●打ちのめされた『ひよっこ』「今回はもっと楽しみたい」

NHKの連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合 毎週月〜土曜8:00〜ほか)で、黒島結菜演じるヒロイン・比嘉暢子の破天荒な兄・賢秀役を熱演している竜星涼。朝ドラ出演は、有村架純主演の『ひよっこ』(17)以来5年ぶり2度目の出演となったが、竜星は「『ひよっこ』以降、いろいろ経験してきた上でのリベンジマッチのような気持ちで参加させてもらいました」と熱い想いを口にした。



『ちむどんどん』は、本土復帰50年を迎える沖縄の本島北部やんばる地域を舞台に、おいしいものが大好きなヒロイン・暢子ら4兄妹や家族の奮闘を描く物語。脚本を手掛けるのは連続テレビ小説『マッサン』(14〜15)などの脚本家・羽原大介氏で、タイトルの「ちむどんどん」とは、沖縄のことばで「胸がわくわくする気持ち」を意味する。

賢秀はトラブルメーカーだけど家族思いの長男。制作統括の小林大児チーフプロデューサーはインタビューで「長男は、決して善良な小市民ではなく、家族に迷惑をかけるという、ちょっと癖のあるキャラクターです。そこを決してダークな方向にいき過ぎず、楽しく演じていただきたかったから、竜星さんにお願いしました」と語っていた。

竜星は「本当に感謝しかないですし、そうやって呼んでもらえたことがうれしかったです。また、今はその期待にお応えしたいという気持ちが強いです」と気合十分だ。

「『ひよっこ』の時は、初めての朝ドラで慣れないことがあったり、方言に苦しんだりと、自分のなかでは打ちのめされたというか、毎回クラッシュして帰るみたいな感覚が少しありました。あの時は悔しかった気持ちが大きかったですが、今回はもっと現場を楽しみたいという思いで撮影に臨んでいます」

賢秀の魅力については「思ったことを素直に実行し、真っ直ぐにつき進んでいく精神は真似したいかなと。ちょっと破天荒で人に迷惑をかけることもありますが(苦笑)。でも、一番大事なのは、賢秀なら許せてしまうということですね。やってはダメなことも、そのなかにはちゃんと真っ直ぐさやひたむきな真面目さがあり、そこには愛情などいろんなものが入っているので許されてしまう。僕自身も生きていく中でそうなれたらいいなと思いました」と捉えている。

第1週の少年時代から、兄妹のなかでも突拍子もない行動を取るようなやんちゃさが際立っていたが、竜星自身は「陰と陽でいったら、明るくて陽気なニーニーみたいな役をやってる方が、個人的にはすごく楽しいです」と生き生きした表情を見せる。

「イマジネーションも湧くし、いろんなアドリブも瞬発的にも出てきますし。根本的に自分は根明な性格なので、とても楽しんでやらせてもらってます。また、共演者と話す時なども、賢秀役だから何を話しても許されるだろうと思ってしまうというか、役に引っ張られる瞬間があるかもしれません(笑)。現場でも普段ならなかなか声をかけづらい先輩方にも、自分からどんどんお話してもいいのかなと思ったりもします」

●黒島結菜・川口春奈・上白石萌歌・仲間由紀恵との共演語る



4兄妹では、長男の賢秀、次女の暢子のほか、川口春奈が努力家の優等生である長女・良子役を、上白石萌歌が歌うことが好きだがシャイで病気がちな末娘・歌子役を演じている。

4兄妹の深い絆が描かれる本作だが、黒島と川口は、すでに勝手知ったる仲だという。「黒島さんと川口さんは以前共演させてもらっていました。黒島さんに関しては、彼女がこの仕事を始めた10代の時に一緒でしたが、その時と変わらない純度があるというか、20代になっても真っ直ぐで、ブレない芯みたいなものを感じます。久々に会ってもしゃべりやすい女優さんだなと思いました」

