ついに歓喜のときを迎えたサイ・ペイイン 恩師ふたりへ捧げる勝利だ(撮影:佐々木啓)

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<明治安田生命レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメント 最終日◇13日◇土佐CC(高知県)◇6228ヤード・パー72>
日本ツアーに参戦して12年目。プレーオフに備えていたパッティング練習場で優勝の報告を受けると、サイ・ペイイン(台湾)は両手を高く上げ、満面の笑みを浮かべた。「不思議な気分。うれしいしかない。本当ですか? と思いました」。長い年月をかけて、ようやく手にした日本ツアー初優勝だった。
2日目を終えて、トータル6アンダーの5位タイ。トップとは4打差という状況で、最終組の2組前からコースに出た。「風が強いというイメージしかない」という土佐CCだが、序盤はここまでの2日間同様に穏やかな天候が続いた。そんな陽気にも後押しされて前半から3つ伸ばすと、上位との差も詰まっていく。13番からは3連続バーディ。そして2オンに成功した15番パー5で1つスコアを伸ばし、単独トップに躍り出た。
そのまま大会新記録となるトータル13アンダーでホールアウトし、クラブハウスリーダーとなった。後続には、こちらもものすごい勢いで駆け上がった石井理緒や、最終組の西郷真央、植竹希望、堀琴音といった選手が懸命のプレーを続けている。「そんなに簡単に勝てないと覚悟してました。他の人のミスは考えたくなかった」。プレーオフになるものだと備えていたが、誰にも並ばれることはなく逆転劇を完遂した。
QTを経て2011年から日本を主戦場にプレー。一番つらかった時期を聞かれると、真っ先にこの時期を思い出す。「日本語も分からないし、どんなツアーか想像もできないまま来ました。最初は5試合出て1試合予選通過できるかどうか。技術が通用しないことも痛感しました」。そんな折れそうな心を支えたのが、島袋美幸、河野清子という2人の師匠だ。
「ルール、マナー、プロアマのルールも分からない。環境もすごく難しい。でももう少し続けたらよくなると言われて、練習して乗り越えました」。結果ではなく、とにかく内容を追究し、それを次のプレーに生かす指導法で、ゴルフ、そして日本生活の楽しさも教えてくれた。こうして13年にはプロテスト合格。さらに16年の初シード入り、そして今回の初優勝へ導いてくれた。「島袋さん、河野さん(と師匠)に恵まれました」。河野氏は、この初優勝大会でキャディも務めた。2人の恩人には感謝の思いしかない。
「いろいろと経験しながら、一番悪いところから上がってきたけど無駄ではありませんでした」。18、19年シーズンはシード権も獲得できず、それでも諦めずに戦い続けた。歓喜の瞬間は「興奮のほうが大きかった」と涙はなし。笑顔いっぱいの初優勝となった。「今年の目標は優勝だったけど、早めに達成できました。もう1つはメジャーでの活躍なので、それに臨みたい」。今年の4月27日には31歳になるが、まだまだ日本でやらなければいけないことは残っている。(文・間宮輝憲)

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