「スイカに塩」「バニラアイスに醤油」など、塩や醤油という“しょっぱい”はずの調味料をあえて使用することで、食材の甘みをより引き立てる方法がある。とても不思議な効果だが、他にも調味料や食材の意外な組み合わせで、思わぬ味が楽しめる方法があるという。その方法を、料理研究家や管理栄養士に聞いてみた。

「味の対比効果」は食材でも起きる


甘みに、ごく少量の塩を加えると甘みが増すことを「味の対比効果」という。しかし、ある管理栄養士によれば、この味の対比効果は調味料だけでなく、次のように、食材同士を組み合わせることでも行われているという。

「味の対比効果は調味料だけでなく、甘いフルーツやクリーム、ジャムなどと、塩辛いチーズを組み合わる“デザートピザ”や、生ハムの塩辛さとフルーツの甘さを楽しむ“生ハムとメロン”など、料理で活用する場合がたくさんあります」(管理栄養士)

デザートピザに生ハムメロン…。「スイカに塩」とは次元の異なる、オシャレな料理である。一般人からしてみれば、「スイカに塩」だけで、いまだに「スゲー! 塩かけたはずなのに甘く感じる!」などと感動してしまうものだが、料理をプロとする人たちの間では、当たり前のように、これらのオシャレな味の組み合わせが楽しまれているようだ。

対比効果だけじゃない!こんな効果も


ところで、このような不思議な味の効果は「対比効果」だけではない。また別の管理栄養士によれば、次のような効果もあるという。

「コーヒーに砂糖を加えることで苦味が弱まったり、酢に砂糖を加えることで酸味が弱まったりする、『抑制効果』というものがあります。
また、『相乗効果』といって、グルタミン酸(例:昆布だし)とイノシン酸(例:かつおだし)という旨味成分が共存すると、より旨味が増すものもあります」

味は実に奥深い。この対比・抑制・相乗効果などを駆使して、料理のプロたちは味づくりに励んでいると考えると、これまた「スゲー!」となってくる。

料理研究家直伝!組み合わせで起きる奇跡の味3つ


しかし、こんなことで「スゲー!」と言っている場合ではない。世の中には、もっと次元の上向きな組み合わせもあるのだ。そんな、奇跡の味が生まれる調味料や食材の組み合わせを、料理研究家のタド・ジュンコさんに3つ教えてもらった。

1.「りんごジュース×醤油」でウスターソース風に
「りんごジュースと醤油を合わせると、ウスターソースみたいになります。ちょっとお高めの良い粉でお好み焼きなどを作るときに、砂糖や添加物なしのソースをかけたいと思って考えました」

2.「ココナッツミルク×炊いたモチキビ」でふわふわの卵風に
「モチキビそのものが、黄色くてふわふわで卵に見た目も味も似ています。そこへココナッツミルクを入れると、卵の白身っぽい味が出ます。また、モチキビは穀類なのでそれだけだとさっぱりしていますが、ココナッツミルクで油分が増えるので食べやすくなります。さらに豆乳を加えてもいいですよ」



3.「揚げた車麩×醤油出汁」で豚の角煮風に
「車麩を油で揚げた後、醤油出汁で煮込むと豚の角煮のようになります。車麩はよりヘルシーなので、置き換えメニューとしてもおいしくいただけます」

どの組み合わせも斬新で、実に新しい。まるでフランス料理で実際に行われている方法にも思えるが、できあがるのはお好み焼きに合うウスターソース、卵焼き、豚の角煮の味。これなら一般庶民でも楽しめそうだ。ぜひ試してみよう。

調味料や食材は、組み合わせ方によっては奇跡が起き、ワンランク上の新しい味が生まれることがある。しょっぱさ、甘さ、苦さ、旨みなどのストレートな味も良いが、これらの新しく作られた味も取り入れてみてはいかがだろうか。
(石原亜香利)

取材協力・画像提供
料理研究家 タド・ジュンコさん
ワンネスフード/タド・ジュンコ健康料理スクール代表。
大らかなベジタリアンスタイル、潜在能力開花の食卓を伝える人。生活習慣病の食事指導に実績。ケータリング「億万長者の食卓」も人気。スピ好き。
http://tado-junko.com/