日大藤沢・菊地大智【写真:編集部】

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途中出場MF菊地がロスタイム弾&PK戦も成功…王者撃破「夜なかなか寝られなくて…」

 全国高校総体(インターハイ)は3日、男子サッカー準決勝で日大藤沢(神奈川)が市立船橋(千葉)と対戦。後半ロスタイムのラストプレーから同点に追いつき、PK戦で前回覇者を下す“奇跡の金星”を挙げ、初の決勝進出を決めた。途中出場で殊勲の同点弾を決めたMF菊地大智(3年)は試合前のロッカールームで驚きの行動を取っていたという。

 もう眠気なんて、どこかに飛んで行っていた。決めれば勝利が決まるPK戦の5人目。最も重圧がかかる大役を託された菊地は、冷静に左隅に蹴ってゴールネットを揺らし、ファイナル切符をたぐり寄せた。勝利の瞬間、声にならない声を上げ、仲間のもとへ駆け出した。感情を爆発させ、歓喜を分かち立った。

 奇跡を呼んだのも、この男だった。0-1の後半24分から途中出場し、迎えた後半ロスタイム。センターサークル手前のFKでGKがロングキックを送ると、もつれたボールに反応したのが背番号14だ。ペナルティエリア外の正面から浮いたボールに右足を一閃。スーパーボレーを突き刺した。

「自分にチャンスが回ってくれば、決める自信はあった」と菊地。このまま試合は終了。まさにラストワンプレーから、逆転への道が開けたのだから、あまりに価値の大きい同点弾となった。

 起用した佐藤輝勝監督は試合後、驚きの理由を明かした。

試合前のロッカールームで見た姿…指揮官「これは度胸あるな。一発勝負しようと」

「試合前にロッカールームに入った時、みんな緊張しているのに(菊地は)寝ていたんです」

 なんと、チームメートがガチガチになる中、菊地は緊張するどころか、夢の中にいたという。「これは度胸あるなと。一発勝負しようと。菊地を最後に使いたい。それでいいタイミングで使えた」と指揮官。まさに心臓に毛が生えたような背番号14は期待に応え、大仕事を果たしてのけた。

 佐藤監督にとって、度胸にかけたい苦い記憶があった。15年の高校選手権。準決勝に進出した時のこと。「星陵さんと試合をする時、選手が緊張で足が動かなかった」。試合は0-3で完敗した。「それがいい財産になっているし、自分にもチームにも生きている」。だからこそ、試合前に寝ていた菊地に心を動かされたのだろう。

 しかし、当の本人は困り顔だ。「夜、なかなか寝られなくて……」と前夜の寝つきが悪かったことを告白したが、チームを救ったことに変わりはない。「決勝の流経さんには勝ったことがないので、リベンジがしたい」と決勝に向け、意気込んだ。

 指揮官は「今までやってきたことの中でしっかりと準備して、リスペクトしすぎず、自分たちのサッカーをやれればいい」とプランを描いた。強敵相手でも、この男なら再び何かをしでかしてくれるかもしれない。