優勝争いのキーマンは糸井嘉男だ

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 やはり不安が的中した!

 広島との開幕3連戦で阪神は24失点、8失策。開幕前から不安視されていた守備の弱さを露呈してしまった。

 ここまで失点しても、1勝2敗と何とか3タテを食い止められたのは、1戦目の9回表に飛び出した福留孝介の2ランホームランがあってこそ。もし、あのホームランがなかったら……。

 スタンドが真っ赤に染まった完全アウェー状態で、6回以降の試合の流れからするとひっくり返されてもおかしくない展開だった。

 ただ、この3連戦では1戦目に10得点、2戦目に8得点しているところを見ると、昨季のような貧打は払拭しているように思える。

 昨季は「超変革」のスローガンの下、Bクラスに甘んじたものの、若手の台頭が目覚ましい1年だった。

 そして迎えた2017年シーズン。優勝争いするためのキーマンは誰か? また、勝つために必要なことは何だろうか?

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■開幕からチームを引っ張るベテラントリオ

 先述した通り、守りの不安とは裏腹に打撃陣は開幕から好調だ。1番、2番が出塁し、クリーンアップが還す。まさに理想的な形を作れている。

 特に新加入の糸井嘉男、開幕から4番を張る福留孝介、今年完全復活を図る鳥谷敬が絶好調。オープン戦では快音が聞かれなかったが、さすがベテラントリオ。しっかり開幕に照準を合わせてきた。

 チームコンディション的には、若手が好調で突っ走るのもいいが、やはりベテラン選手が安定して打ってくれる方がいい。若手は壁にぶつかり急降下する可能性があるが、好調なベテラン選手は1年を通して結果を残すことが多いからだ。

 好調なベテラン陣に加えて、昨季の高山俊、北條史也、原口文仁に続く若手が頭角を現してくるとチーム力は一気に上がる。

 もちろん、高山、北條、原口は「2年目のジンクス」を跳ね除け、昨季以上の成績を残してくれれば言うことはない。

■「絶対勝つ!」ために打席に立つ糸井

 今季の阪神の不安要素の1つでもあるのが、復活を期待される藤浪晋太郎だ。

 4月4日の京セラドームでのヤクルト戦では制球が安定せず、5回で8四球と大乱調。5回表には畠山和洋(ヤクルト)に乱闘を誘発する死球まで与え、不安な状態を残したまま降板した。安定感を欠く要因としては技術的なことより、気持ちの部分が大きいのかもしれない。

 ただ、ケガの巧妙ということもある。

 藤浪の死球で巻き起こった乱闘騒ぎでは、バレンティン(ヤクルト)に応戦した矢野燿大バッテリーコーチが退場となったが、矢野コーチ、高代延博ヘッドコーチをはじめ体を張って参戦した首脳陣の姿にナインが発奮。

 続く、6回、7回を松田遼馬、8回を藤川球児が熱投。気持ちのこもった投球を見せれば、6回裏には糸井が「絶対勝つ!」と気合のこもった打席で、ライトスタンドに叩き込んだ。

 この試合には敗れはしたものの、翌5日のヤクルト戦では、糸井が前日の鬱憤を晴らすかのように、ルーキ(ヤクルト)の150キロストレートを完璧にとらえ、打球は弾丸ライナーでライトスタンドに突き刺さった。

■「死ぬ気でやる!」気持ちを若手が持ち続けられるか

 守備の弱点はシーズンを通して克服しなければならない課題だ。しかし、守備は一朝一夕でうまくなるものではなく、現メンバーで戦う以上、ある程度の失策は仕方ない。そんな覚悟が必要だ。

 そして、打撃陣は現段階では調子がいいとはいえ「打撃は水物」。打てるときと打てないときがある。

 となると、最も阪神に欠けていて、必要とされるのは「気迫」の部分だろう。藤浪だけでなく、若手を中心に阪神の選手は総じておとなしい印象がある。

 開幕4戦目、5戦目に見せた糸井のホームランは、気迫で打ったようなものだ。糸井は開幕前にこう言っていた。

「死ぬ気でやる!」

 この気持ちを若手が持ち続けてこそ、今季の阪神は面白い存在になる。

まろ麻呂企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。【関連記事】