10月1日のプレミアリーグWEST15節の神戸弘陵戦でハットトリックの活躍を見せた舩木。サイドバックながら、その攻撃力は群を抜いている。写真:竹中玲央奈

写真拡大 (全2枚)

 高校・ユース年代における国内最高峰リーグの高円宮杯U-18プレミアリーグのWESTで9得点を挙げ、得点ランキングで2位につけるDFがいる。C大阪U-18所属の舩木翔だ。
 
10月13日から31日までバーレーンで開催されるU-19アジア選手権に臨むメンバーの一員にも選出されているこの高校3年生は、冒頭の数字からも十分理解出来るように“超”攻撃的なサイドバックである。
 
 もともと小学生の時は前線でプレーをしており、ジュニアユース時代にはボランチを経験。その後、ユースに昇格した後に当時のチームを率いていた大熊裕司監督によって左サイドバックにコンバートされたのだが、後方に位置を変えてもそのアグレッシブさは失われることなく、自他共に認める強力な武器となっている。
 
 そして、その長所が存分に発揮されたのがU-19日本代表に合流する前の最後の公式戦。10月1日に行なわれたプレミアリーグWESTの15節・神戸弘陵との一戦である。この試合で、舩木はDFながらハットトリックという偉業を達成。特筆すべきは、3つともすべてが流れの中からだったということ。セットプレーからの得点はひとつもない。
 
 立ち上がりから敵陣で高い位置を取り続けると、11分にペナルティエリアの外からFWの落としを受けて、ダイレクトの左足ミドルでネットを揺らし先制点を奪取。前半のうちに1点を返されるも、ゲームが終盤にさしかかった78分、中央左サイドからゴール前のFWにななめのパスを付け、自らも前進。中央でそれを受けたFWは相手守備陣に挟まれボールを失うも、舩木がそのこぼれを拾ってボックス内深くに侵入し、角度のない位置から鋭いシュートをネットに突き刺した。
 
「自分の特徴はクロスだと思っていたのですが、中に入っていく怖い選手にならないといけないなと思っていた。ああいうところで中に入って、ドリブルを仕掛けてシュートまで持っていけたのはすごく良かった」
 起点とフィニッシャーの両輪をこなしたこのゴールに、本人も満足げだった。
 
 そしてゴールラッシュの締めくくりは88分。右サイドから上がったクロスをファーで待ち構え、左足で合わせて3点目を記録。多様な形で3点を奪ったこの事実からも彼の凄みは伝わるが、それ以外の細かな1つひとつのプレーからも、彼が持つ非凡な攻撃センスを随所に感じ取れる。
 
 裏へフィードを送る際も絶妙な回転をかけて受け手の最も望む位置へボールを“置き”、 GKとディフェンスラインの間を通す絶妙なクロスを幾度も配給する。シュートでもクロスでも威力を発揮する左足は、それ一本だけでも相手にとって厄介なのだが、さらに「昔からけっこう得意ですね」と語るのはヘディングだ。ネットは揺らせなかったものの、セットプレーのターゲットとしてゴール前で幾度も存在感を示し、3度ほど惜しいシーンを見せた。
 
「攻撃に絡むのが最大の持ち味」と本人は言うが、とにかく、チームが点を取るために必要な能力を高い水準で備えており、SBとしては群を抜くモノがあるのだ。
「彼の良さは、攻撃力。中学生の時にボランチをやっていたから、そういうところはより見えているし、今日の試合に関しては彼の良さが出た。ただ、もう1個レベルが上がると、やっぱり彼のSBとしての守備の能力が問われてくるので、そこは課題。彼がそこも含めて1つ成長すれば、いい選手になると期待しています」
 
 この日、チームの指揮をとっていた田島一樹ヘッドコーチも、船木ストロングポイントをこう語るが、その半面、ウィークである守備の部分にも言及。もちろん本人もここは心得ているのだが、田島ヘッドコーチは「彼が後ろにポジションを取り出したら良さがない」とも語る。