夫婦やカップルが円満な状態を維持するのはどうしたらいいのか。夫婦問題研究家でパートナーシップアドバイザーの岡野あつこさんは「たった一言が仇となることもありますし、小さなミスが積もり積もって、気づいたら心が離れることも。パートナーとの関係を修復したいなら、LINEでの会話や使い方などを見直してみるといい」という――。

※本稿は、岡野あつこ『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/samxmeg

■たまにきれいな月や花の写真を送ってみる

先日、友人が「夫が出張先からLINEで送ってくれたの」と、きれいな月の写真を見せてくれました。ときどき写真だけをポンと送ってくるのだとか。

満開の桜、新幹線から撮った富士山、青い空、夜景、夕焼け……。感動的な光景を目にしたとき、人は好きな人と感動を共有したいと思うもの。文字は一文字も添えられていなくても、美しい写真はラブレターなのです。

夫婦といえどもロマンティックを忘れてはいけません。

とくに女性はロマンティックなことに対する憧れが強いのです。サバサバした女性であってもロマンを求めています。

「うちはいまも手をつないで歩いてるの」と話す人のことを「気持ち悪い」などと激しく批判する女性にかぎって、実はうらやましいと思っているもの。うらやましいから批判的になるのです。

夫に対する妻の不満を掘り下げていくと、「やり残し症候群」がひそんでいたということがあります。

「やり残し症候群」というのは、若い頃にやりたかったけれどできなかったことが、幾つになっても気がかりでモヤモヤしてしまう心理状態のこと。自分のモヤモヤを晴らしたいのに、相手にいらだつのは理不尽な気もしますが、そもそもそのいらだちの原因は、当たられるほうにしてみたら理不尽なことが多いものです。

修復セミナーなどで、思い残していることについて尋ねると、いろいろなことが飛び出します。好きな人と観覧車に乗る、ホタルを見に行く、夜桜のトンネルの中を歩く、海岸を手をつないで歩く、大きな夕陽を見る、テーマパークへ行く、満天の星を眺める、花火大会で打ち上げ花火を見上げる……。

どれもこれもむずかしいことではありません。でも、それだけに口惜しいのです。

パートナーがいるのに、どうして私はこんなに満たされないのかと思うとき、気の利かない夫のせいだ、と矛先がパートナーへと向かってしまうのではないでしょうか。

夫にしてみれば、いい歳をして何をいってるんだと思うかもしれませんが、ロマンティックな夫が妻に愛されるのは事実。永遠の王子様は、妻にとって、欠点はあっても憎めない人なのです。

なので冒頭でご紹介したように、きれいな写真を送るだけで効果があるのです。あなたもときどき、パートナーにきれいな月や植物の写真を送ってみませんか? 

■メッセージは「自分都合」でなく「相手都合」で

私が依頼されてパートナーとの関係を修復していく流れのなかに、メールやLINEの会話を見直すというものがあります。これはとても大切なことで、悪気なく送った文面であっても、デリカシーに欠けていて相手の心を傷つけたり、怒らせているということがあるのです。

そこで、文面を知らせてもらい、どのように相手に返事をしたらよいか、事細かにアドバイスすることから始めます。

パートナーとの関係が悪化してしまう人の文面には、ある共通点があるのです。それは、相手へのメッセージがすべて「自分都合」であること。

言い換えれば、相手がどんな気持ちなのか、いまどんな立場や状況なのか、まったく考慮せず、それにも気づいていない人が多いのです。

ところが私が一つひとつ細かく指摘していくと、ふだん自分がいかに「自分都合」なメッセージを送っているのかに気づき、驚かれることが多いのです。いうまでもなく、一方的にいいたいことを伝えるだけでは関係の修復にはつながりません。相手がきちんと受け止め、納得したうえで歩み寄ってくれるよう促さなくてはいけないのです。

そのために重要なのは「相手都合」に徹すること。ポイントは伝え方です。言葉選びも大切ですが、構成も同じくらい大切。

まずは「お仕事お疲れ様です」とか、「いつも家族のためにがんばってくれてありがとう」と相手を労(ねぎら)うところから入らなければ素直に受け止めてもらえません。そのうえで何を伝えたいのかを明確にします。長い前置きや回りくどい表現はいりません。いったい、何がいいたいのだろう? というのでは相手をイライラさせるだけです。

