フジテレビ『嘘の戦争』公式ホームページより

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 草なぎ剛(42)が主演を務める「嘘の戦争」第8話が2月28日に放送され、平均視聴率は前回より0.6ポイント上昇して11.5%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)となりました。

 前回のラスト近くで一ノ瀬浩一(草なぎ剛)の企みが二科家にバレてしまったこともあり、第8話はジェットコースター的な息をも付かせぬ展開に。二科隆(藤木直人)は浩一に、望みの金と引き換えに証拠のテープを渡して二科家から手を引いて欲しいと交渉するも、浩一はこれを拒否。2人の会話を扉の外で立ち聞きしていた晃(安田顕)と楓(山本美月)に真実を突き付けました。

 結婚の約束までしていた楓に「全部嘘だ」と冷たく言い放ち、さらには「会長の言う通り、お嬢さんはだましやすくて楽だったよ」とあざける浩一。そのほほに楓のビンタが飛びます。

 人を疑わないまっすぐな心の持ち主だけに、だまされていたことが許せないのでしょう。ただ、浩一はここであえて非道に振る舞うことで、彼女の自分への思いを断ち切り、必要以上に傷付けないように配慮したように思えます。復讐のためとはいえ、一切落ち度のない彼女の気持ちをもてあそんだのは事実。やはり、少しは罪の意識があるのでしょうか。

 ここで、「妹を巻き込んだのは許せない」と浩一に食って掛かったのが長男の晃。やはり、家族思いのいいお兄ちゃんです。と同時に、視聴者を代弁する台詞とも言えます。ドラマをここまで観てきた視聴者なら、「正直、楓は関係ないのにだまされてかわいそうだよね」との思いを少なからず抱くはずだからです。これに対する浩一の答えは「弟は何も知らないのに殺された」。

 これ、そう言われると何も言い返せない、かなりずるい一言です。その論理に立てば、復讐のためには関係ない人を傷付けたり巻き込んだりしてもすべて正当化されることになります。弟が殺されたという設定は、浩一にこれを言わせるためだったんですね……。「金で済むような問題ではない」との浩一の言葉も、観ているほうがつらくなります。お金では解決できない精神的苦痛を、あえてお金に換算して解決するのが民事の考え方。「金では解決できない」と言い続けたからといって、その人の心が癒されたり満たされたりするわけではありません。地獄に進んでいるのは、果たして二科興三(市村正親)なのか一ノ瀬浩一なのか。

 第8話では、何か因縁があると思われてきた園長・三瓶(大杉漣)の過去が六車(神保悟志)の口を通しても明らかに。園長は、自分が死んだら代わりに警察に届けるようにと浩一の父に頼まれていたのに、実際には二科家を恐れて30年間口を閉ざしていたのでした。

 両親を亡くした自分を育ててくれた恩人で、唯一心の許せる味方だと信じていただけに、「だまされた」との思いがぬぐえない浩一。園長が証言してくれれば、「犯人はお父さん」という悲しい嘘をつくこともなかった。怒りと悲しみで感情がぐちゃぐちゃになりながら詰め寄る浩一に、娘が同じ目に遭うと思ったら怖くて真実を話せなかったと打ち明け、涙ながらに謝る園長。一瞬激高しそうになるも、「そうですね。相手が悪すぎました」とあっさり許す浩一。でも、園長に背を向けて立ち去るその顔は悲痛な表情に覆われていたのでした。

 さすがに恩人のことは許すよね、と思っていた我々視聴者の思いは、次の瞬間に裏切られました。園の外で待っていたハルカ(水原希子)に向かい、開口一番「あいつにも復讐を」とつぶやく浩一。「恩人だよ」と必死に止めるハルカの言葉もまったく耳に入らず、「簡単だよ。あいつを地獄に落とすのは」となおもつぶやき続けます。

 衝撃の展開に、Twitterには「大杉漣さんが騙されるのはつらい。きつい」「三瓶さんは復讐の的にしないで欲しい」「一ノ瀬さん、行くところまで行って自滅しそうな気がする……」などの声があふれました。序盤は痛快な復讐劇でしたが、中盤からは少々やりすぎな傾向が見られ、終盤では復讐に執着するあまりに当初の目的と自分自身を完全に見失っている様子が描かれているこのドラマ。こうなってくると、「復讐を完了しました。めでたしめでたし」と最終回を迎える線はかなり薄くなってきます。今から、悲しいラストを迎える覚悟をしておかなければならないかも。あるいは、ギリギリのところで浩一は救われるのでしょうか。

文・中島千代