東京では今日も、男女の間にあらゆるトラブルが発生している。なかには解決が難しい、不可解な事件も…。

そんな事件を鮮やかに解決してSNSを賑わせている、ある1人の男がいた―。

彼の名は光城タツヤ。職業は、探偵。

今日彼のもとにやってきたのは、彼女の浮気を疑っている男性だ。

あなたも、この事件の謎を一緒に考えてくれないだろうか…?

▶前回:仕事を終えて帰ろうとしたら、職場の人に自分の噂話をされていた。一体、何をやらかした…?



これは仕事を終えた直後の恋人が、午前0時に送ってきた写真です。あなたはこの画像の奇妙な点がわかりますか?(難易度★☆☆☆☆)


――――――――

彼女はスタイリストの仕事をしていて、毎日遅くまでファッション誌の撮影をしています。

「今、仕事終わったよ」と言って、0時頃にこの画像が送られてきたのですが、嘘をついている気がして。調べてくれませんか。

――――――――

依頼主の男性は、DMと一緒に1枚の写真を送ってきた。「今、仕事が終わった」と恋人から送られてきた写真の左端には、バッチリと時間が写っている。

僕は依頼主に電話を掛け、この写真に隠されていた嘘を伝えた。

「0時に仕事が終わったのではなく、ずいぶん前に仕事は終わっているようですね」

僕の言葉に、電話口の彼は「お見事〜」と言って大袈裟なリアクションを取る。

「この写真は、適当にフリー素材のサイトから取ってきたんだけどさ。ちゃんとこういうのも解決してくれるんだね〜」

そう。今回、高額な報酬で依頼を送ってきたのは、会社の同僚・中村だったのだ。

「一体、どういうつもりなんだ?」

「いや、別に。お前が副業禁止なのに、悪いことしてるなって」

「…あの日、起きてたのか?」

「あぁ、田原の声が聞こえてさ。お前がネットで話題の恋愛探偵だなんてな。…やっとお前を陥れることができて、嬉しかったよ。これで証拠もガッチリ掴めたから、あとでまたツイートするんだ」

そう言って中村は、電話口で大笑いしている。

「これでお前も、出世コースから外れたな」

「…俺のこと、恨んでたのか?」

「あぁ、お前が転職してきて5年。ずっと恨んでたよ」

そう言って中村は、5年前の出来事について語り始めたのだった。


負けてばかりの男・斗真(33歳)


昔から僕は、どこにいっても主役だった。

医者である両親からは存分に可愛がられたし、第一志望の学校には難なく合格。好意を寄せる女の子は、必ず僕のことを好きになった。

そして大学4年の春。20代で年収1,000万円を超える、業界最大手の藤富物産から内定が出たあの瞬間。僕は社会人として最高のスタートを切ったはずだったのに。

「城山竜也です。よろしくお願いします」

5年前のあの日。転職してきた竜也は身長180cmを超えるイケメンで、同業の商社から引き抜かれてきたエリートだった。

僕は、彼にすべて負けていた。スペックもルックスも。

そしてオフィスにいた女性たちの視線が一気に竜也に集まっているのを見て、今まで感じたことのない敗北感を覚えたのだ。

「ねえ美里さん。良かったらこの後、もう一軒…」

「今日は、ごめんなさい」

竜也の入社歓迎会の日。人生で初めて女性から拒絶された僕を横目に、彼は女子社員に囲まれ「長く付き合っている彼女がいる」と語っていた。




そこで僕は、竜也に近づこうと決めた。最初はライバル心とともに、仲良くなりたいという純粋な気持ちもあったのだ。…でも。

「俺、受付の美里さんと付き合うことになってさ。竜也にも紹介しときたくて」

「そうなんだ。よかったじゃん」

「で、提案なんだけど。Wデートでもどうかなって」

一度は断られた美里に猛アプローチをかけて、付き合うことになった1週間後。僕は竜也に、Wデートの話を持ちかけてみた。

彼がどんな女性と付き合っているのか、一目見てみたいと思ったのだ。

当時、竜也と交際していた咲良は、ふんわりした印象の女性だった。そして彼をライバル視するがあまり、僕は大事なことを見逃していたのだ。

それは美里の気持ちが、次第に竜也へと向き始めていたということ。

「ごめん、好きになっちゃったんだよね…。竜也くんのこと」

美里から衝撃の告白をされた、その日。偶然にも竜也の昇進が決まり、僕が彼の部下になった日でもあった。

「でも竜也には、咲良ちゃんがいるだろ?」

「うん、わかってる。でも気持ちだけでも伝えたい」

「いや、彼女持ちを好きになるなんて。…理解できないよ」

頭を抱えたままうなだれる僕を見て、美里は「ごめん」と繰り返し、去っていったのだった。

そして翌日。新プロジェクトのリーダーに抜擢された竜也が、イキイキと仕事をしている姿を見た瞬間。僕の中の何かが弾けた。

そうして突発的に、咲良に電話を掛けたのだった。





僕の話を、竜也は何も言わずに聞いていた。

「…何を、咲良に話したんだよ」

「知らなかったのか?咲良ちゃん、お前に隠し事してたこと」

「隠し事?何のだよ」

「…言わない」

そう言って僕は、一方的に電話を切った。そしてノートパソコンを開くと、竜也との電話の音声をTwitterに投稿したのだった。

▶前回:仕事を終えて帰ろうとしたら、職場の人に自分の噂話をされていた。一体、何をやらかした…?

▶1話目はこちら:同棲中の彼女が、いきなり帰ってこなくなって…?男が絶句した、まさかの理由とは【Q】

▶NEXT:2月28日 火曜更新予定
初めてのお泊まり後にフラれた女。一体、なぜ?