深刻な気持ちを伝えたいというあまりに暗いトーンになってしまわないようにすることも「相手都合」に合わせる範疇です。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

内容はもちろんですが、全体的なイメージが重いと相手をドンヨリさせてしまいます。LINEであれば上手に絵文字を使ってバランスを整えるとよいでしょう。

「自分都合」のメールやLINEを送る人は、直接会って話し合いをする場合にも要注意。話し合いの場合は、相手の都合に合わせること=タイミングを計ることです。仕事から疲れて帰ってくるパートナーを玄関で手ぐすねを引くように待ち構えていて、いきなり話を切り出すなどというのは言語道断。

そんなことをすれば、聞く耳をもってもらえないどころか、相手の怒りを買い、感情と感情がぶつかったあげく、関係性がさらに悪化することも大いに考えられます。

相手が一息ついたときやリラックスしたムードのなかで、おだやかな口調で「少し話したいことがあるんだけれど、いま大丈夫?」と前置きをして、相手の同意を得てから話し始めるのが得策。

そして「あなたはどう思う?」と意見を求めるようにすることで話に耳を傾けてもらうことができるでしょう。けっして、先に結論を決めて相手に同意させようとする形をとってはいけません。

メールやLINEにせよ、話し合うにせよ、自分ならどうだろう? と相手の立場に立って想像すればよいのですが、感情的になっていると「自分都合」になってしまいがちなのです。相手にアクションを起こすときは、自分の気持ちを落ち着かせてからというのが鉄則です。

■表現を変えるだけで印象はガラリと変わる

「物はいいよう」といいますが、あなたはパートナーと話をしたり、LINEを送ったりするときに、どれだけ表現に気を配っているでしょうか? 

慣れ親しんだ人であればあるほど気を遣わなくなるのは仕方ないことではありますが、頻繁にメッセージを交わす人ほど、本当は気を配るべきです。たった一言が仇(あだ)となり、地雷を踏んでしまうこともありますし、小さなミスが積もり積もって、気づいたら心が離れてしまっている、ということにもなりかねません。

相談者のSさんは、夫から「昔はもっとかわいい女だったのに」といわれ、どうしたものかと悩んでいました。

ところがSさんのLINEのチェックをしたところ、旦那さんとの間で、こんなやりとりをしていたのです。

【Sさん】今日、何時に帰ってくる?

【夫】一時

【Sさん】遅いやん!

Sさんは「さびしいから早く帰ってきて」という思いから「遅いやん!」と書いたというのですが、そのメッセージを受け取った人はどういう気持ちを抱くでしょうか。

そういう思いがあるなら、なぜその気持ちをそのまま書かないの? という話です。たとえば、次のように書けば、Sさんに対する夫の印象はガラリと変わることでしょう。

【Sさん】今日、何時に帰ってくる?

【夫】一時

【Sさん】お仕事、おつかれさま。なるべく早く帰ってきてね。さびしいから

同じことを伝えるにしても表現方法を変えるだけで相手に与える印象は全然違ってきます。こうした心理現象を、「フレーミング効果」といいます。

岡野あつこ『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)

通販のチラシなどに「ご購入から十五日以内であれば全額返金いたします」という宣伝文句が書いてありますが、これが「ご購入から十六日以上過ぎた場合は返金できません」と書いてあったら、「返金できないの?」と否定的にとらえて、買うのをやめてしまうかもしれません。

言葉は使いようで相手に与える印象を変えるだけでなく、相手の意思決定や態度に影響を及ぼすのです。

Sさんは「なるべく早く帰ってきてね、なんて恥ずかしくて」と躊躇していましたが、相手の自分に対する印象を変えたいと思うのなら照れている場合ではありません。

照れないコツはなりきること。Sさんであればかわいい女になりきって、「かわいい女ならどう伝えるのだろうか?」とセリフを考える。つまり女優になるということ。私がパートナーシップの天才だなと思う女性は、みんな名女優です。

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岡野 あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー
NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。
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(夫婦問題研究家・パートナーシップアドバイザー 岡野 あつこ)