ウルトラマンベリアルと歩み続けた10年間 小野友樹インタビュー
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※インタビューの後半に『運命の衝突』最終話のネタバレを含む箇所がございます。ご注意ください。
>>>ベリアル登場シーンの場面カットなどを見る(写真6点)
◆原点の『ゼロファイト』、息子への愛を感じた『ジード』◆
――ウルトラマンシリーズの思い出をお聞かせください。
小野 世代的に直撃だったのは『ウルトラマンG』で、ヒーローショーや展示会などのイベントに連れて行ってもらった記憶がありますね。ウルトラマンシリーズはほかの特撮作品と違って「ある作品を熱心に観ていた」というより、フィギュアやゲームで遊んでいたことが思い出に残っています。特にスーパーファミコンの『ウルトラマン』は熱心に遊んでいました。あのゲームはスペシウム光線を最後に撃って怪獣を倒さなければいけないんですが、間違って説明書を捨ててしまいまして。スペシウム光線の撃ち方がわからずに、最初の敵のベムラーとずっと戦っていた覚えがあります(笑)。
――『ウルトラゼロファイト』でウルトラマンベリアルを演じると最初に聞いたときの印象はいかがでしたか?
小野 よく覚えているのが、アベユーイチ監督が『黒子のバスケ』の火神大我の声を聞いてオファーしたとお話してくださったことで。「あの声の迫力でベリアルを演じたらどうなるのか聞いてみたかった」と伺い、『黒子のバスケ』がウルトラマンにつながったことが面白く、とても嬉しかったです。
――当時ベリアルを演じるにあたって、意識されたことは?
小野 僕はそれまではどちらかというと正義の側に立つキャラクターを演じる機会が多く、本格的な悪役を演じることはベリアルが初めてで。最初は悪役としての迫力を出すために大声で喋ったり、限界まで声を太くしたりして演じたんです。でも、監督からは「もっと悠然と構えてほしい」とディレクションをいただいて。「来たなゼロ」というセリフも「来たな、ゼェロ」と言うように、声に力を入れず迫力を滲ませる方向で演技をしました。
――その後、小野さんは『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズに至るまで、さまざまな作品でベリアルを演じてこられました。
小野 『ゼロファイト』では力を抜いて余裕のあるベリアルを演じましたが、監督が変わるとわかりやすくお芝居に威圧感を求められることも多くて。アベ監督と作ったベリアルはベースにありつつもそこにこだわらず、「今のベリアルはこうなんだ」と捉えて演じています。
――これまでベリアルとして出演した作品の中で、特に記憶に残っている作品は?
小野 『ウルトラマンジード』です。「まさか我が息子が主役になる日が来ようとは」と驚きました(笑)。悪のボスといえば最後の最後に姿を現す美学もある中で、『ジード』のベリアルは作品の序盤から出させていただいたことも印象深くて。『ジョジョの奇妙な冒険』で例えるなら、第5部『黄金の風』でジョルノ・ジョバーナの父親のDIOが生きていて、ずっと出ずっぱりみたいな状況ですよ(笑)。
――『ジョジョ』のキャラクターでは、アニメで小野さんが主人公・東方仗助を演じた第4部『ダイヤモンドは砕けない』の吉良吉影に近い印象もあります。
小野 確かにポジション的には吉良ですね! DIOのような存在でありつつ、吉良くらい出ずっぱりで(笑)。
――『ジード』のベリアルを演じて、ほかに印象的だったことはありますか?
小野 息子であるジードとの対話の場面は、やはり印象に残っています。ジードに語りかける言葉や接する温度から、悪に染める思惑がありつつも、そこに愛情があったと演じながら感じていました。それは『大いなる陰謀』で、宇宙警備隊として人々を救っていた時代が描かれてからより実感しまして。それまでベリアルを ”純粋悪”と表現することもありましたが、生まれながらの悪ではないからこそ、息子を想う気持ちがあったのかなと思いました。
――正義から悪へと転身した複雑なメンタリティに、ベリアルの魅力があると思います。
小野 ベリアル自身の性格が災いした部分もありますが、もしかしたらウルトラマンシリーズの中でも、かわいそうな存在なのかもしれないです。感情の動きがリアルで、とても人間くさいんですよね、ベリアルは。逆にライバルのウルトラマンゼロとかは真っ直ぐすぎます(笑)。
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◆まさかの共演! アーリーベリアルとベリアロク◆
――『大いなる陰謀』から登場した並行同位体のアーリーベリアルについても、お話を伺えればと思います。アーリーベリアルを演じるうえで、意識されていることはありますか?
