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ミニの後継モデルとして登場したメトロ

text:Malcom McKay(マルコム・マッケイ)photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

  
あまりに優れた先代のために、販売が伸びなかったメトロ。1970年代は親会社のブリティッシュ・レイランド(BL)社はストライキ続き。良いクルマだったのに、イメージは奮わなかった。

1980年のある雑誌には、「イギリス車であることを誇りに思える」という見出しが載った。その15年後、メトロ111Siを試乗したAUTOCARは、「フォルクスワーゲン・ポロのライバル・モデルが夢見るような、ドライビングの楽しさがある」と評価している。

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

そんなメトロは、強い逆風の中に生まれた。英国市場では、国産車より輸入車の方が高いシェアを獲得していた。

スタイリングは、時代を感じさせない。快適性と実用性、操縦性や走行性能は、素晴らしいバランスに仕上がっていた。新しいエンジンとトランスミッションを採用し、控えめなフェイスリフトを重ね、1998年までの寿命を支えた。

1997年のユーロNCAPによる衝突テストでは、設計が古く得点が低迷。メトロに終止符を打つきっかけとなった。BMWが親会社となったローバー社は、販売は堅調だったものの、製造終了を決めた。

モデルライフを通じて、ハンドリングは高い評価を保った。静かで洗練され、風切り音も小さい。車内は広くはなく、身長の高いドライバーは悩まされた。

サスペンションは、アレックス・モールトンによるハイドロガス式を採用。素晴らしい乗り心地を叶えている。MGFの専門ショップなら、ハイドラガスの補充は今でも可能だ。

エンジンはとても堅牢 価格は高騰気味

当時斬新だったのが、40:60の分割で式折り畳みが可能だったリアシート。現在では当たり前の機能だといえる。

ブレーキパッドとフルードの警告灯は、1980年では珍しい装備だった。ランフラットタイヤも選べ、電動式のテールゲートも付けられた。パワーウインドウやクルーズコントロール、トリップコンピューター、エアコンなど、オプションも多彩だった。

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

定期点検のインターバルは1万9000kmと長く、クラスをリード。運転席からの視界は、前後左右、優れている点も特長だ。

初代ミニ譲りとなる、A+エンジンとトランスミッションは、定期的なオイル交換さえしていれば、極めて信頼性が高い。仮に故障しても、安価に修理できる。

途中でKシリーズ・エンジンへ交代。こちらも活発なユニットで、定期的なメンテナスで高い信頼性を保てる。トランスミッションは多くが5速MTだった。

1980年代から1990年代の普通の乗用車だから、今ではほとんどが廃車になっている。ボディの錆が、理由の1つ。おかげで近年の残存車両は、価格が高騰気味になっている。

部品は、ミニの専門ショップで入手可能なことが多い。しかしボディトリムは、すでに見つけるのが難しいようだ。

AUTOCARで注目したいのが、MGメトロ・ターボとローバー・メトロGTa、GTiなど。英国には、カブリオレも存在している。特に、初期型は需要が高い。

ローバーの多くのモデルと同様、高齢者が何十年も大切に乗っている傾向も高く、素のメトロも良い状態で英国では見つかる。ガレージに保管され、走行距離は短めだ。

メトロの中古車 購入時の注意点

1989年まで、A+エンジンは有鉛ガソリン仕様だった。無鉛ガソリンで、3000rpm以上の回転域まで頻繁に回していると、1万6000kmほどでバルブシートがだめになる。

多くは無鉛ガソリン仕様に変更を受けている。まだの場合でも、英国なら250ポンド(3万4000円)程度で変更が可能だ。

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

Aシリーズは傷んでもオイルがにじむ程度だが、Kシリーズは定期的な手入れが不可欠。タイミングベルトは6年毎か、9万6000kmでの交換が望ましい。冷却系の調子も常に確認しておきたい。

Kシリーズ・エンジンは、仕様が無数に存在する。SOHCとDOHC、8バルブと16バルブ、キャブ仕様のほか、シングルポイント(SPi)やマルチポイント(MPi)のインジェクションもある。

その中でもMPiは最も動力性能で秀でていた。104psを発揮し、AUTOCARのテストでは初代マツダMX-5(ロードスター)に迫るラップタイムを残している。

エンジンオイルやクーラントの状態は、こまめに確認しておく。ヘッドガスケットの交換は自分でも簡単だが、作業は難しい。交換の際、ヘッド研磨もしておきたい。整備さえ怠らなければ、Kシリーズでも30万kmくらいは普通に走る。

AP社製のATを警戒する人もいるが、基本的には信頼性が高く、感触も良い。当時としては評価が高かった、CVTも選べた。

ハイドラガスのメンテナンスが、長期的な課題ではある。少なくとも今のところ、多くの部品が英国では安価に入手可能な状態にはある。

不具合を起こしやすいポイント

ボディ

錆はメトロのアキレス腱。リア・サブフレームのマウント、サイドシル、リアフェンダー、車内の足元、ルーフ後端、テールゲートのヒンジ、窓ガラスの周囲、ドアやテールゲートの下部などは錆びやすい。またリア・サブフレームも、錆びるポイント。

