日刊工業新聞2019年3月21日

「電池」は国際標準に狙い
 トヨタ自動車とパナソニックが、車載電池の提携関係を深化する。両社は22日、2020年末までに電気自動車(EV)向けなどの車載電池の新会社を設立すると発表。17年末に表明した車載用角形電池事業での協業検討開始から約1年。各社が本格的に展開を始めた電動車の基幹部品である電池分野で、自動車と電機の大手同士が手を組み、国際的な競争を勝ち抜く。

 「これが最後のピースだ」。トヨタの寺師茂樹副社長はEV向けなどの車載電池について、こう断言する。新会社を活用し、電動車で今後大量に使う電池の確保を盤石にする。

 トヨタは新会社設立で、20年を予定する自社ブランドのEV参入に向けた布石を打った。豊田章男社長は17年末に協業を発表した際、「両社でクローズすることなく、幅広く電動車両の普及に貢献していく」と陣営拡大を示唆していた。他の車メーカーも含めた標準技術の確立について、トヨタの好田博昭主査は22日の会見で、「新会社の大きな目的の一つ」と明かす。

 トヨタが17年12月に公表した30年の全世界の電動車販売目標は、550万台以上。これは18年実績の約3・4倍にもなる。現在のトヨタの電動車は大半がハイブリッド車(HV)だが、20年にEVを販売するほか、30年にはEVと燃料電池車(FCV)だけで合計100万台以上を販売する計画だ。

 実現に向けた準備も急ぐ。16年12月発足のEV企画・開発の社内ベンチャー組織「EV事業企画室」を拡充し、18年10月にEVの量産やFCV関連の人員も集約した新組織「トヨタZEVファクトリー」を設置した。

 マツダ、デンソーと立ち上げたEVの基盤技術開発会社「EV C・A・スピリット」にはダイハツ工業やスズキ、SUBARU(スバル)、日野自動車、いすゞ自動車、ヤマハ発動機も合流し、ノウハウを共有する。

 ただ、EVは中国や欧州を中心に動きが活発な一方、国際的な普及度合いは不透明な部分が多く、「30年の段階では主流ではない」との見方も強い。

 また、トヨタはより安全性や急速充電性能が高い、全固体型電池の開発も進めており、車載向けで20年代前半の実用化を目指す。豊田社長はトヨタは「電動化のフルラインアップメーカー」と強調する。今回の新会社設立は、どの技術が台頭しても手を打てるよう、全方位で技術基盤を押さえるのも狙いだ。

 世界大手では独フォルクスワーゲン(VW)が25年にはEVを20車種そろえ、生産台数100万台以上を見込む。米ゼネラル・モーターズ(GM)も23年までに20車種のEVを販売する。19年には中国が新エネルギー車(NEV)規制を導入するほか、仏・英両政府が40年以降のガソリン・ディーゼル車の販売禁止を表明するなど、各国・地域で規制が強まり、EV対応に迫られている。

 一方、トヨタとパナソニックはHV向け電池を手がけるプライムアースEVエナジー(PEVE、静岡県湖西市)を共同運営しており、好田主査は新会社設立後も「HV用ニッケル電池を中心にしっかり生産を担ってもらう」とする。

 しかしPEVEもHV向けのリチウムイオン電池の増産投資を積極化し、EV向けも強化する方針を掲げる。好田主査は「両社で組んでしっかり対応する」と強調するが、「将来は競合関係になる可能性もある」(関係者)。経営効率を考えれば、トヨタ主導での事業集約や統合も視野に入りそうだ。
日刊工業新聞2019年1月23日の記事から抜粋