4月の道交法改正でどう変わる? 自動運転ロボットの進化が加速へ!ティアフォーが国交省「バリアフリー・ナビプロジェクト」実証の詳細を公開

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国土交通省(国交省)は、2023年1月24日(火)、国交省が中心に推進している「バリアフリー・ナビプロジェクト」のシンポジウムを開催した。その概要は既に前回の記事で紹介したが、今回はこのシンポジウムの中で、早期から自動運転OS等の開発に取り組んできたティアフォーが行なった実証実験の詳細と、今春に改正される道交法が自動搬送ロボットにどう影響するのか、改正点を含めた講演の内容を解説しよう。

「バリアフリー・ナビプロジェクト」で自動搬送ロボットの社会実装を進める団体や活動を紹介する株式会社ティアフォー 事業本部 Vice President 岡崎 慎一郎氏

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国交省「バリアフリー・ナビプロジェクト」が自動走行ロボットの重要性と期待感を語る シンポジウムで赤羽での実証実験結果を紹介


●自動運転OSをオープンソースとして公開
ティアフォー(TIER IV)は2015年に名古屋大発のスタートアップとして創業し、現時点での社員数は約300名で、そのうち約8割がエンジニアで構成されているという(現在の拠点は東京)。ティアフォーの強みのひとつは自動運転関連のソフトウェア開発だが、ユニークなのは開発したソフトウェア技術をオープンソースとして公開していること。例えば、自動運転OS「Autoware」は、オープンソースとして公開することで様々な組織、個人が自動運転技術の発展に貢献できるエコシステムの構築を目指している。

岡崎氏によれば「世界で多くのビッグプレイヤーが自動運転に取り組む中で、日本企業が勝ち残っていくには、オープンソースとして公開することだと感じている。オープンにしていることで、海外では20カ国以上、500社以上の企業や開発者に活用している。それをベースにして様々な車両やユースケースにカスタマイズしてもらいたいと思い、The Autoware Foundationを設立し、活用を推進している。いわば共に開発していく仲間作り」と語った。The Autoware Foundationには約60社が加盟している。

●Autowareと川崎重工製の自動走行ロボット、そして遠隔監視
今回の「バリアフリー・ナビプロジェクト」では川崎重工製の自動走行ロボットをベースに自動運転用のPCやセンサー類を搭載して実証実験を行った。これにも自動運転OS「Autoware」を活用していて、基本的には自動運転向けに開発したコア技術がベースとなっている。

センサーはLiDARを中心に利用し、3次元マップデータと照合して、リアルタイムの自社位置推定や障害物の認識を行った。また、カメラでビジョンと遠隔管理を行った。

今回の実証実験では、赤羽台駅から、URのヌーベル赤羽台の敷地まで自動配送ロボットを使って走行した。距離は約800mで、信号は2ヶ所。エレベーターが1ヶ所あってシステム連携した。走行時間は約800mを20分から30分かけて移動となったが、エレベーターの利用等で住民を優先するため、ロボットに待ち時間が発生した等の関係で時間的な幅があった。走行速度は時速4Km程度。

今回は遠隔監視の実証も行った。これはとても重要な取り組みで、自動運転ロボットには遠隔監視によって安全を確認したり、トラブルを回避することが必要となる。遠隔から監視者がロボットの周囲にいる人に対して声がけすることも可能だ。

●現行の道交法と改正道路交通法
現行の道交法から、4月施行の改正道路交通法に変わるとどうなるのだろうか?今回のロボットの走行は歩道を走行した。現行の道交法では歩行者と同等の扱い「みなし歩行者」として時速6km以下で走ることが求められる。走行の際には障害物や横断歩道の手前で一時停止するなど、安全確認を充分に行う。

現行の道交法では、原付か軽自動車に該当する扱いとなり、道路使用許可の必要もある。また、みなし歩行者として歩道を走らせるのには、ロボットの周囲に人が付きそい、人が離れるとロボットは停止するという運用が必要だった。
●「改正道路交通法でロボットが日本中を走りやすくなる」
4月に改正道路交通法が施行されると、ロボットは原付や軽自動車という扱いからはずれ、遠隔操作型小型車に該当するようになる。一定の基準を満たせば、警察等への届出で走行できるしくみへと変更される。

現時点(左)では、車道を走るには原付か軽自動車、歩道では「みなし歩行者」として走行、許認可を受ける必要など、ロボット開発や実証実験にとっては複雑で面倒なしくみだった岡崎氏は「4月以降、期待としては自動搬送ロボットが日本中を走りやすくなると感じている。また、一定の基準というのは、例えば車両サイズが長さ120cm、幅70cm、高さ120cm以下、速度は6km/h以下、緊急停止装置(非常停止装置)を搭載して、外部から緊急停止できる機能が求められる。それらの基準を満たせば、走行できるようになったということで大きな進歩になると思う」と語った。
●ロボットデリバリー協会を設立
道交法改正によって走りやすくなる一方で、安全性をきちんと確保していくために業界団体としてロボットデリバリー協会を設立した。ティアフォーを含む、川崎重工業、日本郵便、ZMP、パナソニックHD、楽天グループ、ホンダ、TISの8社が発起人となっている。

岡崎氏は「自動走行ロボットとバリアフリーはとても親和性が高い。ロボットは例えば5cm以上の段差があると越えて走行できないとか、歩道に車両などの障害物が駐められていたり、極端に狭い場所は通過できないなどの制限については、車椅子等と同じだと言える。次に、今回の実験のエレベータ、他には信号機など、街のインフラと通信によって情報のやりとりができるよう整備されているかは重要なポイント。そして最後に、その地域の中でロボットは受け入れられているのか? ロボットとの共存が当たり前だと思ってもらっているのか、といったことも重要だと思っている」と語った。