頑張らず快適に過ごす。夫とふたり暮らしの女性が始めたサステナブルな生活とは?
きっかけは幼い頃に体験した母のエコロジーな生活から
サチコさんが生まれ育った滋賀県は、琵琶湖のある自然が豊かな土地です。サチコさんが幼い頃、琵琶湖の汚染が社会問題になっていたことから、サチコさんのお母さんは家庭のなかでなるべく環境に良いことをしていたんだとか。そんなお母さんの影響を受けて、楽しみながらサステナブルな暮らしを実践しているサチコさんに、今日からできる可食部を増やすレシピや家事全般に取り入れられる環境にやさしいアクションのお話を伺いました。
――サステナブルな生活に意識を持ったきっかけを教えてください
サチコさん 私のなかで2段階くらいあって、まずひとつは私の母の影響で環境問題に興味を持ったのが、現在のサステナブルな生活に繋がっているかもしれません。私の母が環境のために粉石鹸を使っていたり、ごみのリサイクルを徹底していて、自宅の庭にコンポストを置いて生ゴミを処分したりしてました。
もうひとつは、2年前に関西から東京に引っ越ししてモノを処分するとき、まずミニマリズムに興味を持ったんです。そこから調べていくうちに“エシカル”、“エコ”、などと絡めて取り組んでいる海外のユーチューバーの影響で、自分もサステナブルな暮らしをしたいと思うようになりました。
――最初は何をすることから始めたのですか?
サチコさん 東京に引っ越して来たときに断捨離を始めて、無駄なものを買わなくなりました。もうひとつは、2年前から動物性の食材を控えるようになりましたね。
私と夫は元々普通の食事をしていました。その生活から8割、9割と肉を減らしていったので、最初は肉を使わないメニューを考えるのが大変でしたね。一番最初はヴィーガンにならなければと振り切ってしまったんですけど、全然うまくいかなくてフラストレーションが溜まってました。
今、家では肉や魚は食べないけれど物足りなさは感じない
――サステナブルな生活を始めて、いかがですか?また旦那さまはどんな反応ですか?
サチコさん 夫も私も元々は肉好きなので「肉が食べたくなったら外食に誘ってね」といつも言っていて、週1、2回ほどの外食のときには肉料理を食べることもあります。
私たちは元々大豆製品などの食材が好きだったので、食卓では肉を大豆ミートに変えてスパイスカレーやミートソースを作るなどして自然にうまくいきましたね。肉肉とは言われなかったです(笑)
肩の力を抜きつつも徹底しているリユース、リデュース、リサイクル
――最初の頃と比べてサステナブルな生活は家事、炊事、洗濯を含めてどのように広がっていますか?
サチコさん 食器洗いは環境に悪影響を与えない生分解(せいぶんかい)する液体、洗濯洗剤も同じく生分解性の溶けるシートに変えています。よく作るパスタもプラスチック包装ではなく、紙容器が採用されたBarilla(バリラ)メーカーの商品を購入するようになりました。
買い物では、オーガニック野菜を購入し、野菜にかかる支出は増えましたが、肉と加工食品を買わなくなったので、食費はほとんど変わりません。
また私が5年前に立ち上げたネットショップでは、当初はハンドメイド作家としてアクセサリーを販売してましたが、現在は、環境負荷低減を目的とした環境にやさしい雑貨や、手作りの布製コーヒーフィルターを紹介し始めました。ほかにもなるべく多く着てもらうことを広めたくて、「100回着る服」を販売するようになりました。
※100回着る服とは、タグに100個の印を刺繍し、着る度にそれをひとつずつカットすることで何回着たかが分かるようになっています。
家庭で気軽に取り組める。サステナブルなアクション5つ
サチコさんが普段の生活でおこなっている、サステナブルなコトを教えていただきました。どれも簡単に始められますよ。
1. ガラス容器を使う
ガラス容器を使えば、ラップを使わない生活に。使い勝手のよい大きさのガラス容器をいくつか用意して、空のまま冷蔵庫に保管しています。使うときに取り出し、元に戻す。冷蔵庫の中が定位置なので、容器の保管場所を気にする必要がありません。また冷蔵庫内に食材を入れる量が限られるため、買いすぎることなく無駄もないんです。
2. ティータイムのアイテムを変えてみる
毎日のティータイムにフェアトレードのコーヒー豆や、布素材のコーヒーフィルターを使っています。またひとり分のコーヒーを淹れる場合、目の細かいハイパー茶こしを使い、そのままコーヒー粉を入れてお湯を注いで飲んでいます。目が粗いと粉が落ちてしまいますが、これなら問題ありません。紙製のコーヒーフィルターや紙パックの使用が減らせて、いつものおいしいコーヒーが楽しめます。
3. 植物性ワックスラップを使用する
ラップではなく水洗いして繰り返し使える植物性のワックスラップを使い、野菜をしっとりと包んでいます。ピッタリとくっつくので機能面も十分。サイズ違いでいくつか用意しておくと便利ですよ。
4. 生ゴミ専用ボックスを作り、コンポストする
