tech/security/porn-filter-laws-bills-anti-default-florida-texas-rcna73626
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近年では多くの子どもがスマートフォンなどでアダルトコンテンツを視聴していることが調査によりわかっている一方で、子どものポルノ視聴を規制しようとする動きも進んでいます。2023年に入り、アメリカのフロリダ州・サウスカロライナ州・メリーランド州・テネシー州・アイオワ州・アイダホ州・テキサス州・モンタナ州で、「アンチポルノ法」と呼ばれる法案が検討されています。
これらの法案は、子どもがインターネットを通じてアダルトコンテンツをダウンロードできないようにするため、スマートフォンやタブレットのメーカーに対し、ウェブブラウザやアプリにおいて性的コンテンツ検閲フィルターをデフォルトでオンにすることを強制するものです。デバイスメーカーが「業界標準」を満たすフィルターを自動的に有効にしない場合、刑事・民事上の責任を負わせるとしています。このフィルターを解除するにはパスコードが必要であり、親以外が子どもにパスコードを提供することは禁止されているとのこと。
なお、すでにユタ州ではアンチポルノ法が2021年に法制化されていますが、他に5つの州が同様の法律を可決しない限り発効されないそうです。
多くのデバイスメーカーはアダルトコンテンツフィルターを実装しているものの、多くはウェブブラウザ上でのみ動作するものであり、アプリを含めたデバイス全体でデフォルトでオンにすることは一般的ではありません。しかし、iPhoneでは標準メッセージアプリで児童を性的コンテンツから保護する機能が提供されており、アプリにおけるフィルターの仕組み自体は存在しています。
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アンチポルノ法の草案を作成した全国性的搾取告発センターはNBCニュースの取材に対し、草案を作った当時はデバイスで動作する個々のアプリではなく、ウェブブラウザにおいてアダルトコンテンツフィルターを自動的にオンにすることを求めるものだったとしています。
しかし、同じく草案の作成に携わった児童の保護に焦点を当てた擁護団体・Protect Young Eyesの創設者であるChris McKenna氏は、法案がデバイス全体で機能するフィルターにも適用される可能性があると認めました。
法案の支持者らは、テクノロジー企業はアダルトコンテンツを規制するために新たなフィルターを導入する必要はなく、ユーザーの年齢確認などの面倒な手続きも必要ないと主張しています。しかし、各州の法案にみられる文言の揺れにより、メーカーがどう対応すればいいのかわかりにくくなっているとのこと。
たとえば、モンタナ州の法案ではメーカーが潜在的な訴訟や起訴を回避するため、ユーザーの年齢確認が必要だと示唆する書き方になっています。法案によると、「メーカーが故意に、または不注意によって未成年者にフィルター解除用のパスコードを提供した」場合、メーカーは責任を負うとのことです。
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デジタル著作権と表現の自由の擁護団体・Center for Democracy and Technologyのポリシー担当ヴァイスプレジデントであるSamir Jain氏は、年齢確認を要求するような文言を法案に含めることで、メーカーが身分証明書を使ってユーザーの年齢を収集するようになる可能性があると指摘。これにより、ユーザープライバシーとデータ保護についての懸念が生じるとしています。
また、Jain氏はデバイスレベルでのフィルタリングを実装する法案により、表現の自由に関する懸念も提起されるとしています。「現在の技術では、このようなフィルターは完璧とは言えないことを認識する必要があります。たとえば、フィルターは「性的なヌード」と「芸術やその他の目的を持つヌード」を区別することはできませんが、法案は後者を規制対象から外すとしています」「そのため、フィルタリングを義務づけると、必然的に法案作成者でさえ制限されるべきでないと言っている画像やその他のコンテンツが、フィルタリングによって捉えられてしまうことになります」と述べました。