撮影/小嶋文子

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2020年10月期に人気漫画を原作に連続ドラマ化され、SNSを中心に口コミで話題となり、国内にとどまらず海外までその名を広めた“チェリまほ”。その待望の映画版『チェリまほ THE MOVIE 〜30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜』が4月8日(金)より公開となる。

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恋愛経験がなく童貞のまま30歳の誕生日を迎えたことで、触れた人の心が読める魔法を使えるようになってしまった安達(赤楚衛二)。そんな安達を純粋に想い続ける人気者で仕事もできる同期の黒沢(町田啓太)。ドラマ版ではいくつかの困難を乗り越えようやくお互いの気持ちを確かめ合った二人だが、映画版ではその最終回から続く恋人同士となった二人の日々が描かれる。

お互いを思うからこそ生まれる葛藤やすれ違いなどもあり、先行きが気になる安達と黒沢の恋模様。一方、安達の友人で、“魔法使いではなくなった”柘植(浅香航大)と、恋人の湊(ゆうたろう)カップルのその後も気になるところ。

出演者であり、“チェリまほ”ファンを公言するゆうたろうに、本作の魅力や撮影での裏話、そして映画化への立役者とも言えるファンへの想いなどを語ってもらった。

自分が演じるという以前にこの作品のファンとして純粋に喜びました

――映画版の制作が決まった時はどんな気持ちでしたか。

原作も続いていますし、やれるんじゃないかと思っていたところはありました(笑)。けど皆さんお忙しいし……と思っていたらドラマの時と全く同じメンバーで、しかも関係値も変わらずドラマの最終回から続くストーリーだったのですごく嬉しかったです。

これで誰かの役が変わっていたり新しいストーリーが始まっていたりしたら心残りがあったと思うんですけど、あのままの続きが観られるのは本当に楽しみで。

台本を読ませていただいて自分が演じるという以前にこの作品のファンとして純粋に喜びました。「ヤッター!」って感じでした(笑)。

それから、湊くんは自分がこれまでやった役の中でも僕自身にいろんなものをくれた子だったので、また演じられるのも素直に嬉しかったです。

――ドラマは回を追うごとにどんどん反響が広がっていきましたがどのように受け止めていましたか。

最初は限られたエリアでの深夜帯の放送だったのでリアルタイムでオンエアする放送局が増えたり、口コミで海外にまで広がっていくとは想像もしていませんでした。

男性同士の恋愛ものにはまだ偏見もあるとは思うんですけど、こんな素敵な作品もあるんだ、ということで興味を持ってもらえるきっかけにもなったと思います。

僕は自分が出演した作品が言語を超えて海外でも反響が出るという経験がなかったので、僕自身を知ってもらえるきっかけになったことも嬉しかったです。

インスタグラムにも海外の方からのコメントが増えて。その国のまとめサイトに日本にこういう男の子がいて、こういう作品に出ている、というのが紹介されていて、それを日本語に訳して知らせてくださる方もいて。

(湊を演じていた時の)金髪から黒髪にした時は、「なんか寂しいけどそれも良い」みたいなコメントをしてくださったり。そういう方々にすごく支えられているな、と感じました。

湊は自分と似ているな、と思うところが多かった

――湊を演じる上でどんなことを意識していましたか。

原作がとてもきれいな物語だからこそ、僕もちゃんとやらなきゃ、というプレッシャーがありました。あとは個人的にダンスシーンがあったり、初めて金髪にすることであったりと課題もあったので、これまで以上に繊細に丁寧に役作りをしました。

原作が正解ではあるんですけどそれをそっくりそのまま演じるのではなく、僕がやるからこそのアレンジは加えていきたいと思いました。大きく変えるというわけではなくスパイス的な感じですけど。

そうしないと自分の中で嬉しくないというか、自分がやる意味がなくなってしまうので、その辺りは監督と結構相談をしました。

あとは現場ではなるべく(柘植将人役の)浅香(航大)さんとしゃべるようにしたり。ドラマ版では4人(赤楚衛二、町田啓太、浅香、ゆうたろう)のシーンは後半の方に少しあるだけだったんですけど、(キャストの中では)最年少ながら自分からコミュニケーションを取るようにもしました。

――先ほど、湊は「僕自身にいろんなものをくれた」ともおっしゃっていましたが、どの部分でそう感じたのでしょうか。

ダンスをやっていたり、金髪だったりするところは僕自身と少しギャップがあるんですけど、ツンデレなところや、猫が好きだったり、心の声ではちょっと甘えたり、人との距離感に対して不器用なところがあったり、好きだけど直接好きって言えないところだったり、自分と似ているな、と思うところが多かったんです。

