山形国際ドキュメンタリー映画祭2021ポスター

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 隔年で行われる山形国際ドキュメンタリー映画祭(以下、YIDFF)が、コロナ禍の状況を鑑み、10月7日〜14日に行う第17回を初のオンラインで開催することが決まった。2日に山形とオンラインで行った同映画祭の記者会見で発表したもの。会見に登壇した加藤到副理事長は「半年間議論を重ね、映画祭から絶対にクラスターを出してはいけないということが優先された」と説明した。

 苦渋の決断だった。今や国際的な知名度を誇るYIDFFは、人口24万6,470人(7月1日現在)の街に期間中、国内外から例年2万人を超える参加者が訪れる。映画祭の魅力は世界各国から集まった作品にあるが、YIDFFの場合はコンパクトな街で監督や観客が気軽に語り合える「密」な交流も魅力の一つ。加藤副理事長は「それがコロナ禍でどうしようもなくなってしまったのが現状です」と決断に至った経緯を語った。

 ただし、パンデミックの中でも映像作家が作品を作り続け、発表の場を待ち望んでいることを考慮した。例年より2か月遅れたが昨年11月から出品作品を募集したところ、インターナショナルとアジア千波万波の2つのコンペティション部門に124の国と地域から1,972作品の応募があったという。畑あゆみ事務局長は「例年並みの応募があり、改めて映像作家の皆さんがYIDFFに寄せてくれる期待を感じました」と語った。

 この日は両コンペティションのラインナップも同時に発表された。インターナショナル・コンペティション部門は、常連の巨匠フレデリック・ワイズマン監督の新作『シティ・ホール(原題) / City Hall』(2020)、ヤン・ヨンヒ監督が「済州島四・三事件」を生き抜いた母親の半生を記録した日韓合作映画『スープとイデオロギー』(2021)をはじめとする15作品。

 その中には、香港の民主化デモを匿名の監督たちが捕らえた『理大囲城』(2020)もある。同作は香港では上映されておらず、名古屋・シネマスコーレで行われている「2021年香港インディペンデント映画祭」(6日まで開催)でも上映されている話題の作品だ。

 一方、アジア千波万波部門にも、同じく揺れる香港から麦海珊(アンソン・マク)監督『怖れと愛の狭間で』(2020)、ミャンマーの紛争下で行われている性暴力を告発するナンキンサンウィン監督『心の破片』(2021)、さらにコロナ禍をテーマにした洛洛(ルオ・ルオ)監督『ルオルオの怖れ』(2020)など18作品。いずれも世界の「今」をとらえた興味深い作品ばかりだ。

 オンラインでの視聴方式に関してはこれから詳細を発表するそうだが、Q&Aはもちろん、東日本大震災をテーマにした「ともにある Cinema with Us」など他のプログラムも今までどおり行うという。また開会式と閉会式は関係者のみのクローズドでリアル開催され、コンペティションの審査員は山形に集結して審査を行うという。

 加藤副理事長は「オンラインとなっても、少しでもYIDFFらしい開催を目指したい」と抱負を語った。

山形国際ドキュメンタリー映画祭2021は10月7日〜14日オンラインで開催