川口については「川口さんとは同じ事務所なので、10代の頃は一緒にレッスンなどもしてきた仲ですが、ここ最近は共演してなかったので、本当に大人の女性になられたなと。また、今回の役は、当て書きなのではないかと思えるほど、役の要素を各自が持っているなとみんなで話しています。良子と川口さんもそうで、すごく真面目で華やかなのに男勝りな点もあるところが共通しています」と捉えている。

唯一、初共演となった上白石については「上白石さんは、最初は“はじめまして”でしたが、向こうから声をかけてくれました。笑顔がチャーミングで、人柄の良さが顔ににじみ出ているという印象です」と語った。

賢秀が何かをやらかしても、常に彼に対してとことん甘いのが仲間由紀恵演じる母・優子だ。仲間について竜星は「優しくしていただいてますし、本当に大好きです」と目を輝かせる。

「仲間さんは大先輩ですが、すごく気さくで、本当に母親のような存在です。何かちょっかいを出しても乗ってくれるような懐の広いお母さんを演じてくださっていますが、仲間さんの人柄が良すぎるぶん、僕は甘えてしまっています。仲間さんは現場にコーヒースタンドを差し入れてくださっていますが、常に飲んでいるのは僕です。だから、今後僕が別の作品に出演した時、たとえ仲間さんが出ていなくてもコーヒースタンドを差し入れてくれるんですよね? という約束までしちゃいました(笑)」とおちゃめに語ってくれた。

●賢秀登場シーンは「どのシーンもハチャメチャに」



のちに暢子は高校卒業とともに故郷を離れ、沖縄出身者が多い横浜市鶴見へと旅立つことに。取材した時点で、すでに鶴見編の収録も始まっていたが、東京出身の竜星は、沖縄ロケを経て大いに沖縄に感化されたようだ。

「沖縄では沖縄ことばを話すので、沖縄出身の役を演じている人たちと集まるとほっこりします。逆に東京の人たちが多い現場になると、何か言葉の壁というか、東京の冷たさみたいなものを感じるんです。沖縄出身の人たちが東京へ行って、ちょっと冷たく感じるというのはこういうことかなと、お芝居を通して感じました」

もともと役によってがらりと印象が変わるカメレオン俳優とも言われている竜星だが、今やすっかり沖縄男児となった印象を受ける。何かとトラブルを起こし、愛される問題児となっていくであろう賢秀だが、視聴者の反響を予想してもらうと竜星は「嫌われるか好かれるかどっちかでしょうね」と笑う。

「小林プロデューサーも、脚本上ではすごく憎まれるようなニーニーなんだけれど、僕がやるとすごくチャーミングに愛くるしくなると言ってくださったので、皆さんがどう観てくれるのかが楽しみです。ハチャメチャなことをやっていくので、ハチャメチャな意見もいっぱいもらえればうれしいかなと」

これまで撮影したなかでの印象的なシーンについて聞くと「基本的に、僕が出ている時は、どのシーンもわりとハチャメチャになっています」と宣言する。

「特に家族とのシーンでは、僕自身もエネルギーがマックス状態となり、ショートしたりもしますが、それぐらい熱量があるシーンは演じていて楽しいです。家族全員でキャッチボールができるし、人数が多くて大変ですが、その分、気持ちが揺れ動くので。だからこそアドリブも増え、きっと使われないだろうなと思いながらアドリブをいっぱいしています(笑)」と充実感いっぱいの笑顔を見せてくれた。

■竜星涼(りゅうせい・りょう)

1993年3月24日生まれ、東京都出身。2010年にドラマ『素直になれなくて』でデビュー。2013年、スーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』で初主演を務め人気を博す。映画の主な出演作は『orange』(15)、『22年目の告白-私が殺人犯です-』(17)、『先生!、、、好きになってもいいですか?』(17)、『ぐらんぶる』(20)、『弱虫ペダル』(20)、『リスタートはただいまのあとで』(20)など。近年の主なドラマ出演作は『ひよっこ』(17)、『アンナチュラル』(18)、『昭和元禄落語心中』(18)、『同期のサクラ』(19)、『テセウスの船』(20)、『家、ついて行ってイイですか?』(21)など。

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