「ウルトラマンオーブ」18話。柳沢慎吾VS宇宙人!激闘に泣けた

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しばらく続いた鬱展開を抜けて、スカッとヒーローが復活した『ウルトラマンオーブ』。先週放送された第18話「ハードボイルドリバー」は、怪獣や宇宙人から市民の安全を守るビートル隊員・渋川一徹(柳沢慎吾)を主役に据えたエピソードだ。「渋川=ハードボイルドリバー」というわけ。


柳沢慎吾が主役だなんて、きっと笑える回なんだろうなぁ〜、と思いきや、これが笑えるんだけど、実は燃えて泣ける話だったから驚いた。まさに「今回のウルトラマンは遊び回もメイン回も無い」(田口清隆監督のコメント)を体現するようなエピソードだと言えるだろう。

やっぱり思春期の娘は父親を嫌うもの!?


第8話は刑事ドラマ風(というより『太陽にほえろ!』や『名探偵コナン』の大野克夫風)のBGMに乗せて、ビートル隊員・渋川一徹のハードボイルドな活躍で始まる。事件の現場検証を行い、『帰ってきたウルトラマン』に登場したゼラン星人を追いかけ、時には発砲も行う。ビートル隊員に心休まるときはない。

そんな一徹さんの唯一の弱点が、中学生の一人娘・テツコ(荒川ちか)だ。テツコは父親のことを「一徹」と呼び捨てにし、面と向かって「大っ嫌い」と言い放つ。父親につけられたダサい名前のせいでもあるのだが、最近話題になった「父を気持ち悪いと思った過去。」という匿名ブログ記事にもあるとおり、思春期の娘は父親を嫌うものなのかもしれない。筆者にも娘が一人いるが、将来のことを考えると他人事ではない。

一徹から相談を受けた姪のナオミ(松浦雅)は、テツコに一徹の仕事ぶりを間近で見てみようと提案する。普段、仕事でほとんど家にいない一徹だが、ビートル隊員としての勇姿を見れば、テツコも父親を見直すのではないかという考えだ。かつて忌野清志郎が歌っていた「♪昼間のパパはちょっと違う〜」というやつだろう(作詞は糸井重里)。

ところが、一徹はテツコたちの見ている前で、次々と若い女性たちに接触していく。思春期の娘の前でこれはマズい。テツコの心証は最悪である。すっかり落ち込んでしまったテツコに、ガイ(石黒英雄)が語りかける。

「太陽は沈んだら見えなくなる。でもね、見えないだけで、地平線の向こうではずっと輝いているんだ」
「何、それ?」
「見えないところで輝いている光もある。ヒーローなんてのはそんなものなんだよ」

ガイの言葉が理解できないテツコは困惑するばかり。さらにテツコが思いを寄せるタカヒロ(井上拓哉)に一徹が詰め寄っているところを目撃して、ついにテツコの怒りが爆発する。しかし、この男の正体はシャプレー星人だった! 一徹はタカヒロの正体と悪事を知って調査を続けていたのだ。

柳沢慎吾&ウルトラマンVS宇宙人&怪獣!


シャプレー星人は「ヤセルトニウム」という鉱石をアクセサリーの形にして若い女性に配り、人間の生体エネルギーを吸収しようとしていた。その中の一人がテツコだったのだ。アクセサリーを通して生体エネルギーを吸われたテツコは、一徹の目の前で失神してしまう。ちなみにシャプレー星人は『ウルトラセブン』に登場したときも貴重な鉱石を狙っていた鉱石好きの宇宙人だ。

一徹によって正体が明かされたシャプレー星人は強化型ベムラーを召喚! 堂々と破壊活動を行うベムラーとシャプレー星人に、今度は一徹の怒りが爆発する。

「俺のたった一人の娘を…… 絶対に許さねえ!」

上着を投げ捨て、愛用のスーパーガンリボルバーを抜く柳沢慎吾! カッコいい! ガイは「渋川のおっさん、後は頼んだぜ!」とスペシウムゼペリオンに変身! 前回、本当の自分の姿であるオーブオリジンに変身したウルトラマンオーブだが、どうやらいきなりオーブオリジンに変身することはできないらしい。

手前で一徹とシャプレー星人が戦い、その奥で巨大なウルトラマンオーブとベムラーが戦う! 同一画面で柳沢慎吾&ウルトラマンVS宇宙人&怪獣のタッグマッチが行われている凄まじい画面だ。ある意味、柳沢慎吾の存在感がウルトラマンや宇宙人と並んだとも言える。

しかし、強化型のベムラーはやたらと強く、スペシウムゼペリオンは苦戦を強いられる。一方、銃を失った一徹は体当たりでシャプレー星人に立ち向かうが、当然のごとくボロボロにされてしまう。それでも、殴られようが、投げ飛ばされようが、一徹さんは決して諦めない。たった一人で悪徳宇宙人と戦い続ける。

すると、テツコが立ち上がり、あらん限りの声で叫びはじめた!

「がんばれーっ! お父さん、がんばれーっ!」

直前までは「一徹」「バカ親父」と呼んでいた思春期の娘が、父親の死力を尽くした戦いぶりを見て、「お父さん」と呼んで声援を始めたのだ。何これ、単純な展開なのに泣ける……。

苦戦していたオーブはオーブオリジンに覚醒し、最強武器・オーブカリバーでベムラーを一閃! 同時に、娘の声援を受けて力を取り戻した一徹も、雄叫びをあげながらシャプレー星人に突進! BGMは冒頭でも流れた渋川のテーマだ! 燃える!

オーブオリジンはベムラーをオーブカリバーで粉砕! 一徹は、うろたえるシャプレー星人の背後にあったドラム缶を撃って大爆発を引き起こす。画面一杯に広がる爆炎を背に、スローモーションで振り返る一徹。

「あばよ!」

決まった! 一徹はオーブオリジンに向けてサムアップ! テツコの父親を見る目も完全に変わっていた。テツコは一徹の不屈の戦いぶりを見て、父親のことをヒーローだと思っていた幼い頃の気持ちを取り戻したようだ。日夜、地球の平和のために地道に働き続ける父親の「見えないところで輝いている光」を娘が理解した瞬間である。

「地味で目立たないことでも、誰かのために一生懸命頑張るのがヒーローなんだ」
「ヒーローってのは、案外その辺にいるんじゃないのか?」

これは第9話のババルウ星人ババリューのエピソードに登場したセリフであり、『ウルトラマンオーブ』の中で一貫している大きなテーマの一つである。あのときも、懸命に怪獣と戦うババルウ星人に子どもたちが声援を送っていた。カッコ悪くたって、誰かのために懸命に戦ったり、誰かのために働いたりする人がヒーローだということだ。

柳沢慎吾はコメディアンとしての活動が目立つが、俳優としてもキャリア37年に及ぶ大ベテラン。代表作は名作テレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』だ。今回もおちゃらけた演技は一切見せず、徹頭徹尾シリアスに熱演してみせた。それでもなぜか視聴者を少し笑わせ、エキサイトさせるのだから、役者としても一流だし、長年培ってきた存在感は突出している。脚本はウルトラシリーズ初参加の若手、瀬戸大希。ベタな父娘ものでありつつ、的確にポイントを抑えた上手い脚本だった。

さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第19話は「私の中の鬼」。第1話からバイトに明け暮れていたナオミが将来の不安と自分の心のダークサイドに直面するぞ。見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。銀河の光が我を呼ぶ!
(大山くまお)