だから僕から監督に相談して湊をこういう風に演じたいと言うこともあって。監督がすごく丁寧に一緒に役を作ってくださる方で、何か疑問があったら自分も言うけど、僕にも言ってほしいと言ってくださって。平等な関係でいてくださったのでとても助けられました。

――例えばどんな提案をされたのですか。

原作でもそうなのですが、台本でも最初の頃の湊にはツンツンしているイメージがあったんです。ただ僕としては傍から見たらそうでも柘植さんからの見え方はフラットにしたい、と思って。

機嫌が悪いとかではなくあくまで仕事としてこの場で来ている、というような。セリフの言い回しや声のトーンでそういう雰囲気を見せたい、と監督にお話しました。

猫のうどんちゃんがきっかけで仲良くなっていく描写も、急にガラッと態度が変わるわけではなくてフラットなところから変わっていく方がいいと思ったので。そこは監督もその方が良いとおっしゃってくれて、僕的にもやれて良かったなと思います。

あとはダンスが……正直、難しかったので少し簡略できないかとお願いしました(笑)。クランクインの2週間前くらいから練習を始めたんですけど、それまで一人で踊ることはあっても誰かとコンビネーションを組んで踊るというのは初めてで。

グルーヴ感とかがホントに難しかったです。グループをやってる人はこんな感じなのかな?って思ったりしました。

――まさに湊の友達の六角祐太役の草川拓弥さんは、超特急というグループでダンスをやっていますよね。

拓弥くんとは過去に一緒に踊っていた頃の写真を撮る、という場面があったんですけど、現役でやってるだけあって軽やかでしたね。その場で先生が振り付けたものをやったんですけど、本当にリーダーみたいな感じで教えてくれたました。

教え方が上手くて全然嫌味がないんです。自分ができるとポンポン先に行ってしまうイメージがあったんですけど、一歩一歩僕に合わせてゆっくり教えてくれるのでありがたかったです。六角がいてくれてよかったな、と。

ただあとから聞いたんですけど、もともとは人見知りで自分から行くタイプではなかったみたいで。でもその時はお兄さんとしてリードしてくださったので、頼れる先輩っていう感じでした。

湊と柘植は、安達と黒沢とは全然違う感じの恋人同士。そこを対照的に観てもらうのも面白い

――映画では湊と柘植の関係がドラマの時より少し発展したような場面もありますね。

ドラマでは二人が付き合ったところで終わっていて、原作でも二人のその後については描かれていないので映画での展開を楽しみにしていてください。もちろん恋人同士という関係性でのスタートではありますが、ラフな感じでいたいな、と思って演じました。

もちろんお互いに好きで気持ちを伝え合っているんですけど、いい意味で気を使っていない空気感を出したいと思って。柘植さんも湊と一緒にいられるのは嬉しいけど、それをあまり言動などで出すタイプではないので、あくまでフラットな感じで。それにもう湊は心の声を聞かれないわけですから、あまり深く考えずにやりました。

ただふとしたやり取りで二人はこうやって支え合っているんだな、とか、湊が子どもで柘植さんがお兄さん的な立場なんだな、とかは見えるようにはしました。

――やきもちを焼いたり、相手を思うからこそ距離を取ることもありましたね。

柘植さんの言いたいけど言ってもいいのかな、みたいなところと、湊くんのツンデレなところとがあって、僕も台本を読んでいて「こうなっちゃうんだ」と思ったりもしたんですけど、それも伏線だったりもして(笑)。

安達と黒沢とはまた全然違う感じの恋人同士なので、そこを対照的に観てもらっても面白いんじゃないかと思います。

――ドラマの撮影から実際の月日は1年くらい経ちましたが、現場の雰囲気はどうでしたか。

最初は同窓会みたいな感じでした。「また会えたね〜」みたいな。皆さんすごくフランクなので控室はいつもガヤガヤしてました(笑)。スタッフさんもほとんど同じ方だったので一瞬で溶け込んで居心地の良い環境でした。

僕自身はこの作品のファンとしての感覚もあるので、「僕がここに居てもいいの?」みたいなところもあったんですけど、皆さんがすぐに引き込んでくださって。一度ご一緒しているので最初から深まってる状況でできたのは楽しかったです。

――印象に残っているシーンは?