生ゴミはホーロータイプの専用ボックスに入れて、冷蔵庫へ保管しています。このくらいの大きさのボックス(縦11×横11×高さ12cm)だと大体一週間くらいで生ゴミがいっぱいになります。それを普段は消滅型自家製コンポストに入れて処分しています。
消滅型コンポストは、土の中のバクテリアが生ゴミを水と二酸化炭素に分解して消してくれます。最初は堆肥型コンポストを使っていたのですが、どんどん増えていく堆肥の行き先に困ってしまい、手作りの消滅型コンポストに変えました。土が増えず都会の家庭向きでおすすめです。
5. 世界にひとつしかない食器用洗剤ポンプ瓶を作ってみる
オイルの空き瓶とシャンプーのポンプとコルクを使って作りました。プラスチック容器だとだんだん白くなって汚れた感じになりがちですが、ガラス容器は見た目が良く、繰り返し使えていつでもピカピカでお気に入りです。
サチコさん直伝、フードロス削減レシピ
食品ロス削減レシピと聞いてまず思い浮かべるのは、ゴミをなるべく出さないように工夫はしてるだろうけどあまりおいしくはなさそう……ということ。実はそんなことないんです。
今回は“かぼちゃのワタを使った簡単でおいしい本格パスタ”を教えてもらいます。「普通は捨ててしまうかぼちゃのワタを使い、捨てるものは極力なくして可食部を増やすレシピです。ワタを入れることで少しだけ大人の味に仕上がりますよ」
濃厚クリーミー。かぼちゃのワタを使ったパスタ
調理時間:20分
ソースにワタを入れることでちょっぴりほろ苦い風味が味わえる、かぼちゃパスタ。具材はさやいんげんを使用しますが、彩りがよいパプリカでもおいしく食べられます。
材料(1人分)
・パスタ……100g
・玉ねぎ……1/4個
・かぼちゃ……1/4個
・さやいんげん……5本
・水……100cc
・豆乳……100cc(調整、無調整どちらでもOK)
・カシューナッツ……ひとつかみ(なくてもOK)
・オリーブオイル……適量
・オレガノ……小さじ1/4杯
・塩、こしょう……少々
※より濃厚なソースがお好みなら、水と豆乳の量をそれぞれ20ccほど減らしてください。
作り方
1 .パスタは調理する2時間前から水に浸しておく
パスタは乾麺からゆでず、まずお皿に移して浸かるくらいの水(分量外)を注ぎ、2時間ほど放置しておきます。
「こうすることで、十分に水分を吸収し、ゆでる時間を大幅に短縮することができるんです。目安は色が抜け、触るとぶよっと柔らかくなるくらい。エネルギーを最小限に抑えられ環境にやさしいですし、ガス代の節約にもなりますよ」
2. 玉ねぎを切る
1/4個に切った玉ねぎの皮を取り、包丁を使ってザクザクと粗めにみじん切りします。
3. かぼちゃのワタと種を取る
かぼちゃからワタと種をスプーンで取りのぞき、ワタについている種は指を使って丁寧に取り分けます。
「いつもはこのかぼちゃの種を綺麗に水洗いしたあと、しっかりと水気を切り、そのままオーブンでローストしてます。サラダに入れたり、そのままボリボリ食べたりしてもとてもおいしいですよ」
4. ワタを粗めに刻む
取り除いたワタは包丁で粗めに刻みます。
5. 鍋で玉ねぎとワタを煮込む
鍋にオリーブオイルを入れて、粗く刻んだ玉ねぎを炒めます。2~3分して玉ねぎがしんなりしてきたら水100ccとかぼちゃのワタを入れます。そのまま中火で5~6分煮込んだら、粗熱をとります。
6. さやいんげんを切る
さやいんげんは、食べやすい大きさのななめ切りにします。
7. 豆乳と煮込んだかぼちゃのワタをミキサーにかける
ミキサーに豆乳100cc、カシューナッツ、粗熱をとった玉ねぎとかぼちゃのワタを入れて、ソースを作ります。
「ソースのコクを出すために、カシューナッツのほかにも、無糖のピーナッツバターやピーナッツパウダーで代用してもおいしくできます」
8. パスタとさやいんげんを少量の水で蒸す
別の鍋に、水分をたっぷりと含ませたパスタ、切ったさやいんげんを入れます。スプーン大さじ1~2杯(分量外)の水を足し、蓋をして2~3分蒸します。
9. 鍋の中でパスタとソースをからませる
ソースを加え、パスタとさやいんげんにからませたら、最後にオレガノ、塩こしょうをして完成です。
モノの選び方ひとつで環境は変えられる
自分がができることには限界があると知っているから、完璧は求めずに日常のなかで少しだけムダなものを減らしていこうと意識する。それだけでクリーンで居心地のよい生活ができる術を知っているサチコさん。
「暮らしを丸ごと変えるのは各ご家庭の事情もあって大変なこともあると思いますが、例えば買い物のときに意識して環境に良いものを選べればいいですよね。どうしても野菜を包んでいる包装紙はごみになってしまいますが、環境負荷の観点から消費者としてできるのはなるべく紙箱のメーカーを買い続けることかなと思います」
ゆったりと自然体でいながら柔軟な発想で快適さを追求し続けるサチコさんのサステナブルな発信は、きっと私たちの生活にもじわりじわりと浸透していくはずです。
まずはむずかしく考えることはありません。家庭で無理せず気軽にできることから少しずつ、地球にも私たちにもやさしいサステナブルな生活を始めてみませんか。
取材・文:千島絵里香
撮影:齋藤 萌