主演は4年ぶり

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 日本テレビの来年1月期の連続ドラマは「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(水曜午後10時)になる。主演は4年ぶりのドラマ主演となる菅野美穂(43)で、オリジナル脚本を書くのは大御所・北川悦吏子さん(58)。ドラマファンはさぞ大喜びかと思いきや、一部からブーイングの声が上がり、炎上騒ぎになっている。なぜだ?

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 放送開始前のドラマが炎上騒ぎになるのは前代未聞。まだ概要が発表されただけなのだ。

 このドラマで菅野美穂が演じる主人公はアラフォーのシングルマザー。恋愛小説家で「恋愛小説の女王」の異名を持つ。ところが、20歳になる自分の娘(浜辺美波、20)には彼氏がいない。

主演は4年ぶり

「理由は明らか。娘はオタクだからだ。しかも筋金入りの。あ〜、あの子が二次元にまみれて、一生家にいたらどうしよう」(番組ホームページより)

 そこで母娘は「私たち、恋をしよう!」と決意する。そして母にとっては久々の、娘にとっては人生初の恋を繰り広げる…というお話なのだそうだ。

 この初期設定に異議を唱える声がツイッター上で相次いでいる。

〈オタクは恋愛できないという考えも、恋人ができないことは悪であるという考えも、親は子供に干渉してよいという考えも、全部古くてイケていない〉

〈現代にオタクが初期値として備わっているのも普通になってきたこのご時世に『オタクだから彼氏ができない』設定はやばすぎる〉

娘役の浜辺美波

〈初期の相棒とか、昔のドラマで辺り構わずタバコをバカスカ吸っているのを見て違和感を覚えるのと同様に、もはやNO恋愛、NO LIFEではなくなってしまっているのですよ〉
――。

 無論、〈北川悦吏子先生のドラマ楽しみ〉などと放送開始を待ち望む声も多い。とはいえ、不快感を露わにする意見が目立つのも事実なのである。

古い価値観

 元MBSプロデューサーで同志社女子大メディア創造学科の影山貴彦教授はこう見る。

「このドラマの説明を活字で見た限り、かなりステレオタイプだとは思います」

 やはり初期設定の価値観には古さを感じているようだ。

「ただし、日テレですから、何かスパイスを仕掛けてくるのではないですか」(影山教授)

 この初期設定に今の時代の視聴者が違和感を抱くのは、無理からぬ話かも知れない。総務省統計局によると、生涯未婚率は2020年には男性で約26%、女性で約17%。2030年には男性で約30%、女性で約23%になる見通しなのだから。多様性が重んじられ、未婚も恋をしないのも自由な時代なのである。

 また、北川さんは過去、何度も体にハンデのある人の恋を書いてきた。聴覚に障がいのある新進画家の榊晃次(豊川悦司、58)と女優の卵・水野紘子(常盤貴子、48)による「愛していると言ってくれ」(TBS、1995年)などである。

 いずれも高視聴率だった一方で、毎回、同じ批判も受けている。「障がいのある人の描き方がステレオタイプ」というものだ。

 激烈に批判する人もいた。財団法人全日本ろうあ連盟の評議員を長年勤めた人もそう。

「『愛していると言ってくれ』を書いた脚本家のインタビュー記事を読んだ。なんでも、この脚本家は自分の感覚を大事にするために、取材をしないで脚本を書くらしい。さらに、聴覚障がい者のネタは、テレビで手話のニュースを見て、手の動きの美しさに閃いたのだという。あまりにも安直な発想とお手軽な創作姿勢に驚いてしまった(一部抜粋)」(月刊『記録』1997年3月号より)

 ひょっとしたら、今回のドラマへの批判と通底するのではないか。北川さんの感覚で「筋金入りのオタクは恋愛できない」という物語の前提をつくってしまったから、反発を招いている気がする。

 北川さんの場合、炎上するのは主にツイッターだが、自身もツイッターで発信していることも批判に拍車をかけているように見える。

 北川さんが書いたNHK連続テレビ小説の2018年度の上半期作品「半分、青い。」は21・1%の高い平均世帯視聴率をマークし、評判も良かったが、放送中はたびたびツイッターで炎上した。一部のセリフなどがなどと槍玉に上げられたのだ。

 代表例は2018年8月18日放送の第105話で、主人公・鈴愛(永野芽郁、21)が夫・涼次(間宮祥太朗、27)から離婚を切り出された場面。映画製作の夢を諦められない涼次が「家族は邪魔になる」と離婚を求めると、鈴愛が「死んでくれ、涼ちゃん――」と訴える。これにツイッター上で〈朝ドラらしくない〉という批判の声が上がった。

 その後、北川さんはこんな言葉をツイートする(2018年8月28日)

〈最近、リプライ(注・返信)に妙なものが入って、こわくて、読めなくなってます。素敵なリプライも来るので、それは読みたい。ということで、北川さんこれは大丈夫というものに、#北川プラス とつけてください。そしたら、必ず読みます。ハッシュタグ検索もするので、私への暖かい感想はこちらへ。#北川プラス〉

 もっとも、今度はこの言葉に批判が相次いだのだから、悪循環だった。といったものだ。

 北川さんはファンのためにツイッターで発信を繰り返しているうち、アンチをつくってしまっているように見受けられる。そのアンチ勢力が北川作品のすべてを批判するという一面もあるように映る。

 北川さんの才能と「半分、青い。」を絶賛する前出・影山教授が語る。

「元テレビマンの私も含めて、メディアを構築しているのは自己顕示欲の強い人たちの集まりだと思っています。北川さんの場合、それをSNSで打ち出す時、ともすると受け手に対して心をささくれ立たせる形になっているのかも知れません。もう少し工夫をされたほうがいいのかもしれませんね」

 巨匠・山田太一さん(86)の盟友で名演出家の鴨下信一さん(85)に聞いたところによると、「山田さんはご自分の娘さんに話を聞き、若い女性たちの考え方を常に知ろうとしていた。だから作品がいつも時代に合っていた」という。

 さて、「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」は時代に合っているのか? 影山教授は「ドラマは、3回は見ないと評価できません」と強調する。放送開始が待たれる。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月25日 掲載