汗びっしょりの僕。疲れ果てた。けど、まだまだ遊びたい、心の火種が燃えたまま。消さなくちゃ、あ、そうだ店長、ビールください。お疲れ。みんなお疲れ。楽しかったね、ありがとう。ありがとう。

気温と湿度を増した終演後の会場。なんとも言えない狂熱の残り香。みんないい顔してた。僕らも、お客さんも、会場のスタッフもみんな。

2杯くらいだろうか一気に飲み干して、一旦落ち着くためにまだまだ騒がしいフロアを抜けバルコニーに出た。もらった高いタバコに火をつけて吸った。うまい。うますぎる。夜の街がとてもキラキラして見えた。外から見ればここも小さな灯りの1つに過ぎない。けど、すごくいい時間を僕たちは過ごしたよと心のなかでつぶやいた。

僕を追ってきたんだろう、さっきの女の子がまた話しかけてきた。彼女はすごく興奮した様子で「本当に本当にすっごくよかった!!! あなたすごい人だね!!! スタッフと間違えてごめんね!!!」と言った。僕は笑ってしまった。「こちらこそありがとう、この街で演奏ができて本当に良かった!」と答えた。彼女も笑っていた。名前も知らないし、多分一生会うこともないだろう。

この旅を経験したことによって、僕はけっこう違う人間になったと思っている。大切なことにいっぱい気づける旅だったから。そのひとつを紹介した。

今夜もきっと世界のどこかで素敵なことが起こってる。音楽が何のためにあるのか、僕らはなぜ出会うのか、言葉にならない答えを教えてくれる夜。忘れられない夜。まだまだいっぱい欲しいから、まだまだ頑張ろうって思ってます。

(テキスト/夏目知幸、イラスト/Naohiro Gonda、編集/川浦慧)