子どもの脱毛は保護者立ち合いのもとで

写真拡大

脱毛は若い女性が身だしなみを整えたり、手入れの手間を軽減したりするためのもの――というのは、もう古いイメージかもしれない。

2017年7月29日〜30日に大阪で開催された第35回日本美容皮膚科学会総会・学術大会で行われたシンポジウム「脱毛のupdateと陰部のanti-aging」では、医療脱毛の現場に立つ医師たちから興味深い現代の脱毛事情が紹介された。

介護のためにVIOラインを脱毛?

「VIO脱毛」とも呼ばれる陰部脱毛の現状を取り上げたのは、つかはらクリニック院長の塚原孝浩医師だ。

そもそもVIO脱毛とは、Vライン、Iライン、Oラインの3か所の脱毛を意味する。Vラインはいわゆるビキニゾーンなどと言われる部分で、医学的に統一された基準はない。塚原医師によると医師が悩む部位のひとつで、患者と相談をして脱毛範囲を決めるという。Iラインは女性の陰部両側、Oラインは肛門周辺を指す。

VIO脱毛は、毛の処理の手間を軽減する目的か、デザイン性を重視したファッション目的で施術を受ける患者が多かった。しかし、その後VIO脱毛が普及すると、清潔感を保つことができるメリットが知られるようになり、衛生面での理由からの施術も増加。さらに、将来的な介護の際に介護者の手間を軽減するためにVIO脱毛を行うという例も出てきているという。

実際につかはらクリニックでVIO脱毛を受けた女性患者を対象に、脱毛を受けた理由や受けたことによるメリットを調査したアンケートでも、興味深い結果が出ている。

例えば回答者は20〜30代の女性が多いものの、40代以上も半数以上いた。年齢別で見ると20〜40代まではVラインの施術が最もいが、50代になるとIライン、Oラインの施術が多くなる。組み合わせ別でも20〜40代はVIOだが、50代以上になるとIOの組み合わせが多いようだ。

脱毛を受けた理由については、20〜40代では見た目のためが最も多く、次いで衛生上の理由となっている。50代以上になると見た目よりも衛生上の理由、看護介護のためというきっかけが多くなる。年齢ごとに動機が異なるのは当然だが、塚原医師は30代からでも将来的な看護介護を目的に施術を受けている人も注目すべき点だと指摘していた。

メリットは全年代で外見や手間の軽減、衛生的になったとするものが多く、介護看護の不安が減ったという回答は少なかった。これはメリットがなかったということではなく、まだ介護や看護を実感する年齢に達していないのではないかと推測される。

子どもには保護者の付き添いを

続いて千春皮フ科クリニックの渡邊千春医師が紹介したのは、VIO脱毛とは真逆ともいえる「子どもの脱毛」についてだ。

渡邊医師は子どもの脱毛へのニーズは年々高まっているとし、その理由として「多毛によるいじめ」「保護者の子どもの外見に対する関心の高まり」「子ども自身の自分の外見への関心の高まり」という3点を挙げる。

渡邊医師のクリニックの医療用レーザー脱毛施術患者数(月平均)150人のうち子どもは27人ほどで、「ソプラノICE」と呼ばれる、従来のレーザー脱毛に比べ低いエネルギーを来る返し照射する「蓄熱式脱毛機」による脱毛を受けているという。

蓄熱脱毛はエネルギーが低いため痛みが少なく、脱毛に不安を感じている子どもの抵抗感を軽減することができる。また、産毛や細い毛にも効果が期待でき、肌質を選ばないといったメリットもある。

では、子どもの脱毛を行う上で渡邊医師はどのような点に注意しているのか。まず、子どもは大人に比べて痛みに弱く不安感が強いので、初めての施術時は保護者にも立ち会ってもらうようにしているという。

「保護者にもレーザーを当て、それほど熱さや痛みを感じないことを体験してもらい、保護者が子どものサポーターのように励ましてもらうという方法を取っています」(渡邊医師)

インフォームドコンセントも重要だ。脱毛には複数回施術を受ける必要があることや、第二次成長が始まるとまた毛が生えてくる可能性があることなど、保護者はもちろん子ども本人にも理解してもらえるように説明しなければいけない。

「メンタルによっても痛みを感じやすいので、話をしながら楽しい雰囲気にしたり、目隠しをしない、残り時間を頻繁に伝えるといった気配りも欠かせません。今後の施術にモチベーションを保ってもらえるよう、肌がきれいになっているなど具体的に効果も伝えています」(渡邊医師)

大人の脱毛ではあまり考えられない工夫が必要になる子どもの脱毛だが、渡邊医師は未成熟な子どもこそ、規制がないエステ脱毛ではなく、医療脱毛が安全な施術を保証し提供しなければならないと話す。実際に国民生活センターの報告でも未成年が脱毛でエステを利用して火傷した事例などが確認されている。

医師・専門家が監修「Aging Style」