小野 「ウルトラマンらしい、ヒーローらしい演技をしなくてもいいですよね?」と最初に擦り合わせをしました。光の国にいた頃でも、後の彼につながる悪の性格は持っていたので、ダミは少し取りましたが声のトーンは変わらず低く演じました。
――作品によってさまざまな表情を見せるベリアルですが、その中でも変わっていないと感じるところはありますか?
小野 自分にとっての敵を排除すること、強者を探して宇宙を彷徨うことは変化していないと思います。特にレイブラッド星人の遺伝子を与えられた本来の歴史のベリアルは、他者の体に憑依する力を持っていて、強い存在を探すことは行動の軸としてあったなと。
――『ウルトラマンZ』では、ウルトラマンゼットが使う剣としてベリアロクが登場しました。ベリアロク役のお話を最初に聞いたときの心境は?
小野 正直なことを言えば、ベリアルが精神的な意味で”おもちゃ”にされてしまわないかと真剣に考えました。これまで描かれてきた悪役としてのベリアル像が崩れてしまうんじゃないかと思い、最初の収録のときに相談しましたね。
――ベリアルに思い入れがあるからこそ、最初は不安を感じていたんですね。
小野 はい。だから、僕からも単なるゼットの相棒に成り下がらないよう「ベリアルが持っていた悪の面影を残したい」とお話をして。「コイツと組めば面白い相手が斬れる」と思ったから一緒にいる、ヤンチャ感があるイメージで演じています。ただ、最初の収録が玩具の音声を録るタイミングで、玩具音声収録の現場で「おもちゃにされないでしょうか?」と相談する不思議な状況になりました(笑)。
――今作ではアーリーベリアル、ベリアロクが登場し、アーリーベリアルがベリアロクを使う場面も描かれました。両者の演じ分けで意識されたことはありますか?
小野 それぞれ別の意志を持つ独立した存在なので、演じ分けるというよりは異なるキャラクターを演じる意識で収録しました。それは今作でハッキリ実感したところでもあって。特にベリアロクは面白いやつに使われたいと願い敵を求める、剣としての本能のままに生きる”純粋斬りたいマン”だなと(笑)。
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【ネタバレ注意】
◆ベリアルには悪であってほしい◆
――今作のラストでアーリーベリアルはギガバトルナイザーを奪取し、ザ・キングダムを離れました。
小野 今後どうなるかは知らされていないんですが、僕個人としては、アーリーベリアルには悪に堕ちてほしいと思っています。僕は交わらない世界線が交わっていくストーリーが好きで、今作の彼の動向にも一陛下ファンとして注目していました。紆余曲折を経て光の国に戻る展開になったとしても、ifストーリーならではの面白さがあってグッとくるとは思うんです。「気に食わねえけどこれからもよろしくな、ケン」みたいな(笑)。でも、そうなるとベリアルの救済作品になってしまいますし、僕としても彼はやっぱり悪であってほしい気持ちがあって。アーリーベリアルがこのまま精神的に悪へ染まっていくのか、どのような結末を迎えるのかはとても気になっています。
――小野さんご自身も今後の展開を楽しみにされているんですね。『ゼロファイト』出演から約10年が経ちますが、これまで声優として携わる中で感じたウルトラマンシリーズの魅力を教えてください。
小野 僕自身は悪役を演じていますが、ヒーローの戦いを大人になっても素直に楽しめるところが素敵だと感じています。人間ドラマの面白さ、特撮技術の素晴らしさは大人になった今だからこそ感動しますね。僕が子供の頃から変わらず、多くの方が力を結集して作品を世に送り出していることが嬉しいですし、そこに声として参加できていることを光栄に思います。
――最後にベリアルのファンに向けてメッセージをお願いします。
小野 ベリアルを好きでいてくださっている陛下ファンの皆様、本当にありがとうございます! 僕は、自分が成長中の役者だと刻みながら生きていて。ベリアルは僕にとって、悪を悪として演じ切ることを学ばせてもらっている大切なキャラクターで、常に楽しみながら演じています。『ギャラファイ』シリーズは、僕自身もこれからの展開が楽しみな作品です。正義から悪へと変化していくアーリーベリアルの姿、本来の歴史のベリアルの違いを楽しんでいただきつつ、その後の物語が描けるよう皆様の声援をいただけると嬉しいです!
おの ゆうき
6月22日生まれ。静岡県出身。フリー。2012年放送の『ウルトラゼロファイト』よりウルトラマンベリアルを演じ、2014年放送の『ウルトラマンギンガS』ではゼットン星人ベルメを好演した。『シュート!Goal to the Future』(風馬成)など多数出演
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