【本格イタリアンとフレンチの味をご家庭に】海外で経験を積み、見えた日本の飲食労働環境の過酷、出張シェフの道へ

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Hirokoシェフ

料理人としてのバックボーンや、これまでのキャリアについて教えてください。

私は愛知県の国立大卒で、就職では旅行系に進みたいと考えていたのですが、希望が叶いませんでした。そこで、もともと好きだった料理の道に進むことを決意し、愛知のイタリアンPizzeria Bluに就職しました。

入社してからは、新たにオープンするベーカリーの立ち上げの仕事を任されました。パン作りをいちから学びつつ、原価管理やスタッフの勤務シフトの作成といった業務をこなす日々で、とにかくがむしゃらでしたね。パン作りは4年間経験したことになります。

その後、やはりシェフとしてイタリアンやフレンチを作りたいと思い、包丁を持って上京したんです。東京での仕事にあこがれをもっていたからです。そして六本木のレストラン「リゴレット」で働き、その間に独学で調理師免許を取得しました。

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シェフとしての本格的な修行はそのお店で積んだということでしょうか?

そうですね、そこではしっかり料理に打ち込めました。前菜からパスタ、メインといったように、一通り経験を積ませてもらえて。お店は180名も入る大きなところで、翌朝まで営業していたんです。ランチタイムには300人くらいのお客様がいらっしゃったと記憶しています。とにかく繁盛していたお店でした。

ただ、朝から晩まで毎日、へとへとになり、泣きながら仕事をするような状態でした。なので1~2カ月でお店を辞める人も多く、人手不足がずっと続いていました。キッチンのスタッフは女性が3分の1くらい居ましたが、最終的には私を含めてみんな辞めてしまいました。

お店ではミスをすると責められるようなところもあり、仕事の進め方をめぐっても、キッチンの中で意見がぶつかりあうこともしばしば。今思えば、当時は長時間労働で余裕がなく、少しギスギスしていたのだと思います。そうした中でも、当時は20代のスタッフが多く、仲の良い友人ができて、今でも交流は続いているんです。

日本での激務を経験して、Hirokoさんご自身に変化はありましたか?

お店には正社員で入りましたが、勤務時間は9時~23時がスタンダードで、休みは週1日。体調を崩しても休めないくらいの忙しさでした。それで、もう少し自分にむりのない働き方がしたいと思い、契約をアルバイトに変えてもらったのです。それでも体力的にきつく、2年ほどで退職しました。退職した翌日に病院へ行ったら肺炎と診断されました。

それから、30歳目前で本場の海外で調理をしてみたいと思い、ワーキングホリデ−制度を利用してカナダに渡り、地元密着のお店で働きました。お店はオンタリオ州トロントというところにあり、日本で見たことのない食材に出会えたり、お店では新人賞のようなものまで頂いたりして、本当によくしてもらえましたね。

カナダで働かれて、日本の飲食業界との違いを感じられましたか?

カナダで働いて感じた日本の飲食店との違いは、賃金や勤務時間、休暇などの労働環境がカナダの方が格段に良かったということです。お店でも、ミスを責め立てられるようなことはありません。キッチンでは、まわりの人たちがコーヒーを飲みながら、自分のペースで仕事をしてるんですよ。私の場合は逆に、せかせかと動いていたので、そんなに急がなくていいと手を止められるくらいでした。

働いていたお店では、仕事のオンとオフの切り替えがしっかりできていました。労働時間も週40時間が守られていて、私も仕事が終わったらスーパーに行ったり、外食を楽しむこともできたり。休日には旅行でトロントやアメリカに行ったこともありますし、カフェ巡りもしました。時給も当時のレートで1,700円くらいだったと思います。

技術的には日本の料理人は、仕事がていねいで早いと評価されていました。その一方で、海外に比べて日本の飲食店では、お料理に対する技術に対し適正な報酬が支払われていないと感じます。パスタ一つの値段をとってみても、カナダでは一皿3,000円くらいはしました。日本の外食は安すぎるのではないでしょうか。

その後オーストラリアに行かれて、帰国してから2年後にシェアダインの出張シェフになられました。

カナダからいったん帰国したものの、「もう一度海外に行きたい」と思い、1年半オーストラリアに滞在しました。オーストラリアで「Ristorante Rosetta (メルボルン)」という有名店で働きました。日本でいうと、ホテルにある高級レストランのようなところです。

現地には定住するつもりでしたが、オーストラリアがコロナでロックダウウンされてしまって。2020年3月に一時帰国のつもりで日本に来ましたが、結婚が決まって国内で暮らすことになりました。2022年の5月半ばまでは、フレンチのお店で働いていました。

これからの人生設計とワークライフバランスを考えるなかで、今はシェアダインの出張シェフ1本で活動しています。シェアダインの出張シェフとして働くようになってから、勤務時間が短くなり出張エリアも自分で決められるため、プライベートが充実しています。

これまでイタリアン、フレンチを中心に日本、カナダ、オーストラリアのレストランで経験を積んできました。コース料理から家庭料理まで幅広く対応できます。今後は得意としているパーティ料理なども提供していきたいです。海外の食材や調味料などもご紹介しながら、一手間かけたオリジナリティのあるお料理をご提案していきたいと思います。

[文:食の専門家による出張料理サービス「シェアダイン」(https://sharedine.me/)]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。