2100年前にエジプトで作られた「鷹(タカ)のミイラ」とされていたミイラが、実は無脳症で死産してしまった胎児のミイラだったことが超高解像度のCTスキャンを使った調査から明らかになりました。

Micro-CT scans show 2,100-year-old ‘hawk’ mummy a stillborn baby - Media Relations

http://mediarelations.uwo.ca/2018/05/31/micro-ct-scans-show-2100-year-old-hawk-mummy-stillborn-baby/

This 'Hawk Mummy' Was Actually Human

https://www.livescience.com/62705-hawk-mummy-was-human.html

「この胎児の頭部の上部は完全に形成されるに至りませんでした」と語るのは、調査を実施した生物考古学者でウェスタンオンタリオ大学の人類学教授であるアンドリュー・ネルソン氏。胎児は成長の過程で作られるはずの脊椎の一部「椎弓」が形成されておらず、耳たぶが後頭部に位置する状態で、妊娠23週から28週の段階で死産してしまったと見られています。



ネルソン氏は実際のCTスキャンデータなどとともに以下のムービーでミイラの状況を語っています。

'Bird mummy' mystery - solved - YouTube

「タカのミイラ」は、1925年に地元の医師がイギリスのメードストン博物館に寄贈したもの。容器にはタカのように見える模様が描かれていたことから、神への供物として「タカのミイラ」が収められていると考えられてきました



ネルソン氏の研究チームは当初、施設が持つCTスキャンを使ってこのミイラの内部調査を試みました。



しかし使っていた装置の解像度が低く、満足のいく結果が得られなかったため、ネルソン氏らはNikon UKの協力のもと、非常に解像度の高いCTスキャン装置でミイラの3Dスキャンを実施することにしました。



スキャンの結果、容器に収められていたのはタカのミイラではなく、妊娠中期に死産した胎児のミイラだったことが判明しました。



別のCT画像からは、骨格ができあがってきていた胎児だったことがわかります。



ただし、この胎児は頭蓋骨が十分に発達せず、脳が欠損する無脳症だったことがCT画像から判明しています。



胎児は死産後、丁寧な処理が施されてミイラ化されたものと考えられているとのこと。ネルソン氏は「正常ではない状態で死産を迎えてしまった家族にとっては悲劇的な出来事だったことでしょう。そのため、このミイラは非常に特別なものだったはずです」と語っています。





ミイラの棺の上には、エジプト神話における死者の世界の神「オシリス」が横たわっていて、イシスとニフィスの女神がその上に立っている状態。さらに、「名前」「肉体」「影」「カー(精霊)」とともに人間を構成する要素の一つと考えられていた「バー(魂)」を表す、人間の頭を持つ鳥の姿がオシリスの上を飛ぶ様子と、その上にホルスの目と呼ばれる、古代エジプトのシンボルともいわれる目の模様が描かれているとのこと。大切な赤ん坊を失ってしまった家族が、丁寧に遺体を扱った様子がうかがえます。