テニス界の重鎮ビリー ジーン・キングが差別的な発言をするマーガレット・コートを批判、アリーナの名称変更を求める

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オーストラリア・メルボルンを訪れているビリー ジーン・キング(アメリカ)は12日に記者会見をした際、「全豪オープン」のメインコートのひとつ、マーガレット・コート・アリーナの名称変更を希望すると発言し、各メディアで大きく報じられた。

その発端は、マーガレット・コート(オーストラリア)がかねてから発言している「レズビアン、ゲイ、バイセクシャルならびにトランスジェンダーの人々に関する異議」について言及したもので、「最近、彼女が私たちのコミュニティを、私は同性愛者ですから、つまり、LGBTIQコミュニティを傷つけるようなことをあれほど口にするまでは、何も問題ありませんでした」という。

テニス界における平等と多様性を追求した第一人者であるキングは、グランドスラムのシングルスを24回制したコートのテニス界への貢献を称えて、マーガレット・コート・アリーナの命名について当時は支持していたのだという。しかし、「彼女の発言は本当に私の心に深く入り込んだもの。個人的にはこれ以上、彼女の名前がスタジアムにあるべきとは思いません」と語った。さらに、もし自分が今も現役だとしても、マーガレット・コート・アリーナではプレーをすることはないだろうと、痛烈に批判している。

キングは「全豪オープン」の制覇から50周年を祝して、今年の大会に出席するために訪れている。主催者側は、アメリカのテニス界の重鎮であるキングを「全豪オープン」のウーマン・オブ・ザ・イヤーと捉えており、キングの来訪に合わせて、平等、多様性及び包括を推進することを目的とした「オープン・フォー・オール (Open4All)」運動を開始している。

女子テニス界の設立時からプロ選手の1人として活躍したキングは、オープン化以降にメジャー大会でシングルスのタイトルを12回獲得した。コートとは「共に闘い、共に成長した」といい、2人は引退した後も数年間は定期的に会っていたのだという。

アマチュア時代とオープン化以降を通してグランドスラムのシングルスタイトルの記録保持者である現在75歳のコートは、オーストラリア・パースでキリスト教の牧師として活動している。

2017年にオーストラリアで同性婚の合法化が可決される前にコートが発言した反対意見に対して、マルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)がその発言を非難する公開状を送付し、メルボルン・パークの同アリーナの名称の変更を運営側に迫るなど、厳しい批判を受けたこともある。

15日から開幕する今年の「全豪オープン」にはコートは参加しない予定だ。

トーナメント・ディレクターのクレイグ・ティエリー氏は、コートにはシーズン開幕後、最初のメジャー大会をいつでも訪れることができる招待状を送り、以前と同じようにこれからの大会でも彼女を歓迎すると語った。また、この問題に関してメルボルン・パークの関係者との間で「対話」はもたれたが、スタジアムの名称を変更する所定の手続はなく、この会場の借り受け先のテニス・オーストラリアがこの問題への対応の主導的立場にあると明言を避けた。

名称変更の発言はあくまで個人的な意見だとするキングは、「このスタジアムの使用のボイコットを推進するつもりはないが、選手には決断をする前に "自分自信の心に聞いてみる"ように訴えかけたい」と話す。「コートがメルボルンに姿を現し、会話が継続できれば」と期待をキングは口にした。

「この問題について議論することはできます。マーガレットを大いに歓迎します」と74歳のキングは述べ、「何かに自分の名を冠するのであれば、包括と思いやりの心をもって、来てくれるすべての人を、両手を広げて迎えることが本当に重要です。これは公共の施設なのです」。


(C)AP(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」制覇から50周年を迎えメルボルンを訪れたキング
(AP Photo/Mark Baker)