欧州でポケモンGOをきっかけにした新ビジネスが次々と生まれつつある。特にポケモンGOに連動させた、新たなツアーが各国で組まれている。



ポケモンGOとは、スマホのGPSを使った位置情報を活用し、実際の地理と連動させたゲームだ。ポケモンGOのアプリを起動しながら現実世界を歩くことで、スマホの画面上にポケモン(ポケット・モンスター)が現れる。そのポケモンを捕獲し育て、ユーザー同士で戦わせて遊ぶ。

すべての地域で同じポケモンが出現するわけではないため、各ポケモンを集めるには、それらがどこにいるか、歩いて探す必要がある。ポケモンにより出現率が異なり、なかなか現れないレアなポケモンもいる。つまりゲームをするには、実際に「移動する」ことが必須だ。これを観光ビジネスにしようという動きが、今、欧州各地でも起きている。

市内バスツアーがポケモン仕様に


北アイルランドの中心都市ベルファスト。赤い二階建てバスで市内観光ツアーを行う「シティ・サイトシーング・ベルファスト」は「ポケモンGOハンティング・トリップ」と銘打った市内バスツアーを、毎週土曜午後5時から運行する。料金は大人9ポンド(約1200円)、12歳以下の子ども6ポンド(約800円)、大人2人と子ども2人が含まれたファミリー料金は29ポンド(約3800円)だ。ベルファスト観光局前から出発し、90分間で市内いくつかのポイントを巡る。



アイスランドの旅行会社「レイキャビク・エクスクルージョン」は、さらに長い4時間のツアーを行なっている。料金は大人7500クローナ(約6400円)。11歳以下の子どもは無料だ。経験豊かなアイスランド人ポケモントレーナーが同乗し、英語とアイスランド語でガイドツアーを行う。WiFiおよび各座席にはUSB対応の充電コンセントが付いており、設備も万全。金曜から日曜の各午後1時に出発し、レイキャビクのいくつかのポイントやジム(対戦できる場所)を回る。

2週間かけて巡る海外ポケモン捕獲ツアーも


バスツアー以外にも様々な形態のツアーがある。パリのツアー催行会社「ローカラーズ」は、最大10人のグループでルーブル美術館の中庭や、ノートルダム大聖堂、リュクサンブール公園など、市内名所を英語ガイドと共に巡る。時間は2時間30分で料金は大人49ユーロ(約5500円)だ。1回のツアーで約5km歩くことになるため、卵(ポケモンのアイテムの1つで、歩いた距離に応じて卵からポケモンが生まれる)も孵化させられるという。ツアー最後はジムで対戦し、その日の成果を試すという内容だ。



スペインの旅行会社「フェリセス・バカシオーネス」は、11泊13日の旅程で米国にポケモンを捕まえに行くツアーを企画している。料金は1695ユーロ(約19万円)から。渡航先はラスベガス、ヨセミテ国立公園、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークなど。ツアー内容には、訪問先のどの場所でどのようなポケモンを捕まえられるかが説明されている。なぜ米国までわざわざ出かけて行くのかというと、「ケンタロス」というポケモンは米国でしか現れないからだ。

仮想のポケモンを探すため、実際に現実世界を移動し、それが結果的に観光業にとって新しいツアー形態を生み出しつつあるポケモンGO。今後同様のゲームが増えていくことで、新しいツーリズムとしてこの流れがさらに進みそうだ。
(加藤亨延)