TBS「A LIFE〜愛しき人〜」公式サイトより

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 木村拓哉(44)主演のドラマ「A LIFE〜愛しき人〜」(TBS系)第7話が26日に放送され、平均視聴率は前回から0.8ポイントダウンの14.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となりました。どうやらこのままの水準をキープして完走しそうな勢いです。

 第7話はストーリーが大きく動いた回となりました。何と言っても筆頭に挙がるのは、今まで悩みに悩んだ沖田(木村拓哉)が、ついに深冬(竹内結子)の脳腫瘍の手術法を発見したシーン。以前勤めていたシアトルの病院から「効果的な治療法はない」との絶望的なメールが届くも、あきらめるものかと来る日も来る日も手術の方法を考案し続けた沖田。

 シアトルから再び届いたメールには、「初心に帰れ」の一言が。ふと机の上の心臓模型に目をやると、そこに一瞬脳のイメージが重なります。目を見開いてそれを見つめる沖田。その両目には、見る見るうちにあふれんばかりの涙が。そして、ほっとしたような笑顔を浮かべながら「(可能性は)ゼロじゃなかった……」と一言。この希望あふれるシーンに、Twiiterには「キムタク本当にいい表情するなぁ」「このシーンをアングルと目の表情の変化のみ、BGMなしのほぼ無音にしたの凄く良かった」「目の動きで溢れ出る感情をあそこまで表現できるなんて....」「間違いなく心に残る名シーンになった」など、木村拓哉の演技と演出を絶賛する声があふれました。

「心臓のバイパス出術を脳の出術にも応用する」という答えを沖田が導き出したのは、ドラマの流れとしてもベストな選択。さんざん「手術法が見つからない」と引っ張ってきた挙句、最終的に小難しい用語を並べて「手術法が見つかった」となる演出だったら、視聴者も「ふーん」としか思わないはず。心臓専門の沖田だからこそ難しい脳手術の手術法を発見できたという展開で、見事に人物設定の伏線を活かすことができました。

 もうひとつの見どころと言えばやはり、菜々緒が演じる弁護士・榊原実梨の裏切り。先回で壮大(浅野忠信)に別れを告げられ、すっかりドラマの中での役目を終えたかと思いきや、何事もなかったかのように顧問弁護士に復帰。どうやら、深冬と沖田のハグを目撃してしまった壮大が心の逃げ道として呼び戻した模様。

 もう前回できれいに退場したんだから、これ以上登場させても蛇足になるのでは……と思いつつちょっと冷たい目で見ていたら、最後の最後に病院の全体ミーティングの席上で深冬の脳腫瘍を医師や看護師たちにバラすという暴挙に出ました。それはいかんでしょ、と思う間もなく、脳腫瘍を抱えていることを知っていながら手術を担当させていたのは副院長の責任問題だと告発。壮大、絶体絶命のピンチ。これでさらに「副院長は私と不倫してました」と暴露しちゃったりなんかしたら、どこから手を付けていいかわからない修羅場になりそうでおもしろそうですが、さすがにそれはないでしょうか。

 この前に、「深冬先生の気持ちが自分にないなら、いっそ死んでしまえばいい。そう思ってますよね」と壮大を問いただしていた実梨。でも、神経を傷付けずに深冬の手術ができると沖田から聞いた時の喜びようから言って、「壮大が深冬を殺そうとしている、または死んでもいいと思っている」というのは正しくない気がします。むしろ、「壮大が自分のものにならないのなら社会的に死んでしまえばいい」と思っていたのは実梨自身。顧問弁護士に復帰したのも、呼ばれてホイホイ来たというよりも壮大に痛い目を見せてやろうと思って帰ってきただけなのかもしれません。今まで、このドラマにおける実梨の必要性について結構疑問を持っていましたが、終盤にこんな役目があるとは思いませんでした。

 ドラマを構成するピースがピタリピタリとはまり始めた第7話。浅野忠信のキレ芸が一度も登場しなかったように、前回まで続いたネタドラマ路線は一気に影を潜めました。それはそれでちょっと寂しいですが、最終話に向かってきれいに収束する話を期待したいところです。

文・中島千代