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■どんなクルマ?

ミニのPHEV、クロスオーバーが初

このクルマ、車名のなかの「E」が示すとおり、ミニ・クロスオーバーのプラグインハイブリッドモデルであると同時に、ミニシリーズで初のプラグインハイブリッドでもある。

ただし、ミニ初のプラグインハイブリッドが何故クロスオーバーに搭載されたのかについては、明確に説明されてはいない。

それに関しては、ボディが大きいことによって、ハイブリッドのパワーユニットを搭載しやすいという、機構上の理由が想像できる。

それに加えて、SUVスタイルのクロスオーバーがハイテク万能車というイメージにふさわしい、という意味合いもあるのかもしれない。

それは、フロントに1.5ℓ3気筒ツインパワーターボエンジンと6段ATを搭載して前輪を駆動、リアにリチウムイオンバッテリーと電気モーターを積んで後輪を駆動する4WDで、前後の駆動力配分をハイブリッドユニットが自動的にコントロールする。

小さくないミニもあり?

パワートレインの出力は、エンジンが136psと22.4kg-m、モーターが88psで、システムトータルで224psと39.3kg-mという数字になる。

ただし、対する車重もかなりのもので、なんと1770kgに達する。燃費はJC08モードで17.3km/ℓという。

クロスオーバーのボディはミニシリーズのなかで過去最大で、全長4315×全幅1820×全高1595mm、ホイールベースは2670mmある。

「もはやミニとは呼べない!」という叫びが聞こえてきそうだが、僕はそれを声高に叫ぶのを止めた。

今から2年前、スウェーデンで開かれた新型クラブマンの国際試乗会に参加した際のプレゼンテーションで、「大きいミニが欲しい、という顧客の声があって、それに応えたのが新型クラブマンです」という発言が、開発担当者からあったからだ。

僕は個人的には、ミニはやっぱりコンパクトであるべきだと思っているが、世の中には「大きいミニが欲しい」と願うひとたちがいて、メーカーがそれに沿って「小さくないミニ」を生み出しているのなら、それはそれで認めざるを得ないだろう、と思ったからだ。

■どんな感じ?

ディーゼルより4万円やすい

試乗に移るべく、他のミニより明らかに着座位置の高いクーパーS E クロスオーバーALL4のキャビンに乗り込む。

ちなみにこのクルマ、車両本体価格は479万円で、意外にも同じクロスオーバーのディーゼルモデル、クーパーS D ALL4より4万円ほど安い。

上記のプライスに加えて、38.8万円のレザースポーツシートを備えるなどしたインテリアにチープな感触は皆無だが、全体にオーバーデザインな印象をうける。

個人的な好みをいえばBMWミニのインテリア、自分が乗っている第2世代の方が簡潔で、落ち着く。

走行モードは、「オートeドライブ」、「マックスeドライブ」、「セーブバッテリー」の3つがある。

「オートe」はスピードや走行状態に応じてモーターとエンジンを使い分け、「マックスe」はバッテリー残量が充分なら120km/hまで電気モーターで走行、「セーブ」はその名のとおりバッテリー充電のためにエンジンで走るモードだ。

バッテリーが残っている限り、「オートeドライブ」も「マックスeドライブ」も軽くアクセルを踏むと電気モーターでスタート、特に深く踏み込まなければ、街中を流す程度のペースでは基本的にモーターによる後輪駆動がキープされる。

ディーゼルよりハンドリングが良好

このモーター駆動状態では、エンジン音がしないので静かである他、電気モーター独特のトルク特性によって、意外と力強くレスポンスのいい発進加速が得られるのも気持ちいい。

ちなみに「マックスeドライブ」モードにおけるEV最大走行距離は、42.4kmだという。

一方、モーターとエンジンを選択もしくは併用する「オートeドライブ」では、踏み込めば1.8トン近い車重を望むペースで加速させる。総じて、「セーブバッテリー」モード以外では動力性能は充分で、むしろ爽快な加速を味わわせてくれるといっていいだろう。

しかし、それにも増して僕が感じたハイブリッドの美点は、2ヶ月ほど前に箱根で試乗した4気筒ディーゼルターボのクロスオーバーS Dに比べて、ハンドリングが明らかに好ましく思えたことだった。

S Dはコーナーで重心の高さを意識させえるのに対して、S Eはより腰の低い感覚でコーナリングしていく。

フロントに重い4気筒ディーゼルターボを積んだS Dに対して、S Eはフロントに軽い3気筒ガソリンターボ、しかもリアの低い位置にバッテリーとモーターを収めているので、前後重量配分、重心位置ともに、S Eの方がずっと好ましい値になっているはずだ。

■「買い」か?

誰にとっても「買い」なクルマなど存在しない。だから、あるクルマについて考察する場合、どんなひとにとって「買い」なのかが問題になる。

それでいうとこのミニ・クーパーS E、大きいミニが嫌いではないか、あるいはむしろ好きで、フラグインハイブリッドのような最新メカニズムに興味津々、しかもコーナリングにも切れのよさを求めるといった人物には、まさに「買い」のクルマだと思う。

その一方、バッテリーに充電するといった作業を好まず、ひとたび燃料を入れたらそのまま長距離を走りたいという志向が強く、しかもコーナリングは普通の切れ味なら満足、という人物だったら、同じクロスオーバーでも、クーパーDもしくはクーパーS Dの方が「買い」ではないか。



ミニに500万円、明確な「買い」の理由が欲しいところだが、もしもそれが自分の志向にぴったりハマったとしたら、そのひとにとって500万円の価値のあるクルマ、ということになるはずだ。

ミニ・クーパーS E クロスオーバーALL4

■価格 4,790,000円 
■全長×全幅×全高 4315×1820×1595mm 
■ホイールベース 2670mm 
■乾燥重量 1770kg 
■エンジン 直列3気筒1498ccターボ+モーター 
■合計出力 224ps 
■合計トルク 39.3kg-m 
■ギアボックス 6速オートマティック