「女性にはなぜオーガズムがあるのか?」という議論に新たな説が提唱される

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by Carina Silva

射精するために性的快感が必要な男性と違い、女性は必ずしも生殖行為のために性的快感を覚える必要はありません。そのため、女性の性的快感やオーガズムについては、「最適なパートナーを見つけるために進化した機能」といった説や、「男性の乳首と同じく実用的な意味のない進化の遺物」といった説が提唱されてきました。そんな中、イギリスのシェフィールド大学の生物医学者であるRoy Levin氏は、「女性の性的快感が生殖に寄与している」とする説を提唱し、陰核(クリトリス)の存在理由についても解き明かそうとしています。

The Clitoris-An Appraisal of its Reproductive Function During the Fertile Years: Why Was It, and Still Is, Overlooked in Accounts of Female Sexual Arousal - Levin - - Clinical Anatomy - Wiley Online Library

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/ca.23498

Controversial Review of The Female Orgasm Suggests a New Role For The Clitoris

https://www.sciencealert.com/contentious-review-suggests-a-fresh-new-role-for-the-clitoris-in-the-mystifying-female-orgasm



刺激することで女性が性的快感を得られる器官として知られるクリトリスですが、通常の性交中にクリトリスを刺激してオーガズムを得る割合は低く、科学者らも女性の性的快感やクリトリスの存在意義について重要視してきませんでした。

しかし、クリトリスが単なる快感を得るためだけの器官であるとする考えには、大きな見落としがあるとLevin氏は指摘。近年の研究などを基に、Levin氏は「クリトリスは女性が性的快感を得ることに加え、生殖行為においても役割をもっている」とする説を提唱しました。



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女性がオーガズムに達した際にどのような脳の活動が起きるのかをfMRIで調査した研究から、オーガズムに近づくと覚醒・報酬・記憶・認知・社会的活動を含む主要な脳システムが活性化することが判明しています。この広範な脳活動は生殖器を温めて分泌液を増すだけでなく、血流や酸素の増加といった変化をもたらします。

オーガズムが近づくことによる血流や酸素の増加は、生殖器の形を変えることもわかっており、子宮は通常時よりも大きくなって上に持ち上がるとのこと。子宮が持ち上がることによってより多くの精子を膣内に収容できるほか、子宮頸部の形が変わって精子が一気に子宮に移動するのを防ぎ、よりベストな状態の精子を受け入れることができるとLevin氏は主張しています。

「クリトリスが持つ唯一の機能が性的快感をもたらすことだという説は時代遅れです。新たな説は主流の性的信念を変更するものであり、生理学的証拠は明白です」とLevin氏は述べました。



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近年の研究では、良好な人間関係や性的快感に関連するオキシトシンというホルモンが放出されると、卵管が液体を吸い込んで膣内の圧力が変化し、妊娠する確率が増加するという結果が出ています。この性質は、ラットやウシ、イヌ、ウマ、ウサギといったヒト以外の動物の生殖能力を調べた研究でも示唆されているとのこと。

また、ネコやウサギなどではクリトリスが膣の内側に存在しており、メスのオーガズムが生殖に重要な役割を果たしていることが示唆されているそうです。2019年の研究では、オーガズムに達しなかったメスのウサギは排卵する確率が30%少なかったそうで、かつては人間の祖先においても、オーガズムが排卵を誘発して生殖に役立っていた可能性があります。

「過去の研究者らが仮説を立てる際に見落としていたのは、クリトリスへの刺激が脳を介して一連の生理学的変化を活性化するという点です」とLevin氏は指摘。女性のオーガズムは生殖器が精子を受け入れる準備を整え、精子を生き残りやすくして生殖を成功させる可能性を上げる役割を持つと主張しました。



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