以前にコネタで紹介した、京極夏彦氏の小説の装丁画などでおなじみの“妖怪絵師”石黒亜矢子さん
『マッド・マックス』的世界観の作品などが大いに目を引いた昨年の個展に続き、この夏は約35点の新作+過去の人気作品のジグレー(複製画)なども見られる個展『変変化(へんへんげ)劇場』を、銀座三越7Fギャラリーで8月22日まで開催中だ。
早速会場に足を運んで、石黒さんに話を聞いてみた。



懐かしの映画や名作文学からアメコミまで、題材は「好き放題」!


――タイトルもユニークですが、今回はどんなコンセプトで展開しようと考えていらっしゃいましたか?
石黒 全て“化ける”をテーマにした作品なのと、“楽しい”“奇怪”“おかしい”みたいなニュアンスを、タイトルには込めてます。内容としては、ライフワークとして描き続けていきたい映画や文学をテーマにした作品展です。今回はちょっと怖い映画や暗めの文学もチョイスしました。全体的に大人びた感じにしたつもりですが、んなことないか(笑)。



――1950〜70年代の懐かしの映画や名作文学から、かなり最近のアメコミヒーローまでが題材になっていて、バラエティに富んでますよね。
石黒 もう、好き放題です。映画はたまたま観て気に入ったもの、昔から好きだったもの、友達から「これを描いて」とリクエストがあったもの、いろいろをテーマに描きたいものを描く感じで進めてきました。
こんな展覧会をしといてなんですが、映画・文学に精通していたりですとかこだわりも全くなく、恋愛映画以外は、基本雑食でなんでも観ます。ギレルモ・デル・トロ監督(『パシフィック・リム』他)、ジョージ・ミラー監督(『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』他)、ティム・バートン監督(『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』他)、サモ・ハン・キンポー監督(『五福星』他)の映画が好きなので、よく観ます。俳優はジャッキー・チェンとジェット・リーが好きですね。最近は『シン・ゴジラ』を観ました。



長年描きたかったキャラクターを「やっと形にできた」


――文学作品をモチーフにした作品もありましたね。石黒さんも自ら絵本を出されたりしていますが、どういった作品がお好きなんですか?
石黒 絵本は好きというよりは、ずっと憧れていたお仕事なんですね。国内海外問わず、子供向けの児童文学や動物ものが好きです。宮沢賢治作品、『クリスマスキャロル』、『にんじん』、『白い牙』ですとか。もっとあるのですが、さっと思い浮かびません。



――展示作品の中で特に時間がかかったり苦労した、またこれまでにないトライをしたというような作品はありますか?
石黒 そうですね、今回は『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ作)に出てくるフッフールを描いたものですかね。長年ずっと描きたかった大好きな物語の幻獣を、やっと形にすることができました。あとは『少年ケニヤ』の大蛇・ダーナもずっと描きたかった絵です。



あのキュートなアリスが“おっさん走り”!?


――1作ごとのタイトルがダジャレ系なのもステキです。
石黒 タイトルもひどいですよね……。あんまりふざけると三越さんに嫌がられちゃうかなって思って、そのギリギリの線をさぐりながら描いていましたけども(笑)。どこまでもふざけた作品タイトルやBGMも含めて、とにかく来た方々に見て、楽しんで帰っていただきたいなって。BGMも自分で映画音楽をセレクトしたんですが、この作業が一番楽しかったですね。『少年ケニヤ』のサントラを探したら古すぎてCDが見つからなかったりしたので、全部はそろわなかったんですけども。



――石黒さんの飼い猫で、Twitterなどにもよく登場するてんまるくん&とんいちくんはファンの間でも大人気ですが、2匹が登場する作品も……?
石黒 てんまる、とんいちも思いっきり化けているので、どの作品に出てくるか探してみてください!



――今回はポストカードや石黒さんの絵本の他に、大小さまざまな過去の人気作品のジグレーも販売されるそうで楽しみです。
石黒 今回は作品制作に必死で私自身は楽しいグッズを考える暇がありませんでしたが、企画のアートプリントジャパンさんが、新作、過去作品のジグレーを作ってくださったんです。過去の作品をジグレーにしたのは今回が初めてで、私の手元にない作品がほとんどなので個人的にとても嬉しいです。非売品にしていた、以前の飼い猫のよんすけの絵のジグレーもあります。



展示初日の17日は開店と同時に入場したお客さんも多く、注目度の高さをうかがわせた『変変化劇場』。会期は8月22日までなので、気になった人はお早めに!
(古知屋ジュン)

●石黒亜矢子展「変変化劇場」
会場:銀座三越7階 ギャラリー
開催期間:2016年8月17日〜8月22日
時間:午前10時30分〜午後8時(最終日は午後6時閉場)
料金:無料