エンジン

アップデートを受けたAシリーズエンジンは、基本設計は古くても評価が高かった。滑らかでトルクがあり、燃費も優れている。劣化してくると、オイル漏れやノッキング、吸気の乱れなどが生じる。

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

続いて登場したKシリーズも優れていたが、冷却系の不調でヘッドガスケットを傷めることがある。走行距離が多いなら、エンジンオイルは指定の1万9000kmより早いタイミングで交換したい。

冷却系

経年劣化でラジエター内が汚れ、腐食が進行することがる。ウオーターポンプも交換しておきたい。

Kシリーズのエンジンでは、パイプ類や吸気マニフォールド周りからクーラント漏れすることも。オーバーヒートを招き、ヘッドが変形したり、ガスケットが吹き飛ぶ。

サスペンションとトランスミッション

ハイドラガスのパイプが腐食し圧力が落ちると、車高が下がり乗り心地も悪くなる。ガスの補充は比較的簡単。ハイドラガスのディプレーサーは、状態の良い中古部品と交換できる。新しい部品はもうない。

ワイドレシオな設定で、4速MTは1990年代まで採用され続けている。

インテリア

アップライトな運転姿勢になるが、シートは形状に優れる。年式によって改良が加えられているが、後期モデルではリアシートの空間が犠牲になっている。

英国で掘り出し物を発見

メトロ・クラブマン1.3L 登録:1989年 走行:3万4300km 価格:3795ポンド(52万円)

この販売店は、低走行距離のメトロを扱うことで英国では有名。その中でもこのメトロは特に優良らしい。オースティン・ローバー終焉直後に登場した、ローバー・メトロだ。

ボディに付くエンブレムはメトロのみ。オイスターベージュのボディは当時のまま。カラーバンパーと、上質なミンク・インテリアが備わる。

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

珍しい4速ATも載っている。出荷時のままのステッカーが残り、トランク内もきれいだ。

MGメトロ 登録:1987年 走行:4万6600km 価格:9750ポンド(134万円)

ワンオーナーのMGメトロ。ブラックのボディには艶も残り、グレーとレッドのインテリアの状態も良い。当時トップスペックのモデル。

一部の内装は緩んでいるようだが、1980年代のベロア生地なら一般的なこと。当時のデザインらしいアルミホイールを履いている。出荷時のノーマルホイールも残っている。ディーラーの記録とナンバーが一致している。

近年、初期のメトロの価格は上昇中。この価格なら、まだお買い得といえるだろう。

オーナーの意見を聞いてみる

ミニ・マニアだと認めるブライアン・ショート。「メトロ・モザイクを新車で購入し、妻もメトロGTaのオーナーでした。ずっとメトロが好きです」。と話す。

「1981年式のHLEが売られているのを1年前に見つけ、購入を決めました。初代オーナーは牧師さんで、1986年まで保管していたようです。クラシックカーの専門店から、車両を見ずに購入したのですが、説明とは違って車検が切れていました」

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

「ワイパーと燃料計は、不動。キャブレターのジェットも、プラスティック製のホルダーから外れていました。すべて自分で修理しています」

「驚くほどのオリジナル・コンディションです。フロント部分は新しいパネルに変えてありますが、ほかのボディはオリジナル。ドアのスピーカーも当時のまま。カセットテープのプレーヤーが付いていた時代のものです」

まとめ

状態は様々あるが、理想的なメトロを良好な状態で見つけるのは、今では困難。特に初期のメトロは、ミニの部品取りにされたケースも多い。購入時には、クルマに付いている部品の状態はよく確かめたい。

後期モデルも同様。MPiはSPiより需要が高い。状態の良い素のメトロを見つける方が、状態の悪いメトロを仕上げるより、はるかに安価で済むはず。

良いトコロ

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)

まだ今のところは、主に中古部品となるが、比較的安価に部品が手に入る。状態の良いメトロを安価に見るけることも、まだ可能。興味があるなら、今が買いどきといえる。

良くないトコロ

交換用部品は底をつきつつある。車両価格は、価値を正当評価していないほど安いことも。

オースチン/MG/ローバー・メトロ(1980年〜1989年/英国仕様)のスペック

価格:新車時 4898〜7999ポンド
生産台数:207万8218台
全長:3404-3521mm
全幅:1544-1562mm
全高:1359-1377mm
最高速度:131-191km/h
0-96km/h加速:9.5-18.6秒
燃費:9.9−17.7km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:747-862kg
パワートレイン:直列4気筒998cc-1396cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:44ps/5250rpm-104ps/6000rpm
最大トルク:7.3kg-m/3000rpm-12.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:4速、5速マニュアル/4速AT/CVT