4人での初詣のシーンは台本を読んだ時に「ここで集まれるんだ!」と期待が高まりましたし、ドラマではあまり4人のシーンがなかったのですごく嬉しかったです。まだ完成作を観れていないのでどうなってるかはわからないのですが結構アドリブも入れました。

それから安達の家に4人で集まるシーンもあるんですけど、湊はドラマの時は行ってなかったので「こうなってるんだ〜」みたいな、ファンの気持ちにもなりました(笑)。すごく馴染みやすい家で、僕らがお邪魔してもすぐに落ち着ける場所になりました。

湊くんと黒沢という珍しい組み合わせのやりとりもあって。どこまで観客の方々に聞こえる形になってるかわからないですが、お互いの恋人の話をしたりして、「なんかこういう日常ってすごく幸せだな」なんて思いながらやっていました。

撮影の最初の方にちょっとしたハプニングがあって4人で笑ってしまうということがあったんですけど、そこで一気に場が和んでグッと距離が近づけた気がしました。

――4人でいる時はどんな雰囲気なのですか。

基本的には町田さんが回してくださって、赤楚くんがそのすぐそばにいて、浅香さんと僕はゲストみたいな立ち位置です(笑)。でも僕も気になったこととかはすぐに言うタイプだし、みんなボケるし、ツッコむし、みたいな感じでした。

僕からすると皆さん年上なんですけどそういう堅苦しさも一切なく、そこに監督やスタッフさんも混じってみんなでワイワイやっていました。チームとして仲が良かったので現場でも控室でもとにかくずっと話が止まらなかったですね。

相手を思ってのすれ違いは普段から感じる

――本作では相手を思いやるゆえのすれ違いも描かれていましたが、ゆうたろうさん自身は自分だったらどうすると思いましたか。

僕は一人も好きなので、誘ってくれたら行くんですけど自分からは人をあまり誘わないタイプなんです。それによく気を使って誘ってくれなかったり、とかもあるので、そういう相手を思ってのすれ違いというのは普段からすごく感じています。

僕が「行く」って言うと、無理して来てくれてるんじゃないか、って思われることもあって。だから僕は行きたくない時は「行かない」って言うから、友達にしろ、家族にしろ、気を使うのはやめようって言っています。

同じ芸能のお仕事をしている人と会う時は、周りのことを確認しなくちゃいけなかったり、多少気を使わなくちゃいけないとは思うし、そうやって気を使い合うのも嬉しいんですけど、僕にはもっとただの友達みたいな関係でいたいという気持ちもあるので、気を使うのはやめようと話しています。

――心を許してる人だからこそ、本心をきちんと伝えることは大切ですよね。

そうしないと自分が疲れてしまうので。自分で自分を追い詰めるようなことはやめようと思っています。ただ伝え方には気を付けています。言い方によっては傷つけるようなこともあるのでそこはきちんとカバーしながら、自分の想いはちゃんと伝えよう、という気持ちではいます。

――最後に映画の公開を楽しみしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

ドラマ放送後の1年半越しの映画ですけど、それぞれの関係性もそのままだし、何も考えずにあの世界観を楽しんでいただけると思います。それからドラマは観ていなかったという方も、登場人物の名前と関係性だけわかっていれば楽しめる内容にもなっているので、そこは気にせず観ていただければと思います。

この作品がすごいな、と思うのは、地方や海外で放送されたのもファンの方の愛があってこそで。SNSでトレンド入りできるように発信してくれたり、このシーンのここの会話が好き、とか、僕たち以上に何回も観て、それを広めてくれたり。そのおかげで映画化ができたと思うし、僕らもこの作品に出会えて良かったと改めて思っています。

なかなか直接会うことが難しい中で、「〇〇でフライヤーをもらって来ました」とか、「〇〇でゆうたろうくんと一緒に写真を撮って来ました」とか、そういう言葉や写真をSNSを通して届けてくれると、僕らもその想いを作品を通して返さなきゃと思って、これまで以上に全力で向き合いました。

宣伝をもっと頑張って、映画がロングランになって、ドラマを観ていなかった方もこの作品の素敵さに気づいてくれたら嬉しいし、最初にも言いましたけど、男性同士の恋愛ものに抵抗がある方も、一回、そういう想いを取っ払って観てくれたら、きっといいなと思ってくださるんじゃないかと思います。そういうきっかけにこの作品がなれたらと思っています。


ご自身も本作のファンと公言しているだけあって、終始、楽しそうにお話をしてくださったゆうたろうさん。特にファンの方への感謝を語る時には、溢れる想いがお話を聞いていて伝わってきました。

『チェリまほ』ファンとしては安達と黒沢のその後も気になるところですが、ぜひ湊と柘植のその後にも期待して観てほしいです。ドラマ同様、きっと幸せな気持ちに浸れると思います。

作品紹介

映画『チェリまほ THE MOVIE 〜30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜』
2022年4月8日(金)全国ロードショー