写真家の若木信吾さんが2018年に立ち上げた絵本レーベル〈若芽舎〉。アーティストやイラストレーター、写真家など、これまで絵本に携わることのなかった顔ぶれで挑むユニークな活動に、書店やメディアからの注目が集まっています。2019年も新しい絵本が続々と刊行。4月25日には、最新作『こっぷんとかっぷん』がリリースされます。そこで今回はその作者で本業は雑誌を中心に活躍するライターの吉田直子さんに『こっぷんとかっぷん』が生まれるまでのお話しを語っていただきました。 

最新作『こっぷんとかっぷん』は、こうして生まれました。

〈若芽舎〉から4月25日にリリース。@wakamesha

「絵本作家じゃない人たちと、2歳児に向けた絵本を作っていきたい」。写真家の若木信吾さんからそんな話を聞いたのは1年前のことでした。私の職業はライターです。若木さんとは、雑誌の撮影で何度も一緒に組ませてもらっていて、こっそり勝手に“アニキ”と慕ってきました。その“アニキ”が新しく絵本のレーベルを立ち上げると聞いたとき、初めて自分から手を上げて、「やってみたい」と言いました。これは私にとって人生初とも言える行為でした。

「やってみたい」気持ちと向き合う。

主人公“ぼく”のモデルは2歳の子供たち。@wakamesha

ライターの仕事を始めたきっかけも、先輩方から「やってみない?」と声をかけてもらってのことでした。「やってみない?」に対しては全力でがんばれるのですが、「やってみたい」がどうしても言えません。長女気質というのでしょうか、自分の「やってみたい」という気持ちには、常に受け身できました。でも、私みたいな人は世の中にたくさんいると思うのです。

絵描きの友達とともに制作スタート。

言葉の響きから生まれたキャラクター。@wakamesha

いざ手をあげてみると、ことは一気に進んでいきました。若木さんから「やろう!」と即答してもらい、私の絵本作りがスタートしたのです。初めから「絵は横山寛多くんに描いて欲しい」と思っていました。横山くんは、鎌倉に引っ越してから知り合った絵描きの友達。私のラフスケッチを元に、その場でさらさらキャラクターの清書をしてくれる横山くんは頼もしかった! ブックデザインも鎌倉在住の林英和くんにお願いし、ご近所でワイワイ話し合いながら、1冊の絵本が生まれました。

子どもが持つ「特別な目」のことを書きたくて。

若木さんの事務所で打ち合わせをする著者。photo:Shingo Wakagi

コップとカップをのぞき込む主人公の“ぼく”が見ているものは、大人には見ることのできない“ぼく”だけの世界。ファンタジーと現実の区別のない、彼らだけが持っている「特別な目」のことを書きたい。でも、そう思えば思うほど、大人っぽいアイデアが頭を支配するようになって、「どうしたものか」と悩み続けました。ところが、手帳に描いたコップとカップのラフスケッチに目玉を入れたとたんに『こっぷんとかっぷん』のキャラクターが生まれ、物語が動き始めたのです。飛び上がるくらい嬉しい瞬間でした。
1年前までは、まさか自分が絵本を作る日が来るとは思ってもみませんでした。「やってみたい」と手をあげて良かった。大人になってからも、新しいことにチャレンジすることはできるんだとわかって、そのことが私はすごく嬉しいです。
(文・吉田直子)

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『こっぷんとかっぷん』(若芽舎)
さく・よしだなおこ/え・よこやまかんた
1,000円(税抜) 

BOOKS AND PRINTS(http://booksandprints.net/ )や書店等、店頭にて販売予定。〈若芽舎〉のミニ絵本シリーズの予約購入は、アマゾンや絵本ナビでも取り扱っております。