鮮烈FKを決めたチョン・ウヨンは、「中国戦や北朝鮮戦よりも良い戦いができるとは思っていた」という。(C)SOCCER DIGEST

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 E-1選手権の最終戦で韓国と対戦し、1-4で大敗した日本。38年ぶりに韓国に4失点を喫した試合結果への批判は絶えないが、実際に対戦した韓国代表の選手たちは、ハリルジャパンの実力をどう感じたのか。
 
 日韓戦後、ミックスゾーンで韓国の主力5選手に直接、話を聞いた。
 
「日本は、技術的な部分では飛び抜けていました」
 
 そう切り出したのは、この試合2得点を挙げ、大会得点王にも輝いたキム・シンウクだ。日韓戦でも高さを生かしたプレーが目立っていた197センチの巨漢FWは、日本選手の技術を認めながら、こう続けた。
 
「でも、シン・テヨン監督の戦術は、そういった日本の良さを封じましたし、逆に僕たちは長所を存分に発揮できました。だから日本に勝利できたんだと思います」
 
 日本が持ち味を出せていなかったという意見には、68分に途中出場し、左足で直接FKを決めたヨム・ギフンも同意する。
 
「前半にピッチの外から見ていても、韓国の選手たちのほうが自信を持ってプレーしていると感じましたし、実際に僕たちのほうが上手くボールをつないでいたと思います。これまでの日本の試合を見ると、相手ディフェンスの間にパスを入れた時に、そこからもうひとつ通すパスが鋭い印象がありましたが、今日は少なかった。ボールは中に入ってくるのですが、結局また後ろに戻す場面が多かった。僕たちが組織的に上手く守備をできていたということでしょう」(ヨム・ギフン)
 
 もっとも、こうした展開を試合前から予想していた選手もいた。23分に逆転ゴールを挙げたMFチョン・ウヨンである。
 
「韓日戦という特殊性を差し置いて言えば、正直、中国戦や北朝鮮戦よりも良い戦いができるとは思っていました。中国や北朝鮮は引いて守るチームなので、ブロックを作られると戦いづらい。その点、日本は自分たちのスタイルがあるので、僕たちが攻め入るスペースも増えてパスも回せるだろうと考えていました。実際、その通りになりました」
 
 一方でチョン・ウヨンは、日本代表に印象的な選手もいたという。
 
「昌子はフィジカルも強いし、プレッシングも上手いと思いました。サイドバックの植田は、僕たちの高さを封じようとしていたようですが、結果的にはキム・シンウクを抑えられなかった。僕たちのほうがしっかり準備できていたということでしょう」
同じようなことを言っていた元Jリーガーがいる。キム・ミヌだ。昨年までサガン鳥栖で主将を務めた左サイドの要は言った。
 
「これまで日本はショートパスをつなぎながらスピード感のある攻撃を仕掛けていた印象がありましたが、今日はそういった部分が出ていなかった。日本は一人ひとりの能力は高いけれど、組織力などはまだまだ足りないように思えます。それでも印象に残ったのは、小林ですね。日本の選手はほとんどみんなJリーグで見てきた選手たちですし、それぞれの長所も短所も知っていますが、小林はJリーグでも得点王とMVPになっただけに、この大会でも良いパフォーマンスを見せていたと思います」
 
 大勝の喜びを抑えつつ、日本の良さを認めるところに、確かな自信をのぞかせた韓国代表。その数々のコメントの中で何よりも印象的だったのは、今大会MVPに輝いたイ・ジェソンの言葉だった。韓国記者たちの質問を遮って「日本の印象は?」と直接問うと、こんな返事が返ってきた。
 
「日本は、これまでよりもフィジカルが強くなったと感じましたね。最後まで諦めない姿勢には敬意を表したいです。ただ、今日の結果は準備の成果だと思います。日本の中国戦と北朝鮮戦を見て、ショートパスや3人目の動き、サイドからの攻撃が日本の強みだと感じたので、今日はそういったプレーを出させないように努力しました。日本戦だけは何としても勝ちたいと全員が強く思ったからこそ、良い結果が生まれてよかったです」
 
 物静かな口調で淡々と語ったイ・ジェソンだが、それだけ韓国が入念な対策を練って日本戦に挑んでいたことがうかがえる言葉だ。
 
 ここに今回の試合にかけた日本と韓国の熱量の差があったとも言えなくもない。韓国に歴史的大敗を喫したハリルジャパン。いまはただ、この現実をしっかりと受け止めるしかないだろう。
 
取材・文●李仁守(ピッチコミュニケーションズ)