8月19日、20時。テレビ朝日敷地内にあるEXけやき坂スタジオに着いた。
ガラス張りのスタジオの観覧スペースには20人ほどのお客さん。あれ、思ったより人が少ないな……だって今日は「沢口靖子さん最後のリッツパーティーの日」ですよ?



1971年の発売以来、愛され続けたクラッカー菓子「リッツ」が、発売元のヤマザキナビスコ社が「ナビスコ」ブランドとのライセンス契約を終了することから、この8月末に販売終了。9月からは同社の社名もヤマザキビスケットと変更されることになった。
この一報ののち、世間の関心は「CMでいつもリッツを使ったおしゃれなレシピでパーティーをしていた沢口靖子さんが、“リッツパーティー”を出来なくなってしまうのでは?」ということに集中。あのリッツが味わえなくなってしまうことはもちろん、なんとも寂しい……という話題で(主にTwitter界隈が)持ち切りだったところ、8月19日の21時から「最後のリッツパーティー」が行われることがわかった。

「最後のリッツパーティー」に駆けつけたファン


「最後のリッツパーティー」はインターネットテレビ局「AbemaTV」のニュース番組『AbemaPrime』の中で行われるという。
そもそもリッツパーティーは実在するのか? それなら沢口さんはどんな雰囲気の中でパーティーを楽しんでいるのか? など、気になりすぎていても立ってもいられなくなった筆者も、取材という形で参加させていただくことにした。



観覧スペースで待機している方に話を聞くと、やはりリッツパーティーに参加するべく駆けつけた人たちがいた。千葉からやってきたという女性2人組は「たまたま最近、“リッツのCMって、思い出せないくらい昔からやってるよね?”って話になったんです。リッツパーティーもどんなものかも確かめたいし、沢口さんはバラエティ番組なんかでもなかなか見る機会がないですから」。
そして神奈川からやってきたという男性はちょっと変り種で、「妻がナビスコ商品の大ファン。本人が出席したいけども子育てで家を空けられないので『あなた、代わりに行ってきて』って言われて(笑)」とのこと。代理出席でもかまわないから、最後のリッツパーティーの空気を味わいたい!という奥様の執念が伝わってくる。

“リッツパーティー”のイメージが一人歩き?


観覧スペースに人が集まり始めたところで、実際にパーティーが行われるスタジオ内に移動。パーティー用の豪華なインテリアと、BGMをライブで奏でる(!)カルテットのみなさん、装飾用の大きなお花、に並んで同じくゲストの神聖かまってちゃんの生演奏用バンドセット……というカオスな配置の中で待機。番組スタートから待つこと5分ほどで沢口さんが現れた。



リッツ販売終了のニュースに「私も突然のことだったので“えっ?”って驚きました」「CMにはもうかれこれ、28年出させていただいて……」と語った沢口さん。実はCMの中では明確に“リッツパーティー”とうたうことは一度もしなかったそうで、ご本人も世間がそういう風に盛り上がっていることをスタッフに聞いて知ったとのこと。



番組内では発売当時から近年までのCMダイジェストがオンエア。グリュエールチーズなど、当時はまだ高級品だったさまざまなトッピングを組み合わせた“オン・ザ・リッツ”のスタイルは画期的だった。「私もリッツパーティーをするようなステキな女性に憧れていたのに、今日が最初で最後のリッツパーティーなんですよ……」(番組ナビゲーターの池澤あやかさん)、「あんなおしゃれなパーティー、どこのお宅でやっているんだろう?と思いながらCMを見てました」(テレビ朝日・小松靖アナウンサー)と、スタジオ内の空気が妙にノスタルジックに。ちなみに沢口さんが28年間で一番お気に入りだったバージョンは、99年に「お客様を迎えるときを想像しながら1人でワクワクしている」シチュエーションを演じたものだそう。へぇー、意外!



“本物の”リッツパーティーに出演者も大興奮


そして今日のメインイベント、リッツパーティーの時間がやってきた。
運び込まれたのはカラフルなトッピングで彩られたオン・ザ・リッツに、クラッカーやパーティー帽といったパーティーグッズたち。沢口さんが「28年間ありがとう。最後のリッツパーティーを楽しんでくださ〜い!」と呼びかけ、クラッカーを鳴らしてパーティーがスタート。優雅な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の生演奏が流れる中、ヤマザキナビスコ社の取材VTRがオンエア。リッツはアメリカ生まれの商品だが、国内工場で生産されており、小麦粉や塩味の加減など日本人の口に合わせて作られているという。同社スタッフからCMのイメージキャラクターとして長年活躍してきた沢口さんへのお礼の言葉が述べられると、沢口さんも「私もリッツとともに28年間かわいがっていただいて。嬉しいです」としみじみ語っていた。



振り返るとガラス張りのスタジオの外には、びっしりと観覧のお客さんが! どんどん人数が増え、最終的に100人以上がこのパーティーを直接見守る形になったという。
そしてここでヤマザキナビスコの新商品として、パンの発酵技術を応用したクラッカー「ルヴァン」が9月から発売されるというお知らせが。沢口さんが継続してCMに出演するそうだが「今回は新商品を紹介するCMなので、お客様は呼んでいません」とのこと。



おもてなしの心を伝えたリッツと沢口さん


タイトな出演時間の中、の子氏(神聖かまってちゃん)のぶっ込みトークも、芸人のてるみん氏(石井てる美)のネタも優しい笑顔で受け止めていた沢口さん。彼女のイメージの良さが、リッツという商品のイメージを引っ張ってきたことは間違いないと思った。そして楽しかったコーナーが終わり、お花なども片付けられると、気分が一気に現実に引き戻されてしまった。



観覧後のお客さんたちは口々に「楽しかった!」と一言。観覧スペースでは1人1個リッツが配られたそうで、みんな名残惜しそうに持ち帰っていた。
ところで番組を観た方も気になっていたのではないかと思うが、沢口さんはパーティー中、一度もリッツを口にしなかった。その話になったとき、「沢口さんはふるまう側だからじゃないですか?」という意見があり、なるほど! と膝を打った。



番組を通じて最後まで、リッツのおもてなしの心を伝えていた沢口さん。9月からは「ウィズ・ルヴァン!」を合言葉に、ルヴァンパーティーでもやるとしますか。もちろん、エアーで。
(古知屋ジュン)