ハイデイ日高が1月末に埼玉・大宮に出店した新業態「とんかつ日高」(記者撮影)

中華料理と「とんかつ」という異色の組み合わせは、消費者に受け入れられるか――。

「熱烈中華食堂 日高屋」(以下、日高屋)を展開するハイデイ日高は1月末、とんかつ業態の店舗、その名も「とんかつ日高」を埼玉県・大宮に出店した。価格はロースかつ定食が780円(税込み)。全般的にとんかつチェーン「松乃家」より高く、「和幸」より安い設定になっている。「冷凍肉よりも美味しい」と言われるチルド肉を使用していることが特徴だ。

日高屋よりも女性客が目立つ

中華料理チェーンが和食店舗を運営するのは異例のように見えるが、実はハイデイ日高がとんかつ業態を始めるのは今回で2回目。同社はかつて、本社のおひざ元である大宮で「かつ元」との店名でとんかつ屋を出店していた。しかし、2年前に近隣店舗の火災の影響を受け閉店。その後はとんかつ業態を手がけていなかった。

だが、「とんかつ屋を復活しないのか」との顧客からの要望があり、今年1月に知名度の高い「日高」の名前をつけて再出店した(「かつ元」とは別の場所で開店)。


とんかつ日高で提供されるロースカツ(写真:ハイデイ日高)

とんかつ日高の隣には日高屋の店舗があるが、客層は大きく異なる。2月中旬、平日のランチタイムにとんかつ日高に足を運んでみると、ビジネススーツや工事現場の作業服を着た男性客ばかりでなく、女性グループや高齢の夫婦など幅広い層の顧客でにぎわっていた。見渡したところ、3割程度が女性客だった。一方の日高屋には女性が見当たらず、ビジネススーツの男性がほとんどだった。

同社はこれまで、大黒柱の日高屋を軸に成長してきた。2004年2月期より連続増収増益を続け、2018年2月期には売上高406億円、営業利益46.8億円を計上。営業利益率は10%を超えている。

業績拡大を後押ししたのが、「ちょい飲み需要」だ。396店を展開する日高屋を中心に、関東で425店を出店している(2019年1月末時点)。駅前の出店にこだわっており、安価な中華料理だけでなく、気軽にアルコール類が飲めることを訴求することで、ビジネスパーソンなどの需要を開拓してきた。アルコール類は利益率が高いため、営業利益の底上げにつながった。


ハイデイ日高が展開する立ち飲み業態の「立ち飲み日高」(記者撮影)

好調を維持してきたハイデイ日高だが、足元では新たな課題が突きつけられている。同社の島需一取締役は「働き方改革の影響を受け、ここ半年くらいは夜間の客数が落ちている」と語る。また、人手不足を背景とする人件費の上昇も業績を圧迫する。ハイデイ日高は2018年4月に値上げを実施したものの追いつかず、今2019年2月期第3四半期(2018年3月〜11月期)は売上高が前年同期比3.8%増の一方、営業利益が2.1%減と下向いた。

すでに焼き鳥業態を28店展開

今後の経営にも、同社は危機感を募らせる。「柱が日高屋の一本だけは不安だ。さまざまな業態を手がけておきたい」(島取締役)。このような考えから、同社はすでに焼き鳥業態を28店舗展開しており、焼き鳥業態の中にはカレーライスや天丼を提供する店舗もある。

とんかつ日高もこの業態拡張の一環で、ランチ需要の深耕を狙う。日高屋はちょい飲み需要、つまり夜の時間帯の稼ぎで成長してきたが、とんかつ日高は日高屋ほどのアルコール需要を見込めないため、アルコール販売が少なくても十分な利益を確保できるか試されている。

省人化運営に対応するために、店舗の効率的な運用も求められる。「あ、これで買うんだ!」。とんかつ日高の入り口近辺で、3人組の中年女性が声を上げた。同店では、タッチパネルを使った券売機が導入された。

日高屋ではこれまで、券売機を設置してこなかった。2杯目、3杯目のアルコールをわざわざ券売機に買いに行く顧客は少なく、販売量が落ちてしまう懸念があったためだ。その日高屋でも、現在は実験的に4店舗で券売機を設置し、動向を見極めている。

ハイデイ日高はさまざまな課題を乗り越えて、一段成長を描くことができるか。そういった意味で、とんかつ日高が軌道に乗り、多店舗できるかどうかは、今後のカギを握ることになるかもしれない。