知人でバレーボールに取り組む女性がいるのですが、実はファッションに悩むことが多いらしいです。レシーブの体勢をとり続けてお尻周りがガッチリしてしまい、体型が変化したとのこと。結果、ウエストに合わせて服を買うとお尻が入らないし、お尻のサイズに合わせるとウエストがガバガバになってしまうそうなんです。

この手の悩み、本格的なアスリートになるほどに数多い気がします。体が競技仕様になると、日常のファッションに困ってしまう。何とも、悲しい話ではないですか……。

現役時代に悩まされた“アスリートあるある”に一念発起


そんな方々におすすめしたいファッションブランドを発見いたしました。今年4月より始動している、その名も「KINGLILY」。立ち上げたのは、レスリング元日本代表の岡田友梨(旧姓 甲斐)さんです。


この方、小学1年から柔道を始め、高校時代に転向したレスリングでは「全日本社会人選手権」「天皇杯」「オーストリアオープン」「ヤリギン国際大会」で優勝を果たしている猛者。なんと世界選手権では3位という成績を残した、とんでもない経歴の持ち主なのです。

しかし一方で、やっぱりファッションについては悩みを抱えていたよう。
「中学時代の後半にはすでに既製品の服ではサイズが合わず、肩幅に合わせると胴回りがブカブカで太って見えたり、丈が長くなって脚が短く見えたり、お尻と太ももを通過できたと思ったらウエストがブカブカ過ぎて常にパンツは下がってきたり……。とにかく、私服でのストレスがひじょーーーーーーに半端なかったんです!」(岡田さん)
とは言いつつ、アスリートとしては大活躍。「全国学生選手権」で優勝を果たすなど、大学時代になるとレスリング界で大躍進します。

ちょうどこの大学時代から、岡田さんは「アスリートのためのファッションを手掛けたい」という思いを密かに抱き始めました。
「大学生の頃には腹筋が完全にシックスパックになり、鍛え抜いて無駄がなくメリハリのある自分の身体が大好きでした。なのに服を着るとその体型が崩れて不細工になってしまい、それは本当に嫌でしたね……」(岡田さん)
周囲のレスリング仲間に悩みを打ち明けると、やはり皆同じ悩みを持っていた。まさに、これは“アスリートあるある”です。なのに、アスリート体型の人が楽で綺麗に着られる服が生まれる気配は一向にありませんでした。まるで、女性であることを認めてもらえないかのように……。
「私の現役時代はまだ、『美女アスリート』のように選手の“可愛さ”に注目する傾向は低かったんです。また、おしゃれすることを良しとしない風潮もあったため『私が引退する時にまだアスリートのための服が無かったら、絶対に自分がつくってやろう!』と思っていました。『アスリートは“勝つこと”“体を鍛えること”を目指しているだけで、普通の女の子であることは一切変わらない!』『戦う以外の時間に可愛くなりたいと思ったっていいじゃないか!!』という、反骨心にも近い思いです。世間のアスリートに対する『ゴツイ』『強い』だけのイメージをぶっ壊したいという願いから、この夢は生まれました」(岡田さん)

選手引退後の2012年、27歳でデザインの専門学校に入学する岡田さん。そして遂に、2016年に“女性アスリート向けのファッションブランド」を立ち上げました。
「夢を目指す過程で世の中に『美女アスリート』なる言葉が生まれ、女子アスリートの美しさが徐々に注目される時代になってきました。ブランドのコンセプトが自然に受け入れられる状況になったので、なんかラッキーです(笑)」(岡田さん)

女子アスリート100人以上の体型データを独自で収集


ところでどのような工夫を洋服に施すことで、体型の悩みをカバーすることに成功しているんでしょう?
「そもそも、洋服は原型があって初めて生産できるものです。つまりレディースなら、一般成人女性の体型に合わせたサイズのものを原型にして生産しています。対してKINGLILYの製品は、女子アスリート100人以上の体型データを独自で収集し、サイズに振り分けて原型にしました。またサンプルの段階でも元女子アスリートや現役選手に試着してもらい、アンケートを採ることで何度も希望を取り入れ、約半年をかけて完成させています」(岡田さん)
一般標準サイズの原型を使い回さず、全てオリジナルで作成しているところが同ブランドの特徴。
「細かい部分を言えば、ボタンやファスナーなど細かい資材まで自分で見て触って選んで使用していること、生地に合わせて伸縮する糸を使用したりしているところも特徴です。よくある体型の悩みを解決するコーディネートアイテムというより、原型という根本から全く違うものにしている。既製品では必ずどこかに負担がかかってしまっていたのにKINGLILY製品ではとにかく体へのストレスが無いという部分で、ご好評をいただいております」(岡田さん)
要するに、肩幅が広い、腕が太い、脚が太い……など、鍛え上げて極端にボリュームアップした箇所を目立たなくさせる生地等を徹底して選別。体全体のバランスが綺麗に見えるようにカットの角度、縫製の位置など、デザインにもとことんこだわっているそうです。

ちなみに、KINGLILYで最も人気のあるアイテムって何ですか?
「『スーパーストレッチ美脚スキニーパンツ』(税抜13,500円)です。Lサイズの黒は初回生産が完売、Mも残りわずかで、試着サービス分が購入となれば完売、生産が追い付かないことが予測されております」(岡田さん)



試着して歓喜する女子アスリートが続出


そんなKINGLILYのアイテムは、今のところ格闘技や陸上の選手達による利用が主だそう。レスリングや柔道、やり投げといった競技のアスリートによる購入が多いらしいです。もちろん、反響は上々。最も多いのは「今まで入らなかったものが入る」という驚きの声でした。
「パンツについては『しゃがんでもひっかからない』、トップスについては『肩がまわるし、破れないかヒヤヒヤしながら着なくて済む』といったお声が数多いです」(岡田さん)
次に多い反響は、なぜか細く痩せているかのように見える“変身”への感動です。
「今まで、妥協して服を選ぶことを“仕方ないこと”としてきたため、自分が綺麗に見える体験をしたことがない人がほとんど。スタイル良く服を着こなしている姿の想像すらできないのが現状なんです。そのため、KINGLILYの服を着て鏡の前に立った瞬間の選手は、『衝撃、歓喜、信じられない!』といった派手なリアクションが大半で、試着会は非常に盛り上がります(笑)」(岡田さん)

そう、同ブランドの商品は基本的にネットショップのみで購入できますが、無料の試着サービスや不定期の試着会も開催しています。
「また、個別に実際に試着して色んなファッションのアドバイスを受けたいという方は、SNSを通じてお申し込みください」(岡田さん)
着こなしのノウハウについては、現役選手時代に「鍛え抜かれた筋肉をいかに太く見えなくするか」考え抜き、アパレル販売員時代には一般のお客さんにも着やせを実現させてきた経験を経て、岡田さん自身が習得しています。
「実際にどう着たら、どういうものを着たら細く見えるか……ということをブログやインスタグラムで紹介しており、コーディネートの相談に的確に応えることによって信頼していただいている部分もあります」(岡田さん)

ちなみに同ブランド、全体の3割はサイズの悩みを持つ一般女性による購入だそう。なるほど。その手のニーズにも、このブランドは応えているのですね。
要するに、多くの女性を“美しく”見せるための術に長けた新ブランドです。
(寺西ジャジューカ)